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主張&声明

検察官は「秘密の暴露」に関わるすべての証拠を開示せよ!
再審における証拠リスト開示の必要性を訴えよう!

(月刊「狭山差別裁判」460号/2015年4月)

弁護団の粘り強い努力で証拠開示が進んでいる。狭山事件の確定有罪判決となっている41年前の寺尾判決では、被害者の自転車に乗って脅迫状を届けるとちゅうの鎌倉街道で自動三輪車に追い越されたという石川さんの自白にもとづいて捜査した結果、それがYさんの運転する自動三輪車だと判明したとして、これが「秘密の暴露」(捜査官があらかじめ知らなかった事実が自白によって判明した)にあたるとして有罪証拠のひとつにされた。弁護団はYさんや同乗したOさん、Tさんの5月1日の行動や鎌倉街道を走行した車両に関する捜査書類などの証拠開示を求めた。

 これに対して、7月21日付けで検察官は、1963年5月7日付けの捜査報告書1通を開示した。開示された報告書は「手拭いの配付先」についての報告書であったが、Oさんの家が手拭い配付先の1軒であったことから、Oさんの5月1日の行動が記載されていた。捜査報告書にはOさんは事件当日、Tさん、Yさんとともに午後7時から同じ市内のHさん方に市議会選挙の当選祝いに行ったと記載されていた。重要なのは、Yさん運転の車が5月1日の夜に鎌倉街道を走行したという情報を、5月7日という初期捜査の段階で把握していたことである。

 寺尾判決は、鎌倉街道を自転車で通ったという石川さんの自白が6月21日で、Yさんら3名の鎌倉街道を車で通ったという調書がそれより後の6月27日付けであることから、自白にもとづいて捜査してはじめて鎌倉街道を車で通ったことがわかった「秘密の暴露」だとしていたからだ。ところが、今回開示された捜査報告書によって、捜査当局は自白より1ヵ月以上も前に、「Yさんの車の鎌倉街道走行」を把握していたことが判明し、車の追い越しは「あらかじめ(自白より前に)捜査官が知り得なかった事項」とは言えないことが明らかになった。「秘密の暴露」があるから石川さんの自白は信用できるとした寺尾判決に疑問が生じていることは明らかだ。自白全体にみられる変遷や不自然さからすれば、むしろ、あらかじめ知り得た情報にもとづいて自白を誘導した疑いが生じる。弁護団は、この開示された捜査報告書をただちに新証拠として提出し、すでに提出している自転車による走行実験や調査報告書などの新証拠と総合的に検討し、再審を開始すべきだと主張している。

 また、捜査報告書の記載から、このほかにも5月1日のOさんら3人の行動や車の走行に関する捜査書類があると考えられることから、弁護団はさらに捜査書類の開示を求めた。

 7月に開かれた第24回三者協議は、6月29日付けで就任した植村・新裁判長のもとではじめておこなわれた三者協議であったが、植村・新裁判長は、証拠物や客観的な証拠は開示してほしいという従前からの裁判所の基本姿勢を踏襲する旨を表明した。裁判所は従来から、いわゆる「秘密の暴露」に関する証拠はできるかぎり開示してほしいと検察官に促している。犯人は5月1日午後7時半頃に脅迫状を届けていることから、事件当日の被害者宅周辺の車や人の動きは徹底して捜査されたはずだ。検察官は、裁判所の勧告に従い、公平・誠実に証拠を精査し、すみやかに証拠開示におうじるべきだ。

 証拠リスト、まずは東京高検以外の証拠物の一覧表を開示すべきだ。


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