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主張&声明

開示証拠によって狭山事件の冤罪の真相が明らかになっている!
東京高裁は鑑定人尋問をおこない再審を開始すべきだ!

(月刊「狭山差別裁判」517号/2021年6月)

 狭山事件の第3次再審請求では、2009年に東京高裁の門野博裁判長が検察官に証拠開示を勧告し、翌年5月に逮捕当日に石川さんが書いた上申書や取調べ録音テープなど36点の証拠が開示され、その後191点の証拠が開示された。この逮捕当日の上申書は当時の石川さんの筆跡の資料として、脅迫状とは異筆であるとする多くの専門家の筆跡鑑定が提出された。

 さらに、取調べテープにおいて石川さんが字を書いている場面の録音とそこで書かれた文字の分析によって、当時の石川さんがひらがなの表記のルールを知らず、脅迫状を書けたとは考えられないとする識字能力鑑定も出された。また、開示された逮捕当日の上申書などを資料として、コンピュータを用いた計測にもとづく筆者異同識別鑑定(福江鑑定)も提出された。

 新証拠によって、警察の筆跡鑑定を根拠に、石川さんが脅迫状を書いたことを有罪証拠の主軸とした確定判決(2審・東京高裁の無期懲役判決)に合理的疑いが生じていることは明らかだ。

 また、被害者のインク瓶、発見万年筆で書かれた数字が記載された書面など開示証拠によって、蛍光X線分析による下山第2鑑定が作成され、有罪の決め手の一つとされた発見万年筆が被害者のものとは言えないことが科学的に明らかになった。

 狭山事件では、死体発見現場近くで発見されたというスコップが、石川さんがかつて働いていた被差別部落出身のIさんの養豚場のものであり、石川さんが盗んで死体を埋めるのに使ったとして有罪証拠とされている。弁護団はこのスコップが、死体を埋めるために使われたものとも、I養豚場のものともいえないことを指摘した元科捜研技官の鑑定書を第3次再審で提出し証拠開示を求めた。そして、スコップに関する当時の捜査報告書も証拠開示され、警察が被差別部落の青年が働くI養豚場に見込み捜査をおこない石川さんを狙い打ちしたことも浮かび上がった。

 また、取調べ録音テープや石川さんの取調べをした関巡査が作成した捜査報告書などが証拠開示され、石川さんが死体の状況を知らなかったこと、殺害方法や死体処理についての自白がつくられたことが明らかになった。

 関報告書と取調べ録音テープの開示は、捜査官らが検察官と共謀して2審の法廷で偽証していることも浮かびあがらせている。取調べテープで、石川さんと関巡査との1対1の取調べで、犯行の内容を答えられない石川さんに関巡査がいろいろと説明し、その後、長谷部警視ら3人の刑事が加わった取調べで自白調書が作られていくという経過だったことが明らかになった。

 そしてさらに、2審で関巡査が法廷で証言した後に、主任検事の原検事が、取調べをした3人の警察官の供述調書を作成し、単独犯行を自白したとき関巡査はいなかった、死体の状況などよく知っていた、すらすら自白したという内容の供述を調書にしていたことが開示された捜査書類でわかった。取調べにあたった捜査幹部の長谷部警視や自白調書を作成した青木警部は、2審の法廷でその供述調書通りに証言して、取調べの実態を隠そうとしているのだ。これら捜査官の証言を根拠に「取調べで不当な誘導はなかった」「自白は信用できる」と認定した2審・東京高裁の寺尾判決の誤りも明らかになった。

  第3次再審請求では証拠開示がすすみ、それによって専門家の科学的な鑑定、新証拠が提出されている。これら証拠開示によって発見された新証拠が有罪判決に合理的疑いを生じさせており、再審開始の理由となることは明らかだ。

 東京高裁第4刑事部(大野勝則裁判長)は、鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始すべきだ。


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