<月刊「狭山差別裁判」430号/2012年1月>
捜査、自白の疑問はますます明らかになった!
東京高裁は証拠開示勧告と事実調べをおこなうべきだ
2009年の開示勧告を受けて、2010年5月に36点の証拠開示がおこなわれ、その後も追加の開示もおこなわれ、50数点の証拠が開示された。とくに、石川さんが逮捕当日 (1963年5月23日)に書かされた上申書は、当時の石川さんの筆跡、国語能力が脅迫状とまったく異なることを示す無実の新証拠となった。弁護団は、これらをもとにしたあらたな筆跡鑑定書3通もすでに提出している。
また、証拠開示された当時の捜査報告書によって、自白によってはじめて発見されたとされていた「鞄」について、取調べ、捜索、発見の経過にあらたな疑問が明らかになった。
殺害現場の血痕検査報告書は「不見当 (見あたらない)」とされたので、弁護団はさらに殺害現場を特定するための捜査書類や自白を裏付けるための捜査書類を開示するよう求めたが、検察官はこれらも「不見当」と回答している。しかし、当時の埼玉県警鑑識課員に1980年代に検察官が事情聴取した報告書3通が証拠開示され、雑木林内でルミノール反応検査をおこない反応がなかったと述べていることも明らかになった。弁護団は、殺害現場が雑木林だとする自白を裏付ける捜査書類やそもそも殺害現場を特定するためにおこなわれた捜査の書類一切の開示を求めたが、検察官はこれらも「不見当」と回答している。犯行現場を特定するための捜査が何もなされなかったということなのか、あまりにおかしな話であるが、いずれにしても、殺害現場を特定する証拠はまったくないということにならざるをえない。
一方で、殺害現場の至近距離で事件当日農作業をおこなっていた0さんは「悲鳴を聞いていない」「何も気づくことはなかった」と証言しており新証拠として提出されている。殺害現場という自白の核心を裏付ける証拠はなく、疑問はますます深まっている。
狭山事件は自白が真実かどうかが争点であり、その核心というべき殺害現場を裏付ける証拠が出てこないのであるから、裁判所は0さんの証人尋問をおこない、自白の信用性を再検討すべきはずである。
弁護団が求めたスコップの指紋検査報告書も検察官は「不見当」と回答したが、これもきわめて不可解だ。スコップよりも後に発見され同じように雨ざらしになっていたと考えられる教科書類なども指紋検査がおこなわれていることや、当時の新聞報道などからしても指紋検査がおこなわれなかったとは考えにくい。この疑問も今後解明されなければならないが、いずれにしても、スコップ、自転車もふくめて狭山事件では石川さんの指紋が発見された証拠物はまったくないということがさらに明らかになった。弁護団は、スコップについても付着土壌に関する専門家の鑑定書を提出し、有罪判決の誤りを明らかにしている。
証拠開示と三者協議のなかで、狭山事件の疑問はさらに深まり、石川さんの無実は一層明らかになった。このことをふまえて、東京高裁・小川正持裁判長は、弁護団の求める事実調べをおこなうべきだ。わたしたちは、証拠開示で明らかになった無実の新証拠を学習し、より多くの人に伝えて、東京高裁がさらに開示を勧告するとともに、新証拠の事実調べをおこない、再審を開始すべきだという世論を大きくする運動をすすめよう!
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