<月刊「狭山差別裁判」436号/2012年7月> 「発見腕時計」は被害者のものではない! 狭山事件では、石川さんの自白の通りに被害者のものとされる腕時計が発見されたとして、有罪証拠のひとつとされている。腕時計発見が、犯人しか知らない事実が自白によって明らかになり、自白が信用できることを示す「秘密の暴露」だとされているのである。弁護団はこの腕時計についての重要な新証拠と補充書を2012年9月に東京高裁に提出した。提出された新証拠のひとつであるベテラン時計修理士による報告書は、東京高裁に保管されている発見腕時計を観察し、そのバンド穴の使用状態を明らかにしたものだ。発見時計のバンドは6つあるが、そのうちもっとも使われている穴は時計本体から4番目の穴で、つぎに使用頻度が高いのは時計から2番目の穴だと指摘している。被害者の姉は、この時計を姉妹で共用していた、自分は時計から3番目の穴を使い、妹は5番目の穴を使っていたと供述し、有罪判決や再審棄却決定はこれらを根拠に発見された時計は被害者のものであると認定していた。しかし、時計修理歴44年という時計の専門家の報告書によれば、発見時計の使われているバンド穴は、被害者が使っていた本体から5番目の穴ではなく、本体から2番目の穴だというのである。弁護団はさらに、別の時計修理士の意見書や時計バンド製作会社の専門家等の報告書をあわせて提出した。そもそも、事件直後に警察が時計捜索のために公表した品触では、被害者の時計はシチズンのコニーとなっていたが、発見された時計はシチズンのペットという時計であった。発見された腕時計が被害者のものではない疑いは明らかだ。今回の新証拠によって自白の信用性、有罪判決の認定は大きく揺らいだというべきである。 月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先 |