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主張&声明

警察、検察、裁判所は再審無罪の教訓を学べ!
冤罪のたたかいの連帯をすすめ再審法改正をもとめよう!

(月刊「狭山差別裁判」503号/2020年4月)

 さる3月31日、大津地裁(大西直樹裁判長)は、いわゆる「湖東記念病院事件」の再審公判で西山美香さんに無罪判決をおこなった。無罪判決は、被害者が何者かに殺害されたという事件性そのものを否定し、さらに、自白の信用性だけでなく、自白が任意におこなわれたことにも疑いがあるとして自白調書を証拠排除した。無実を訴え続けた西山さんと家族、再審弁護団、支援者のねばり強いたたかいの成果である。

 無罪判決は、確定判決が有罪の根拠とした医師の鑑定が信用できないと否定しているが、その理由の一つに、この医師が西山さんが逮捕される前の段階で、「痰(たん)の詰まりによって酸素供給が低下した状態で心臓停止したことも十分考えられる」(要旨)という見解を警察官に説明していた事実をあげている。この事実は再審開始決定後に証拠開示された捜査報告書で明らかになった。警察が検察に送致していなかった証拠だという。警察、検察の証拠隠しが冤罪を作っていたのだ。弁護団はもしこの証拠が1審の裁判で開示されていれば、その段階で無罪判決になっていたことは確実だと声明の中で指摘しているが当然であろう。

 そもそも何者かによる殺害という事件ではなかったのに、警察が事件を作り上げ、犯人をでっちあげたという意味では、東住吉事件も大崎事件も同じだ。人権無視の強引な取調べで虚偽自白が作り出され、誤った裁判の根拠とされた点でも共通する。
東住吉事件の再審無罪判決は、弁護団が提出した科学的な実験にもとづく新証拠によって、事件ではなく車両のガソリン漏れによる事故であったことを認め、証拠開示された捜査報告書などによって、自白が任意になされたものではないとして自白の任意性も否定した。再審無罪をかちとった青木惠子さんは、なぜこのような冤罪が作られたのか、冤罪の原因と警察、検察の責任を明らかにさせるために国賠裁判をたたかいつづけている。

 湖東事件の再審無罪判決をおこなった大西裁判長は判決文を読み上げたあとに「今回の裁判は、刑事司法全体の在り方に大きな問題提起をしている」と説諭をしたという。その中で取調べに問題があったことや本件発生の15年後、再審開始決定後に初めて警察に隠されていた捜査報告書が開示されたことをあげて、「取調べや客観的証拠の検討、証拠開示の一つでも適切に行われていれば、このようなことは起こらなかった」と自省をこめて述べたという。(「京都新聞」2020年4月1日)この裁判長の言葉を現実のものとするためには、わたしたち市民一人ひとりが冤罪と人権、司法について考え、市民の声を広げることが必要だ。

 大崎事件は先日、第4次再審請求が申し立てられた。鹿児島地裁は一日も早く再審を開始すべきだ。袴田事件の再審請求は特別抗告が最高裁第3小法廷で審理されている。最高裁は東京高裁の不当決定を取消し再審開始決定をおこなうべきだ。狭山事件の第3次再審請求では弁護団が検察官の反証に対する再反論、新証拠を提出し、再審開始を求めている。弁護団が鑑定人尋問を請求すれば東京高裁はすみやかに実施し再審を開始すべきだ。再審を訴え続ける冤罪事件のたたかいの連帯をすすめ、再審における証拠開示の権利の確立、検察官の抗告の禁止、再審請求人の拡大などの再審法改正を求め続けよう!


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