(月刊「狭山差別裁判」499号/2019年12月)
狭山事件の第3次再審請求の第41回三者協議がおこなわれた。弁護団は、有罪判決の誤りと石川さんの無実を明らかにする新証拠3点を提出した。いずれも専門家による意見書である。
スコップの土に関する平岡第2鑑定は、長年、科捜研で科学捜査に従事してきた土の専門家である平岡検定人が、狭山現地での観察、地質学的な調査もおこない、狭山事件で有罪判決の根拠の一つとされたスコップが死体を埋めるのに使われたとはいえないことを明らかにしたものだ。
鉄意見書は、法医学の観点から当時の警察医の血液型鑑定が厚生省が定めた当時の検査基準も満たしていない不適切な検査であり、犯人の血液型をB型とした鑑定の手法、結果は妥当ではないと指摘したものだ。血液型の一致は石川さんが犯人である有力な情況証拠であることに疑問の余地はないとした狭山事件の有罪判決(寺尾判決)の誤りを明らかにする新証拠だ。
雨宮意見書は、検察官が下山第1鑑定に対する反証として提出した学者の意見書の問題点を指摘し、当時の科警研技官の鑑定の添付写真をもとに発見万年筆に別のインクが混在しているとする主張に理由がないことを指摘している。雨宮鑑定人も長年科捜研で科学捜査に従事し、犯罪捜査の実務でペーパークロマトグラフィー検査の経験をもつ専門である。石川さんの家から自白通り発見されたとして有罪判決の根拠とされた万年筆には、被害者が事件当日まで使っていたインク(ジェットブルーインク)は入っておらず、被害者の万年筆とはいえないことがさらに明らかになったといえよう。
東京高裁は、これらの新証拠をこれまで提出された新証拠をふくめて総合的に評価し、有罪判決の認定に合理的疑いが生じているかどうか検討すべきである。わたしたちは新証拠の学習・教宣を強化し、東京高裁が鑑定人尋問をおこない狭山事件の再審を開始するよう求める世論を大きくしよう!
弁護団が2018年8月に提出した下山第2鑑定に対して、検察官は昨年12月の第38回三者協議で実験などもおこなったうえで反証を提出するとしたが、2019年4月の第39回三者協議では反証の見通しを回答しなかった。弁護団は、反証の提出時期や内容についてくりかえし検察官に釈明を求めたが、9月におこなわれた第40回三者協議では、被害者が当時使っていたクロム元素の入ったジェットブルーインクを探しており、まだ見つかっていないので反証の見通しがたっていないとした。弁護団は、反証のためにどのような実験をこれまでやったのか、クロム入りのジェットブルーインクを入手して何をするのかなどを回答するよう書面で求めた。先日の第41回三者協議で、次回の協議でジェットブルーインクが入手できたかどうか、今後の反証の方向を示すことになったという。そもそも、下山第2鑑定のポイントは、蛍光X線分析によって、被害者が事件当日に書いたペン習字の浄書のインクや被害者が使っていたインク瓶のインクにはクロム元素が含まれているが、事件当時、発見万年筆で書いた「数字」(2016年に証拠開示された調書に添付されたもの)のインクからはクロム元素が検出されなかったことである。これらの資料はいずれも証拠開示されたもので検察庁に保管されている。再審における証拠開示や事実調べの保障や、検察官のあらたな立証のための活動の制限などのルールを作るべきだ。狭山事件の再審開始、鑑定人尋問とともに再審法改正を求めよう!
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