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主張&声明

取調べ録音テープは石川さんの無実を示す決定的新証拠だ!
東京高裁は鑑定人尋問など事実調べをおこなうべきだ!

(月刊「狭山差別裁判」465号/2016年4月)

 狭山事件の確定有罪判決となっている2審・東京高裁の寺尾判決は、筆跡などを客観的な有罪証拠だとしているが、いずれの事実認定も自白をささえにしている。結局、密室の取調べで作られた自白調書に依存しているが、その自白について寺尾判決は、「青木(取調べ警察官)、長谷部(取調べ警察官)の当審各証言に徴しても、不当な誘導がなされたことを窺わせる状況は見いだせない」「被告人の取調べを主として担当し、最も数多くの供述調書を作成している青木が当審において証人として、自分は、平素から供述調書というものは被疑者の言うとおりをそのまま録取するものだと考えているし、それを実践してきたと証言している」などとして、自白は信用できるとしている。しかし、取調べに不当な誘導はなく自白調書は信用できるとした寺尾判決の認定が、取調べ録音テープ関係の新証拠によってくずれていることは明らかである。

  自白調書では、「私は・・・」というふうに自分から犯行内容を詳しく語ったように書かれているが、録音された取調べテープのやりとりは、これとはかけ離れており、警察官の質問に石川さんはごく短くしか答えておらず、自分の体験にもとづいて犯行を語るようにはなっていない。しかも、その短い応答のなかに犯行の客観的状況に合わない供述がいくつもある、と心理学者の浜田寿美男さんの鑑定は指摘する。

  また、取調べテープのやりとりから、石川さんが死体の状況や鞄・教科書の捨てられていた状況などをまったく知らないことが明らかなのだ。単独犯行を自白した6月23日の1対1の取調べのときに、石川さんが死体の状況を尋ねていたことさえ開示された関巡査の報告書で明らかになっている。石川さんが犯行内容を知らず、語れない実態こそが、犯行体験のない無実の人の「無知の暴露」を示していると浜田鑑定は指摘する。

  寺尾判決は、青木警部や長谷部警視らの「自発的に供述し説明に矛盾はなかった」「すらすらと犯行を自白した」「死体の状況をよく知っていた」「関(巡査)ではなく自分たち3人の取り調べで、一人でやったと自白した」などという法廷での証言を自白が信用できる根拠としてあげたが、これら取調べ刑事らの法廷証言が実際の取調べの実態、経過と食い違っていることは取調べテープで明らかだ。石川さんが「すらすらと自白し」ていないことは録音された取調べテープを素直にみれば明白だ。

  実際には、取調官らが、脅迫状を書いたことを認めさせるように強要し、自白に追い込み、さらに犯行の状況を答えられない石川さんに関巡査が1対1の取調べで、いろいろと説明し、その後、長谷部警視ら3人の刑事が加わった取調べで虚偽の自白調書が作られていくという経過だったことが取調べ録音テープから浮かび上がっているのだ。

  むしろ、誘導によって虚偽の自白調書がつくられていった実態を隠そうと、取調べ警察官らが検察官と打ち合わせて法廷で偽証していた実態が明らかになっているというべきである。

  寺尾判決の有罪認定の誤りは明白であり、東京高裁は、すみやかに取調べテープに関して、浜田鑑定人らの証人尋問等の事実調べをおこない、再審を開始すべきだ。


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