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主張&声明

再審開始決定に対する検察官の抗告を禁止すべきだ!
証拠開示の義務化を含む再審法改正を求めよう!

(月刊「狭山差別裁判」478号/2017年12月)

 熊本県松橋町(現宇城市)で1985年に男性が殺害された「松橋事件」で、犯人とされた宮田さんが求めた再審請求で福岡高裁は11月29日、福岡高検の即時抗告を棄却し再審開始を認める決定をおこなった。松橋事件では、弁護団が証拠開示を請求し、開示された証拠を閲覧したところ、有罪判決が宮田さんが凶器に巻き付けて犯行後に燃やしたとされた布きれが発見されたのだ。弁護団は、また、凶器の形状と傷が一致しないという法医学者の鑑定書も新証拠として提出した。福岡高裁は、これら弁護団が提出した新証拠によって捜査段階の宮田さんの自白は大きく揺らぎ、有罪判決に合理的疑いが生じたとしたのである。

 宮田さんは逮捕当初否認を続けたが、連日の厳しい取調べで「古いシャツを切り取った布を小刀に巻き付けて刺した」と自白した。証拠開示で殺害後に燃やしたというこの布が出てきたのだ。証拠開示で無実が明らかになった。ところが、福岡高検は、この高裁の再審開始決定に対して、開始決定は判例違反だとして最高裁に特別抗告をおこなった。あまりに人権を無視した不当なやり方である。無実を叫びつづける再審請求人の宮田さんは84歳である。一日も早く再審公判で冤罪の真相を明らかにし無罪判決が出されるべきだ。検察は「父の死を待つのか」という宮田さんの次男の怒りの言葉が先日の東京新聞に掲載されている。
 大崎事件でも、検察は鹿児島地裁の2度目の再審開始決定に対して即時抗告を申し立て、現在も福岡高裁宮崎支部で審理が続く。再審請求人の原口アヤ子さんは90歳である。また、袴田事件では、2014年3月に静岡地裁で再審開始決定が出されたが、検察が抗告し、4年目にやっと結審するという。検察官があくまで争うというならすみやかに再審公判を開けばよいのではないか。再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止すべきである。早急に再審法改正が必要だ。

 狭山事件の第3次再審請求では、検察官は弁護団の証拠開示請求に対して、開示の必要性がないとして、財布・手帳や「少時」関係など自白の信用性に関わる重要な証拠の開示に応じていない。昨年の刑訴法改正では、再審請求においても弁護側への証拠開示を保障すべきだという議論が国会でくりかえしおこなわれ、採決にあたっての附帯決議で、この間の冤罪を教訓として、証拠開示や事実調べの必要性について議論されたことを最高裁判所は周知させることが確認された。

 東京高裁にたいしても国会の議事録等が送られ、裁判官もそのことを知っているはずだ。現在、改正刑訴法の附則にもとづいて、再審における証拠開示など最新の手続きに改正について検討する協議が法務省や日弁連、最高裁などですすめられているという。

 公平・公正な審理を受けることを憲法は保障し、公務員である検察官、裁判官は憲法の擁護と遵守を義務づけられているはずだ。わたしたちは、狭山事件においても公正・公平な再審の審理を裁判所、検察官に求めていかなくてはならない。

 わたしたちは、狭山事件の証拠開示、事実調べ、再審開始を求めるとともに、多くの冤罪事件、再審事件の弁護団、支援者や学者、ジャーナリストなどとともに、再審開始決定に対する検察の抗告の禁止や証拠開示の保障など再審法改正の運動を幅広くすすめよう。


月刊狭山差別裁判題字

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