<月刊「狭山差別裁判」440号/2012年11月>

証拠開示と新証拠であらたな疑問が浮びあがっている
「秘密の暴露」に関わる徹底した証拠開示が必要だ

   弁護団はいわゆる「秘密の暴露」に関して証拠の開示を求めている。「秘密の暴露」とは、自白の内容が犯人しか知り得ないような「秘密性」を含み、客観的事実と一致する場合をいい、自白の信用性を高めるとされる。狭山事件の確定有罪判決は、石川さんの自白通りに被害者の所持品(3物証)が発見されたとして自白が信用できる大きな根拠としている。また、3物証のほかに、「脅迫状を届ける途中で車に追い越された」「脅迫状を被害者宅に届けた際に東隣に車が駐車しているのに気づいた」という自白が、それぞれ、捜査の結果、判明した事実と一致したとして、「秘密の暴露」とされている。
  しかし、過去の冤罪では、あらかじめ聞き込み捜査などで情報を知っていた捜査官が自白を誘導したり証拠をねつ造した事例も存在する。自白内容が「秘密の暴露」というためには、その事項が捜査官があらかじめ知らなかったということと、客観的事実と一致するという要件が必要だ。「秘密の暴露」を再検討するためには当時の捜査経過を示す資料等の開示が必要であることは明らかだ。
  狭山事件では、万年筆が二度の徹底した家宅捜索の後に2カ月近く経って、お勝手の入口のカモイの上から見つかるなど、3物証のいずれも警察がすでに捜索した場所から後に「発見」されている。,また、発見万年筆は被害者が使用していたインクと違うものが入っており、石川さんの指紋も被害者の指紋もなかった。また、弁護団が提出した時計修理士の意見書では、発見された腕時計は、被害者が使うはずのない細いほうのバンド穴が多く使われた痕跡があることが指摘され発見腕時計も被害 者のものでないことが明らかになった。
  自白の重大な疑問というだけでなく証拠ねつ造、捜査の不正の疑いさえあるのだ。有罪判決は、重要な証拠収集過程の一つにおいてでも作為や証拠の偽造があれば、この事件はきわめて疑わしくなるとしているが、2審の裁判で、「秘密の暴露」とされた点について十分な証拠調べがおこなわれたとはいえない。開示された捜査報告書によって、腕時計発見場所がすでに警察が2日がかりで捜索した場所であったことが浮びあがった。また、2審の法廷で警察が、鞄発見のもとになった自白図面と言っていたものとは別の図面が証拠開示で出てきた。開示された取調べテープで、万年筆発見の際に警察官が持っていったという図面とは別の図面が存在することも浮かびあがった。
  この間の証拠開示で判明したあらたな事実や弁護団が提出した新証拠によって、3物証や「秘密の暴露」とされた自白の疑問 はさらに深まっている。
  先日の第13回三者協議で、東京高裁第4刑事部の河合健司裁判長は証拠開示について従来の考えを踏襲し、検察官に柔軟な対応を求めた。裁判所の勧告をふまえ、検察官はすみやかに証拠開示をおこなうべきである。7月におこなわれる次回の三者協議にむけて、東京高裁、東京高検に証拠開示を求める要請ハガキを出そう。


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