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主張&声明

大崎事件の再審開始取消し・棄却決定は最高裁の暴挙だ!
再審の逆流を許さず再審法改正、狭山再審勝利をかちとろう!

(月刊「狭山差別裁判」496号/2019年9月)

 6月25日付けで最高裁判所第1小法廷(小池裕裁判長)がおこなった大崎事件の再審開始取消し・棄却決定は、市民の常識的感覚としてもおかしいことだらけだ。決定は冒頭で検察官の抗告には理由がないとしている。そもそも最高裁の審理は福岡高裁宮崎支部の再審開始決定に対して検察官が取消しを求めて特別抗告をおこなったことについての審理である。検察官の抗告に理由がないというなら棄却し再審開始を確定するべきだろう。最高裁は検察の抗告を棄却しながら職権で判断するとして、再審開始決定の根拠となった新証拠を否定しているが、事実調べもせずに証拠の評価を変更することができるのかも疑問だ。最高裁の審理は1年あまりだが、その間に鑑定人の尋問や弁護団の弁論もおこなっていない。突然、再審請求を棄却し、弁護団の異議申し立てに対しても審理しないと電話連絡してきたという。まさに再審の訴えを「強制終了」しているのだ。こうした最高裁の今回の棄却のやりかたは、最高裁は何でも判断でき、それは絶対に正しいと宣言しているようであり、きわめて権力的な姿勢を示している。

 最高裁決定は再審開始決定を取り消さなければ「著しく正義に反する」と言って高裁に差し戻すのではなく自ら再審請求を棄却している。しかし、著しく正義に反するから自判するというのは、有罪判決を取り消し無罪とすべき場合の規定であるはずだ。冤罪の疑いが地裁でも高裁でも認められたものを有罪方向で自判することは許されないはずだ。無実の人が誤判によって有罪とされるということは著しい人権侵害であり正義に反する。再審制度はそのような誤判から無実の人を救済するためにあるのであり、人権擁護のための制度である。一貫して無実を叫びつづけ92歳になる原口アヤ子さんの姿が報じられているなかで、再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却した最高裁はとうてい「人権擁護の最後の砦」とはいえない。むしろ人権を踏みにじる司法の姿をあらわにしたものと言わざるをえない。

 そもそも、鹿児島地裁で再審開始決定や福岡高裁宮崎支部の再審開始決定に対して検察官が抗告したことじたいが市民常識として疑問だ。さらに検察官は再審開始の根拠となった法医学者の鑑定を論難する別の法医学者の鑑定を作成し提出したりしている。弁護側の新証拠を否定するために学者や科学警察研究所に依頼して意見書を作成・提出するということは狭山事件の再審請求でもくりかえしおこなっている。この間も下山第2鑑定や福江鑑定に対する反証の意見書を提出するとしている。これらはすべて公費である。国民の税金を使って「再審妨害」をおこなっているのが検察官なのである。一方で、検察官は証拠開示請求に応じようとしない。大崎事件では検察官が「ない」と言い続けてきた証拠が存在し、裁判所の勧告で開示された。検察官は証拠を隠し続けていたのだ。検察官は証拠を独占し、弁護側の証拠開示には応じようとせず、弁護側の新証拠に対しては公費を使って反証活動をおこなっている。こうした不公平、不公正が許されている司法制度の現状をわたしたちは変えなくてはならない。大崎事件の最高裁不当決定は、最高裁の不正義、検察官の不正義とともに現在の再審制度の欠陥も明らかにしている。狭山事件の第3次再審の闘いを一層強化するとともに、大崎事件・最高裁不当決定を徹底して批判し、再審の逆流を許さず、誤判救済のための司法改革、再審法改正をすすめよう。


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