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主張&声明

石川さん不当逮捕56年!新証拠の学習・教宣を強化しよう!
東京高裁に鑑定人尋問、狭山事件の再審開始を求めよう!

(月刊「狭山差別裁判」492号/2019年5月)

 石川一雄さんが不当逮捕されて56年になろうとしている。無実の石川さんがなぜ冤罪におとしいれられたのか、もう一度考えたい。狭山事件の有罪判決(2審・東京高裁の無期懲役判決)は、死体発見現場近くでスコップが発見され、それが死体を埋めるために使われたもので、被害者の家の近くあったI養豚場のものであることがわかり、I養豚場関係者を捜査し、血液型がB型で犯人と一致し、アリバイがはっきりせず、かつ脅迫状と筆跡が類似するという鑑識の回答がえられたことから警察は石川さんを逮捕したと認定している。そして、石川さんが取調べで自白し、その自白によって万年筆など被害者の所持品が発見されたから自白は信用できるし、石川さんが犯人に間違いないと認定している。有罪判決は、こうした捜査の経過は合理的だとし、また、取調べをした警察官らの「犯行を認めたあとはスラスラ自白した」などという証言を援用して、取調べに問題はないとしているのだ。

 しかし、この間弁護団が提出した新証拠は、石川さんの無実を明らかにするとともに、冤罪を作り出した捜査、取調べ、司法制度の問題を明らかにしている。たとえば、I養豚場に捜査が向けられる契機となったスコップについて県警鑑識課の付着物の鑑定が作成されているが、弁護団が昨年7月に新証拠として提出した元京都府科捜研技官の平岡義博・立命館大学教授の鑑定は、証拠のスコップが死体を埋めるために使われたものとも、I養豚場のものということも特定できないと指摘している。スコップ発見を契機に警察は被差別部落出身のIさんの養豚場に捜査を向けているが、それは何ら科学的根拠のない見込み捜査であったことが明らかだ。県警鑑識課員のスコップの鑑定は7月に作成されているが、このような経過はむしろ、警察の捜査にあわせて鑑定が恣意的に作られたと言わざるをえない。証拠開示されたスコップに関わる当時の捜査報告書で、捜査本部が発見スコップを養豚場と結びつけようとしていることや、警察官がI養豚場からスコップが盗める者として石川さんの名前をあげて報告している事実が明らかになっている。石川さんは見込み捜査で狙い打ちされたのだ。有罪判決が言うような合理的な捜査とはとうてい言えない。石川さん逮捕の根拠とされた県警鑑識課の筆跡が類似するという中間回答が誤りであることも魚住意見書などの新証拠で指摘されている。また、証拠開示された取調べ録音テープで、石川さんに脅迫状を書いたと認めるように自白を強要していた実態や、さまざまな自白の誘導が暴かれ、「スラスラ自白した」などという警察官の証言のウソも明らかになっている。弁護士との接見を禁止するなかでウソの自白が作られているのだ。自白の虚偽を明らかにする多くの新証拠、万年筆発見経過の疑問を指摘した鑑定も出された。予断と偏見にみちた捜査の背景には、「あんな犯行をやるのは部落に違いない」という事件直後から広がっていた部落に対する差別意識があった。当時の新聞記事には「死体が四丁目に近い麦畑で見つかったとき、狭山の人たちは異口同音に『犯人はあの区域だ。』と断言した。」(1963年6月24日「東京新聞」)と書かれている。

 東京高裁は、こうした狭山事件の捜査や取調べの問題をきとんと見たうえで、有罪判決が根拠とした警察の鑑定や物証の発見経過に疑問がないのかを検証すべきである。これまでの多くの冤罪事件が、予断と偏見による見込み捜査から始まり、それを合理化する証拠が作られ、さらに虚偽自白の強要、証拠のねつ造までおこなわれたことを教訓にしなければならない。

 石川さんが冤罪におとしいれられた原因である部落差別の現実、司法制度の問題を確認し、反差別・人権のたたかい、冤罪をなくすための司法改革、再審における証拠開示の保障を含む再審法改正を求める運動と結びつけて狭山再審闘争の強化をすすめよう。東京高裁が弁護団提出の新証拠について鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始するよう求めよう!


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