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主張&声明

狭山事件では42年以上も事実調べがおこなわれていない!
東京高裁は鑑定人尋問をおこない再審を開始すべきだ!

(月刊「狭山差別裁判」506号/2020年7月)

 検察官は、5月29日付けで意見書を提出した。検察官意見書は、弁護団が提出した下山第2鑑定、原・厳島鑑定、浜田鑑定(万年筆に関する自白)など、万年筆にかかわる新証拠、主張全般に反論する内容である。検察官意見書は、下山第2鑑定について、科学的な反論ではなく、推測と可能性を積み重ねて、発見万年筆のインクと被害者が使用していたインクの違いをごまかし、確定判決や第2次再審の特別抗告棄却決定の判断の通りであると述べているだけだという。弁護団は、この検察官意見書に対して、証拠によって全面的に再反論するとしている。

 2020年6月18日、東京高裁で43回目の三者協議がひらかれ、検察官は、スコップに関して弁護団が提出した平岡第2鑑定に対する反証や、死体を200メートル前にかかえて運んだという自白の不自然さを明らかにした土地家屋調査士の報告書に対する反論を今後さらに提出すると述べたという。弁護団は、これらの反証、反論も検察官から提出されれば再反論することにしている。

 また、弁護団は、3次元スキャナを用いた計測にもとづく足跡鑑定、コンピュータによるデータ分析の手法を用いた取調べテープ分析鑑定、福江鑑定に対する検察側意見書への反論などを現在準備しており、順次提出していくことにしている。次回の三者協議は9月下旬におこなわれる。

 6月24日付けで狭山事件の再審請求を担当している東京高裁第4刑事部の後藤裁判長が定年退官し、後任の裁判長として大野勝則・前新潟地裁所長が就任した。

 狭山事件の第3次再審請求では、裁判所の勧告もあり、取調べ録音テープや逮捕当日の上申書など重要な証拠の開示がすすみ、供述心理鑑定、筆跡・識字能力鑑定、下山第2鑑定などの新証拠が提出されている。弁護団は、準備中の新証拠や検察官の反証・反論への再反論の提出をふまえて、鑑定人尋問の請求をおこなうことにしている。

 足利事件では有罪証拠とされたDNA鑑定の再鑑定がおこなわれ、菅家さんが無実であることが明らかになった。布川事件では、取調べ録音テープや捜査報告書などの証拠が開示されるとともに、法医学者の鑑定人尋問や目撃証言に関わる証人尋問がおこなわれ、再審が開始され無罪となった。証拠開示と事実調べは再審において不可欠である。

 しかし、狭山事件の再審請求は42年以上になるが、これまで一度も鑑定人尋問などの事実調べがおこなわれていない。あらたに担当裁判長に就任した大野勝則裁判長は、足利事件、布川事件、東住吉事件や先日、再審無罪判決が出された湖東病院事件などの冤罪・誤判の教訓を真摯にふまえて、狭山弁護団が提出した新証拠を十分検討するとともに、鑑定人尋問を必ずや実施し、狭山事件の再審を開始してもらいたい。

 鑑定人尋問・再審開始を東京高裁に求める要請ハガキ運動を全国からすすめよう。狭山事件の鑑定人尋問と再審開始を求める世論を一層大きくするとともに、再審開始決定に対する検察官による抗告の禁止や、再審請求における証拠開示や事実調べの保障など、再審請求の手続き規定の整備といった再審法の改正を求める声を大きくしていこう。

 再審法改正や誤判救済のための司法改革を求めて国会議員に働きかけよう!


月刊狭山差別裁判題字

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