<月刊「狭山差別裁判」428号/2010年11月>
東京高検は3物証に関わる証拠開示に応じよ!
再審請求における検察官手持ち証拠の開示は不可欠だ!
2011年9月におこなわれた第8回三者協議では、検察官はスコップの指紋検査に関わる捜査書類については「不見当」と回答、一方、東京高裁の小川裁判長は弁護団が求めた3物証に関わる捜査書類などの証拠開示を検討するよう促した。これらの証拠開示は重要かつ不可欠である。東京高検は12月におこなわれる第9回三者協議で誠実に回答し証拠開示に応じるべきである。狭山事件の確定有罪判決である2審・東京高裁判決は、筆跡、足跡、スコップなど7つの状況証拠とともに、自白に基づいて万年筆、鞄、腕時計という3物証が「発見」されたことを有罪の根拠としている。捜査官があらかじめ知り得なかったことが自白によって明らかになることを 「秘密の暴露」(犯人しか知らない事実が判明した)として、自白が信用できる根拠とされる。狭山事件では、3物証の「発見」が「秘密の暴露」にあたると有罪判決は認定している。
しかし、たとえば、万年筆は2回の徹底した家宅捜索の後に、高さ175.9センチ、奥行き8.5センチしかないお勝手の入り口のカモイの上から「発見」されている。しかも、石川さんの家から「発見」された万年筆には、石川さんや被害者の指紋が検出されず、中に入っていたインクは被害者が使っていたライトブルーインクではないブルーブラックであった。裁判所は異なるインクが補充された可能性もあるとして再審請求を棄却しているが、被害者が事件当日の授業で書いたペン習字の清書は最後までインクの途切れもかすれもなくインクの補充が考えられないことは明らかだ。そもそも、日常、字を書くことがなかった石川さんが何の役にも立たない、むしろ犯行が発覚する危険性のある被害者のピンク色の万年筆を自宅に持ち帰ってお勝手口の上に置いたままにしておくという自白じたいが不自然だ。万年筆の置き場所の自白も「風呂場の入り口の上」から「勝手場入口のカモイの上」に変遷している。昨年、開示された取調べ録音テープの分析などにより、調書に添付されなかった万年筆置き場所の図面が存在するはずであることも浮かび上がっている。
万年筆などの3物証に関わる自白が真実で、真に自白にもとづいてはじめて発見されたと言えるかどうか慎重に再検討されなければならない。3物証の疑問は、有罪判決に合理的疑いが生じるかどうか、再審理由の有無を判断するうえで重要な争点である。そして、3物証の発見が「秘密の暴露」(真犯人しか知らないことが自白によって判明した)と言えるかどうかは、捜査官があらかじめ知り得なかったということがポイントであるから、当時の3物証に関わる捜査がどのようにおこなわれたかということが重要である。だからこそ、3物証に関わる捜査書類などの証拠開示は不可欠といわねばならない。
再審で無罪となった財田川事件でも、犯人しか知らないことを自白したとして有罪の根拠とされた事実を、捜査官らが知っていたことが証拠開示によって判明し、「秘密の暴露」が否定された。まして、昨年の厚労省元局長の冤罪事件における検察官による証拠改ざんのような証拠ねつ造は多くの冤罪事件で見られる。
東京高裁は徹底して証拠開示をおしすすめるべきである。
東京高検が証拠開示におうじるよう求めるとともに、弁護側への証拠開示を保障する法制化を実現しよう!
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