<月刊「狭山差別裁判」456号/2014年12月>
証拠開示と新証拠の学習・教宣活動を強化し、
徹底した証拠開示と事実調べ、再審開始をかちとろう!
2010年に裁判所の開示勧告によって、事件当時、石川さんを取調べた録音テープが存在することが47年ぶりに明らかになり開示された。オープンリールテープ9本、15時間あまりを弁護団は専門家にダビングを依頼し、それをもとに独自の反訳書を作成した。弁護団の反訳により取調べのやりとりがより明らかになり、最初の3人犯行自白や単独犯行自白に変わるときなどの場面で関巡査による1対1の取調べがおこなわれている
こともわかった。弁護団は、この取調べ録音テープの内容を心理学的に分析した2通の鑑定書を東京高裁に提出した。タオルで目隠しされ、手拭いで後ろ手に縛られていた死体の実際の状況や死体をどのように運んだかなど、犯人なら当然答えられるようなことを石川さんがまったく知らないことが録音テープの取調べのやりとりにはっきりあらわれている。鞄の捨て方、あるいは動機や脅迫状の説明など犯行内容の多くの点で、石川さんの「無知」が明らかだ。2人の心理学者による鑑定は、石川さんが犯人ではないゆえの「無知の暴露」(犯人ならわかるはずのことを石川さんが知らないこと)が取調べのやりとりにあらわれていると指摘する。
2010年に証拠開示された関巡査の取調べ状況の報告書には、石川さんが単独犯行を自白したあと、死体がどうなっていたか教えてほしいとたずねたことが書かれている。真犯人がこのようなことを取調官に聞くはずはない。取調べ録音テープとあわせて石川さんの無実をはっきり示す新証拠だ。裁判所は、取調べテープと心理学者の鑑定書などをふまえて自白の全面的な再検討をすべきだ。
弁護団は、このほかに「秘密の暴露」とされた車の駐車に関する新証拠や鞄に関する自白の虚偽を明らかにする新証拠、犯行に使われた手拭いが石川さんの家のものではないことを示す新証拠を提出した。いずれも、証拠開示された捜査報告書や取調べテープを分析したものである。
2014年5月に弁護団は証拠物の一覧表の開示勧告申立てをおこない、2回の三者協議で検察官は開示を拒否したが、弁護団は強く反論し、裁判所は客観証拠とその一覧表の開示を検察官に促す姿勢を示した。9月には検察官がプライバシー問題を理由に開示できないとしていた筆跡資料が裁判所の判断ですべて開示された。そして、東京高検保管の証拠物の一覧表もついに開示された。弁護団は着実に証拠開示を実現し、開示証拠を分析することによって、新証拠を積み重ねてきている。一方で、検察官の開示拒否の姿勢、抵抗も強い。証拠開示の攻防はつづいている。私たちは、検察官を追い込む世論をさらに大きくする必要がある。闘いをゆるめるわけにはいかない。
証拠開示でこれだけ重要な新証拠が出てくるということは、再審においては証拠開示が不可欠であり、狭山事件においても徹底した証拠開示が必要だということを示している。証拠開示と新証拠の積み重ねをバネに、学習と教宣の取り組みを強化し、再審における証拠開示の法制化の世論を大きくしよう。
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