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<月刊「狭山差別裁判」455号/2014年11月>

寺尾判決を徹底して批判しよう!
証拠開示、事実調べ求め、狭山事件の再審開始を訴えよう!

 再審請求では、新証拠と全証拠を総合評価して確定判決の合理的疑いが生じれば再審を開始するとされる。狭山事件の確定有罪判決はいうまでもなく2審・東京高裁の寺尾判決である。寺尾判決がいまも石川さんに見えない手錠をかけている。寺尾判決から40年が経過したが、第3次再審で弁護団が提出した新証拠によって寺尾判決の誤りが明らかになっている。とくに、証拠開示がすすんだことによって、石川さんの無実と寺尾判決の認定の誤りを明らかにする新たな証拠がいくつも発見されている。
  そもそも、寺尾判決には基本的な問題点がいくつもある。たとえば、「科学捜査の現段階においては、もっとも有力な証拠の第1は、何といっても指紋であり、ついで足紋、筆跡、血液型、足跡、音声…が考えられるが、指紋以外は末だ決定打とはいえない」としたうえで、狭山事件では、脅迫状、封筒、身分証明書、万年筆、腕時計、教科書、自転車等から指紋が検出されなかったことを認めながら、「しかし、指紋は常に検出が可能であるとはいえないから、指紋が検出されないからといって被告人は犯人でないと一概にいえない」としている。
  1983年に死刑囚として戦後はじめて再審無罪となった免田事件の第6次再審開始決定(熊本地裁八代支部1979年)は、タンスの引き出しを開けて物色し包丁を振るったという自白にもかかわらず、「犯人の決め手となるべき指紋」が現場や凶器からまったく検出されなかったことを「留意すべき点」の一つとしてあげて、自白はたやすく信用できなとしている。検察官は、これに対して指紋は必ず検出されるとは限らないと反論したが、最高裁はこれをしりぞけ再審開始が確定した。
  これが常識的な判断というべきであろう。狭山事件においても、脅迫状・封筒や自転車など犯人が手にしたとされる証拠から石川さんの指紋はまったく出ていない。しかし、狭山事件においては、その後の再審請求においても、指紋の不存在をふまえて自白が真実かどうか再検討しようという姿勢が見られない。寺尾判決も、その後の再審請求を棄却した決定も結局は自白をよりどころにしていると言わざるをえない。
  第3次再審では、東京高裁の勧告によって2010年に取調べ録音テープが開示され、弁護団作成の反訳と2通の心理学鑑定が新証拠として提出された。取調べテープに残されたやりとりは、脅迫状を書いたことは間違いないなどと一方的に追及し自白に追い込む取調べや、取調べのやりとりと自白調書との大きなズレが見られる。また、スラスラ自白したという取調べ刑事らの法廷での偽証も浮かび上がった。そして、石川さんが無実であるがゆえに死体の状況や死体をどうやって運んだかなど犯行の態様が答えられないことがあらわれている。真犯人ではない故の「無知の暴露」がはっきりと示されているのだ。東京高裁は自白の全面的な再評価をしなければならない。
  寺尾判決の誤りは明らかだ。徹底して寺尾判決を批判し、東京高裁に事実調べ・再審開始を求めよう!


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