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主張&声明

大崎事件の再審開始取消し・棄却決定は最高裁の暴挙だ!
再審の逆流を許さず再審法改正、狭山再審勝利をかちとろう!

(月刊「狭山差別裁判」495号/2019年8月)

 6月25日付けで最高裁判所第1小法廷(小池裕裁判長)は大崎事件の第3次再審請求で、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部の再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をおこなった。この最高裁の暴挙に対して強く抗議する。

  大崎事件では、第3次再審請求で鹿児島地裁は2017年6月、再審開始を決定した。検察官が即時抗告したが、2018年3月に福岡高裁宮崎支部も再審開始決定を維持した。これに対して検察官が最高裁に特別抗告を申し立てていた。今回の決定は検察官の特別抗告には理由がないとしながら、職権で調査するとして、地裁、高裁の再審開始決定を取り消し、さらに高裁に差し戻すのではなく、自ら再審請求を棄却するという前例のない決定である。地裁、高裁の決定は鑑定人の尋問をおこなうなどして詳細な認定をおこなったうえで再審開始を認めている。検察の特別抗告に理由がないというなら抗告を棄却し再審開始を確定させるべきであり、事実調べもしないで棄却する決定をおこなうというのは手続き的にみてもあまりに不公平・不当である。

 地裁、高裁の再審開始決定は、死因を転落による出血性ショックとした弁護側の法医学鑑定である吉田鑑定を再審理由としていた。この吉田鑑定について最高裁決定は、吉田鑑定人は死体を直接検分しておらず、遺体解剖時の写真から鑑定しているので証明力がないとしている。しかし、このような言い方をすれば有罪判決の根拠だけが正しくて、再審請求で別の法医学者があらたな鑑定をしても意味がないことになる。再審請求の新証拠のハードルを不当に高くしており、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を再審においても適用するとした最高裁の判例に反していると言わざるをえない。新証拠の証明力に疑問があるというなら高裁に審理を差し戻すべきであって、新証拠を一方的な「決めつけ」で否定し再審を棄却することは許されない。

 一方で最高裁決定は、死体遺棄した犯人は殺害をした犯人であり、犯人は原口アヤ子さんと親族以外に「想定し難い」と断定的に認定しているが、その根拠は何も示されていない。また有罪の根拠となった共犯とされた人たちの自白についても、変遷や矛盾が見られるにもかかわらず「信用性は相応に強固なもの」などというだけで具体的な説明は何も書かれていない。国民に納得のいく説明をつくした決定とはとうてい言えない。それでいて再審の訴えを強制的に終了させているのだ。一方的な決めつけで冤罪ではないと宣告しただけであり、このような決定がまかり通るならば、多くの再審も認められなくなると言わざるをえない。誤った裁判から無実の人を救うためにある再審制度は人権の制度であり、最高裁は人権擁護の最後の砦であると言われる。今回の最高裁決定は、反対意見もなく第1小法廷の判事全員一致の決定である。いまの最高裁に人権感覚がまったくないと言わざるをえない。わたしたちは、国民審査で×を付けるだけでなく、最高裁のあり方を批判し改革を求めていく必要がある。

 わたしたちは、大崎事件の最高裁決定に強く抗議するとともに、再審の逆流を許さず、狭山事件の再審開始を求める闘いをさらに強化し、司法のあり方、再審のあり方を変える運動を幅広くすすめていかなければならない。今後の大崎事件再審の闘いに連帯していこう。再審開始決定に対する検察官抗告の禁止、再審における証拠開示手続きの確立など再審法改正を求めていこう。


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