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<月刊「狭山差別裁判」432号/2012年3月>

再審請求において証拠開示の保障は不可欠だ!
未開示の筆跡資料を開示し鑑定人尋問などの事実調べを!

 6月7日、東京高裁第4刑事部(小川正持裁判長) は、1997年におきたいわゆる 「東電OL殺人事件」 で再審開始 決定をおこなった。同高裁は刑の執行停止も決定し、無実を叫びつづけていたゴビンダ・プラサド・マイナリさんは釈 放され、16日にネパールに帰国した。東京高裁の再審開始決定は、あらたに実施されたDNA鑑定によって、事件現場に残 された体毛、被害者の体に付着しただ液、衣服に付着した血痕から、ゴビンダさんのものではない第3者のDNA型が検出 されたことを総合し、この第3者が犯人である可能性が高いとし、これら新証拠によって、ゴビンダさん以外に現場に 被害者を連れ込むことは考えられないとした確定有罪判決に疑問が生じたとして再審を開始した。
 検察官は、この再審開始決定に対し異議申立をおこなったため、東京高裁第5刑事部で審理がつづくことになる。しか し、今回、裁判所の勧告によって開示された体毛の血液型鑑定によれば、現場に残された体毛が0型であり、B型のゴビ ンダさんのものではないことは、事件当時、ゴビンダさんを本件で逮捕する前にわかっていた。警察はこれを調べもせ ず、検察官はこれを隠してゴビンダさんを犯人にでっちあげたと言わざるをえない。
 今回の再審開始決定で新証拠となったものは、当初から開示できたはずであり、検察官が、こうしたゴビンダさんの 無実に結びつく重要な証拠を14年も隠しつづけていたことはきびしく批判されるべきである。こうした証拠隠しを反省 することなく再審開始決定に異議を申し立てるなど許されない。
 今回の 「東電OL殺人事件」 の再審開始の理由となった新証拠の多くは東京高裁の勧告によって証拠開示され、あ らたにDNA鑑定がおこなわれたことによって明らかになったものだ。再審において、証拠開示と事実調べがいかに重要で あり、それを積極的に裁判所がすすめることが誤判から無実の人を救済し真実を明らかにする近道であることをしめし ている。
 狭山事件の第3次再審請求は、同じ東京高裁第4刑事部(小川正持裁判長)で審理され三者協議がおこなわれている 。狭山事件においても、2009年12月に開示勧告がなされ、その後、検察官から証拠開示がおこなわれた。それによって 、47年目に日の目を見た石川一雄さんが逮捕当日に書いた上申書などが明らかになり、新証拠として提出されている。東京高裁の小川裁判長は、開示された上申書と脅迫状の筆跡が異なるとする専門家の鑑定などについて事実調べをおこ なうべきである。
 また、検察庁が領置した証拠物のうち番号が飛んでいるものが多くあり、弁護団が証拠物の内容の特定と開示を求め たのに対して、検察官は筆跡資料1点を開示したが、そのほかの証拠は開示せず、内容も明らかにしていない。筆跡に 関する証拠がほかに存在することは明らかだ。脅迫状は狭山事件において犯人の残した唯一の物証である。小川裁判長 は、脅迫状に関わる筆跡資料をすべて開示するよう検察官に勧告すべきである。「隠された筆跡資料をすべて開示し、 事実調べをおこなえ」の声を大きくしていこう。


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