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主張&声明

東京高裁・後藤眞理子裁判長は狭山事件の再審開始を!
新証拠の学習・教宣をすすめ再審求める世論を大きくしよう!(その2)

(月刊「狭山差別裁判」480号/2018年3月)

 狭山事件の確定有罪判決(2審・東京高裁・寺尾正二裁判長による無期懲役判決)は、客観的証拠として7つの情況証拠、万年筆など3物証の発見(犯人しか知らないことが自白で判明したとする「秘密の暴露」)、自白の信用性を有罪証拠としてあげている。客観的な有罪証拠の「主軸」とされたのが脅迫状の筆跡である。有罪判決は「脅迫状の筆跡が石川さんの筆跡であること」すなわち筆跡が一致することが自白を離れて有罪証拠の主軸だというのだ。その根拠は、埼玉県警鑑識課や科学警察研究所など警察側の3つの筆跡鑑定である。しかし、これら警察の筆跡鑑定は、類似点だけをあげて同一人の筆跡とするだけの誤った鑑定であり、石川さんが正しく書けていない平仮名の「ま」などを鑑定対象からはずすなど恣意的な鑑定である。

  それに対して、弁護団は第3次再審請求で専門家による筆跡鑑定を多数提出し、石川さんが脅迫状を書いていないことを明らかにしている。とくに第3次再審請求では裁判所の勧告もあり、逮捕当日に石川さんが書いた上申書や石川さんが字を書いている場面が録音された取調べテープなどが証拠開示され、あらたに専門家による鑑定が多数提出されたことは重要である。こうした開示証拠によって脅迫状と石川さんの筆跡・国語能力の相違は一層明らかになっている。

 魚住和晃・神戸大学名誉教授による一連の鑑定は、高精度でスキャンされた画像をもとに筆跡の特徴を分析し、固有の筆癖の相違を明らかにして、石川さんが脅迫状を書いていないことを立証している。また、遠藤織枝・元文教大学教授による鑑定などは、漢字の使用、句読点の使用、ひらがな表記、作文能力などさまざまな点で脅迫状と石川さんの国語能力が相違していることを明らかにしている。

 森実・大阪教育大学教授による鑑定や魚住第3鑑定は、当時の石川さんが非識字者で脅迫状を書けたはずがないことを、取調べの録音という客観的な事実をもとに明らかにしている。

 そして、コンピュータによる画像解析の方法を使ったあらたな筆跡鑑定である福江報告書は、脅迫状と石川さんの筆跡のズレ量が、一般的な同一人が書いた場合の筆跡のズレ量、書きムラでは説明できないほど大きく相違することを客観的に明らかにしている。書き癖の相違、国語能力の相違、コンピュータが客観的に計測した字形の相違など、あらゆる角度から筆跡の相違が明らかにされ、石川さんが脅迫状を書いていないことが立証されているといえる。脅迫状は犯人の残した唯一といっていい物的証拠である。それが、あらゆる角度から石川さんと結びつかないことは直接に石川さんの無実を証明しているといえよう。

 狭山事件の有罪判決が有罪証拠の主軸としたものが崩れているのであるから、すみやかに鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきである。

 再審請求を棄却したこれまでの裁判所の決定は、筆跡の相違を認めながら、「字は書くたびに違う」として筆跡の違いをごまかしてきた。しかし、開示された取調べ録音テープで石川さんが筆記している場面を見れば、取調べで書いた字が正しく書けていないのは、書く環境や心理といった書字条件によるものではなく、当時の石川さんが部落差別によって文字を奪われた非識字者であったからであることが一層明らかになっている。

 筆跡・脅迫状にかかわる新証拠の学習をすすめ、石川さんの無実を広く訴えよう!狭山事件55年をアピールし、鑑定人尋問などの事実調べ・再審開始を求める世論を大きくしよう!


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