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<月刊「狭山差別裁判」427号/2010年10月>

取調べの全面可視化と弁護側への証拠開示を保障する
法律の制定を求める請願署名運動をすすめよう!

  2011年9月におこなわれた狭山事件の8回日の三者協議で検察官はスコップの指紋検査結果の報告書など弁護側が開示を求めた証拠を「不見当」と回答した。再審請求で弁護側が新証拠を求めて証拠開示請求をしても、検察官が「不見当」と回答したり、開示の必要性なしとして応じなかったりすることは他の再審事件でも同じ状況である。鹿児島地裁に再審請求が申し立てられている大崎事件でも弁護側が求めた証拠を「不見当」としている。名張事件でも、弁護団は当時の関係者の供述調書や捜査記録などの証拠開示を求めているが開示されていない。袴田事件では、昨年来、初めての証拠開示がおこなわれ、弁護団が求めるそのほかの証拠についても、裁判所はあるのかないのか、ないとすればその理由、開示できないならその理由を明らかにするよう検察官に求めているという。裁判所の証拠開示を促す積極的な姿勢が重要であるが、そもそも、新証拠が必要とされる再審請求において、現行の手続きで証拠開示が十分に保障されていないことは再審の理念に反するし、不公平というべきである。
  ネパール人のゴビンダさんが再審無罪を求めている、いわゆる「東電OL殺人事件」では、検察が証拠開示をおこない、DNA鑑定をおこなったところ、事件現場にあった体毛や被害者の体に付着していただ液と被害者の体内に残っていた体液のDNA型が一致したという結果が出て、有罪判決を覆す新証拠となった。これらの重要な証拠も検察官が14年も隠していた。
  昨年再審で無罪となった足利事件では取調べ録音テープがずっと隠されていた。ことし再審無罪判決が出された布川事件でも取調べ録音テープや毛髪鑑定、目撃証言などが開示されて再審のカギとなった。志布志事件、氷見事件、厚労省元局長事件など、この間、あいついで冤罪事件の無罪判決が出されたが、そのたびに、密室の取調べと、検察官による証拠隠し、証拠ねつ造が冤罪の原因と指摘されてきた。しかし、証拠開示をするかどうかは検察官の裁量に委ねられており、再審請求や国家賠償請求などの裁判では、十分な証拠開示がおこなわれていないのが現実である。こうした制度の不備が、狭山事件や他の再審において、検察官の不当な証拠不開示の姿勢を許していると言わざるをえない。
  国連の自由権規約委員会、拷問禁止委員会も、くりかえし日本政府に弁護側への証拠開示を保障する法整備を勧告している。取調べの全面可視化と証拠リストの開示を検察官に義務づける法律案はすでに2007年と2008年に参議院で可決された経緯がある。いまこそ、冤罪・誤判を防止するための司法改革の一環として、取調べの全過程の録音・録画(全面可視化)と公正な証拠開示の制度を確立すべきである。狭山事件における証拠開示、事実調べを求めるとともに、すべての冤罪防止のために、検察官が公正・公平に証拠開示に応じることを義務づける法律の制定を求める運動を幅広く進めたい。狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会では、12月1日に集会を開き、多くの冤罪事件とともに、全面可視化と証拠開示の法制化を求める請願署名を国会に提出し、政府に対する要請行動をおこなうことにしている。可視化と公正な証拠開示の法制化を政府、国会に求める100万人署名運動を全力でおしすすめよう!


月刊狭山差別裁判題字

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