<月刊「狭山差別裁判」445号/2013年4月>
検察官の証拠不開示の理由は納得できない。
東京高裁は証拠リストの提示を命じるべきだ
これまでの15回の三者協議で開示された証拠は130点を超える。とくに、47年目にしてはじめて証拠開示された石川さんの逮捕当日の上申書は重大な新証拠である。狭山事件で確定判決となっている2審・東京高裁の有罪判決 (1974年10月31日) は、脅迫状の筆跡が一致することが犯行と石川さんを結び付ける客観証拠の主軸だとしているが、これを出した寺尾裁判長も上告や再審を棄却した裁判官もこの上申書を見ていない。この上申書をもとにした筆跡鑑定もふくめて裁判所が事実調べをおこなうことはだれが考えても不可欠であろう。
また、裁判所は検察官に犯行現場を裏付ける血痕検査報告書の開示を勧告したが、検察官は不見当としている。弁護団はこのほかに犯行現場の裏付けに関する捜査報告書等の開示を求めたが、検察官はすべて不見当としている。結局、狭山事件では殺害現場を裏付ける証拠は何もないことになる。本来、検察官が犯行現場を特定し、犯人と結びつける証拠を明らかにしなければならないはずなのに、それがないままに自白頼みで有罪判決が出されているのだ。犯行現場の根拠が自白以外にないのであれば、自白が真実かどうかの証拠調べは不可欠である。事件当日、隣接した畑にいて悲鳴を聞いていないと証言しているOさんの証人尋問や現場検証、殺害方法が自白と食い違うと鑑定している法医学者の尋問など事実調べを東京高裁はおこなうべきである。
弁護団は、有罪判決が 「秘密の暴露」 (犯人しか知らない事実を自白した) にあたるとした点について、新証拠を提出し、初期の捜査資料など関連する証拠の開示を求めた。また、検察官がつけた番号の抜けている証拠物の開示も求めている。しかし、弁護団のこうした具体的な証拠開示の要請に対して、検察官は存在を認めながら 「必要性がない」 「プライバシーに関わる」などとしておうじていない。
裁判所が勧告した犯行現場の血痕検査報告書や現場を撮影した8ミリフィルムなどは不見当として終わっている。そもそも、弁護団には検察官手持ち証拠の内容さえわからない。検察官だけが、手持ち証拠の内容を知っていて、一方的に 「不見当」「必要性がない」「プライバシーに関わる」として開示を拒否するというのは誰が見ても不公平・不公正である。50年以上経った狭山事件で 「プライバシー侵害のおそれ」 は考えにくいが、少なくともプライバシーに関わる点を具体的に指摘し開示の方法を協議すべきだろう。また、不見当で終わらせるのでなく、検察官は手持ち証拠のリストを弁護側に提示すべきである。証拠リストの開示制度は、かつて司法改革の審議会でも提起され、国会でも冤罪防止のための取調べ可視化とあわせて議論され、証拠リスト開示をもりこんだ刑訴法改正案は参議院で2度にわたって可決された経緯もある。公正・公平な証拠開示を保障するために再審請求において証拠リストを弁護側に提示する法制度を一日も早く確立すべきである。私たちは、証拠開示を求める世論をさらに大きくしていかなければならない。
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