(月刊「狭山差別裁判」462号/2016年1月)
弁護団が開示を求めた証拠物4点について、裁判所は、証拠物については、プライバシーの問題がなければ基本的に開示する方向で検察官に検討を求めていたが、第26回三者協議において、検察官は本件再審請求と「関連性・必要性がない」として応じなかったという。証拠物は、物それ自体に意味があり、代替性がないので基本的に弁護側に開示すべきであろう。しかも、 これら4点の証拠物は東京高検の領置票(証拠物一覧表)に載っていたものだ。東京高検は関連性のない証拠物を領置していたのであろうか。領置票に記載された物的証拠を関連性がない というのも理解できない。
検察官は必要性や関連性がないから開示しないというが、必要性・関連性を判断するためには、その証拠物の中身を見なければならないはずだ。いま問題となっている4点の証拠物は内容的に見て関連性や必要性のあるものの可能性もある。検察官の証拠開示拒否はなんら合理的な理由がない。検察官はすみやかにこれら証拠物の開示に応じるべきだ。
検察官は、東京高検以外の証拠物の一覧表については、事件当時の実況見分調書に記載された犯行現場を撮影した8ミリフィルムは高検の領置票には載っていない。検察官は不見当と回答し、なぜないのかは不明という。警察にはあったはずの証拠物がその後、どのように保管されていたのか、わからないというのは、あまりに不当・不誠実な話ではないか。
同じような問題は、万年筆発見のもととなった「略図」 についてもいえる。弁護団は、あらたに開示された取調べテープの分析をふまえて、警察が「カモイに置かれた万年筆を自白通り発見した」かのように装うために、石川さんの書いた見取図を改ざんしたものと指摘した。石川さんはこの略図において、万年筆をカモイに置いたと特定しておらず、むしろ、同じときの取調べテープで、万年筆は風呂場のしきいに置いてあると供述しているのだ。さらに問題は、万年筆という重要な証拠の発見のもととなったこの略図を警察がなぜか供述調書に添付せず、2審の法廷になってから証人尋問の際に持参して提出していることだ。略図の改ざんを隠すために証拠化しなかった疑惑がある。捜索責任者だった小島警部が1審の法廷で2回目の家宅捜索をやっていないとごまかした証言をしていることにも通じる。狭山事件の捜査には多くの不正の疑問があり、警察が証拠にしなかった物があるということは明らかだ。弁護団が、埼玉県警など証拠物一覧表の開示を求めるのも当然であろう。
袴田事件では、静岡地裁の再審請求で、検察は自白後の袴田さんの取調べ録音テープを開示し、これ以外に録音テープは存在しないと回答していたが、現在の即時抗告審で、静岡県警の倉庫にあったとして、さらに15本もの取調べ等の録音テープが証拠開示された。その中には弁護士との接見を盗聴録音したテープもあった。警察が都合の悪いと判断したものを隠していたと言わざるを得ない。50年近くたってこうした問題が発覚するような事態は許されない。
狭山弁護団がいま求めているように、警察で作成された証拠物の一覧表を弁護側に開示すべきだ。東京高裁の植村裁判長は、警察の捜査にきびしい目を向け、高検以外の証拠物一覧表の開示勧告をおこなうべきだ。
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