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主張&声明

新証拠によって有罪判決の誤りが明らかになっている。
東京高裁は鑑定人尋問をおこない狭山事件の再審開始を!

(月刊「狭山差別裁判」497号/2019年10月)

 狭山事件で確定判決となっている東京高裁の無期懲役判決から45年になる。1974年10月31日、東京高裁第4刑事部(寺尾正二裁判長)は狭山事件の控訴審で石川一雄さんに対して無期懲役という有罪判決をおこなった。

 寺尾裁判長は、控訴審が再開された1973年11月から裁判長となり、部落問題の本を読んだと言って、部落差別についての証人調べの要求を却下した。被害者のものとされる万年筆が警察の2回におよぶ家宅捜索の後にお勝手入り口の鴨居から発見された経過がおかしいとして、石川さん宅の鴨居の現場検証を求めたが現場検証もおこなわなかった。そして、有罪判決では、部落差別にはまったくふれず「客観的証拠に従って捜査を進めた」「始めから不当な予断偏見をもって被告人をねらい撃ちしたとする所論を裏付けるような証跡は発見することができない」と言い、また、「鴨居の高さは床から175・9センチで、万年筆のあったのは鴨居の奥行き8・5センチの位置であるから、背の低い人には見えにくく、人目につき易いところであるとは認められない」として2回の捜索で発見されなかったことは不自然でないとした。

 判決のときに、石川さんは、「そんな判決は聞きたくない」と叫び、山上弁護士は「ペテンだ」と抗議し、中山弁護士は「部落問題はどうした」と追及したのは当然だ。しかし、最高裁が弁護側の上告を棄却し、寺尾判決は確定した有罪判決となって、いまも石川さんに「みえない手錠」をかけている。

 再審請求は、この寺尾判決の誤りを新証拠によって明らかにし、くつがえす闘いだ。寺尾判決は、脅迫状と石川さんの筆跡が一致することを主軸として足跡、スコップなどの客観的証拠、万年筆など被害者の所持品が自白によって発見されたこと、自白は客観的事実と矛盾はなく自白は信用できることなどを有罪の根拠としている。弁護団は第3次再審請求で多くの新証拠を提出し、これら有罪証拠に重大な疑問が生じていることを明らかにしている。

 第3次再審請求で重要なことは、弁護団の取り組みによって、逮捕当日の石川さんの上申書、取調べ録音テープ、被害者のインク瓶などの物証や鞄、腕時計、手拭い、スコップに関わる捜査報告書などの重要な証拠が開示されたことだ。これによって、無実を証明する新証拠がつぎつぎと発見された。開示された上申書や取調べ録音の筆記場面を分析した筆跡鑑定、取調べテープを心理学的に分析した鑑定書など、開示されたインク資料を蛍光X線分析装置で分析した下山第2鑑定、また開示された上申書などを資料としてコンピュータを使った筆者異同識別鑑定も提出された。また、元科捜研技官のスコップについての鑑定書や開示されたスコップ関係の捜査報告書から、石川さんをねらい撃ちした見込み捜査の実態が明らかになった。

 第3次再審請求でこれまで提出された新証拠は211点におよぶ。これらの新証拠によって寺尾判決は崩れている。

 狭山事件ではこれまでも多くの新証拠が提出されたが、確定判決以来、鑑定人の尋問などの事実調べがまったくおこなわれていない。第3次再審では専門家の科学的鑑定が出され、検察官から反証の意見書も出されている。東京高裁は鑑定人尋問をおこなうべきである。

 寺尾判決の誤り、石川さん無実の新証拠の学習・教宣を強化し、狭山事件の再審開始を訴えよう!


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