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主張&声明

再審において事実調べ、証拠開示は不可欠だ!
誤判を正し、冤罪を作らない司法を求めよう!

(月刊「狭山差別裁判」510号/2020年11月)

 93歳になる原口アヤ子さんが冤罪を叫びつづけている大崎事件は、2020年3月に第4次再審請求が鹿児島地裁に申し立てられ、弁護団は新証拠として、救急救命医の鑑定書や心理学者の鑑定書などを提出している。この間、4回にわたって進行協議がおこなわれ、さる9月には、現場で協議をおこなうかたちで、鹿児島地裁の裁判官が現地を見に行ったという。

 鑑定書を提出した救急救命医も同行し、弁護団がおこなった当時の現場の再現と判決や調書にもとづくストーリーの再現に立ち合い、説明を聞いたという。弁護団は、被害者は自転車ごと溝に転落したことによる事故死であったと主張しており、有罪判決の認定を検証するうえで裁判官が現場を見ることは大きな意義があったといえるだろう。

 鹿児島地裁は、年明けには心理学者らの鑑定人尋問をおこなうことも決めたという。弁護団は、さらに隠された証拠の開示もねばり強く求めている。鹿児島地裁の公正かつすみやかな審理を求めたい。

 こうした大崎事件の審理経過は、再審請求において、現場検証や鑑定人の尋問が必要不可欠であることを示している。

 足利事件で菅家利和さんが再審で無罪になって10年になるが、再審請求で弁護団が求めたDNA型鑑定の再鑑定を東京高裁がおこない、菅家さんの無実が明らかになった。翌年には、布川事件で桜井昌司さん、杉山卓男さんが再審無罪をかちとったが、再審請求で証拠開示がおこなわれ、新証拠の事実調べがおこなわれ、再審開始のカギとなった。 東電女性社員殺害事件、東住吉事件、松橋事件など、この間あいついだ再審無罪判決は、いずれも証拠開示と鑑定人尋問などの事実調べが冤罪を晴らすカギとなっている。

 狭山事件の再審請求は、1977年に第1次再審が申し立てられて43年以上にもなるが、これまで一度も鑑定人尋問、証人尋問や現場検証がおこなわれていない。

 有罪判決の重要な争点である筆跡や足跡、あるいは自白の重要な争点である殺害方法、犯行態様についても、弁護団は専門家による鑑定書を多数提出しており、鑑定人の尋問は不可欠であると言わねばならない。

 狭山事件の第3次再審請求を審理する東京高裁第4刑事部の大野勝則裁判長は、こうした冤罪・再審事件の教訓をふまえ、弁護団が求める証拠開示をすすめ、鑑定人尋問を実施して、再審を開始すべきである。

 狭山再審弁護団は、年内に準備中の新証拠、検察官意見書の誤りを明らかにした新証拠を提出し、そして、新証拠が出そろった段階で、来年には、鑑定人尋問を請求する予定だ。東京高裁が鑑定人尋問をおこない、再審を開始するよう求める世論を一層大きくしよう。

 コロナ禍の中、各地で工夫をこらして、鑑定人尋問と狭山事件の再審を求める取り組みがすすめられている。新証拠の学習とともに、東京高裁に対する要請ハガキをすすめよう。

 桜井さんをはじめ、東住吉事件の冤罪被害者の青木惠子さん、湖東事件の冤罪被害者の西山美香さんらは、冤罪の原因と責任を問う国家賠償請求訴訟を闘っている。

 警察の人権を無視した取調べ、検察官の間違った起訴、嘘を積み重ねた証拠隠しが、冤罪を作り出したことを訴え、違法性を認めるよう求めている。

 こうした冤罪当事者の声、国賠裁判の闘いに連帯するとともに、冤罪を防止するための司法改革、誤判から無実の人を救済するための再審法改正を求めていこう。


月刊狭山差別裁判題字

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