(月刊「狭山差別裁判」521号/2021年10月)
布川事件で再審無罪をかちとった桜井昌司さんが、冤罪の原因と責任を問うた国家賠償請求裁判の控訴審で、2021年8月27日、東京高裁第20民事部(村上正康裁判長)は、警察官、検察官の違法行為を認め、国と県に賠償を命じる判決をおこなった。
再審無罪をかちとり、その後も、冤罪の原因究明と責任を問い続け、司法改革を訴え、たたかいつづけた桜井さん、弁護団と支援の運動にあらためて敬意を表したい。
今回の判決が認めた違法な取調べの実態は、狭山事件でも同じだ。東京高裁判決は、まず、桜井さんと杉山さんの自白が虚偽であるということを詳細に認定している。とくに、殺害方法の自白が不自然、不可解な変遷を重ねており、客観的事実と整合しないと指摘し、自白は体験したことを記憶にもとづいて述べたものではなく、取調官の誘導によるものだとしている。
そして、そのうえで、そのような虚偽自白にいたった経過について桜井さんが訴えていたことを事実として認め、違法な取調べであったと認定している。桜井さんが、勾留中に取調べについて書いていた手記、取調べ警察官に出した手紙、裁判所に出した上申書などを根拠にしていることも注目される。
判決は、警察で桜井さんが自白した際の取調べについて、取調べ警察官が、被害者の家の近くで桜井さん、杉山さんを目撃した人がいると虚偽の事実を言ったり、「早く自白するように母親が言っている」とねつ造した話を言ったこと、桜井さんが事件があったとされる日は兄のアパートにいたと言ったのにたいして、兄は泊まっていないと言っているとウソを言ったことをあげて、こうした警察官の取調べは自白を強要する違法行為だと断じている。とくに、ポリグラフ検査(いわゆるウソ発見器)の直後に、桜井さんの言っていることはすべてウソだと出たと虚偽の内容を言って、心理的に動揺させ、その1時間後に自白していることを指摘している。こうしたウソを言い、だまして自白を迫る取調べは、狭山事件で石川さんの場合も同じである。警察は別件逮捕後、2回もポリグラフ検査(ウソ発見器)にかけて、おまえの言っていること(犯行否認)がウソだと出たと石川さんに言っている。石川さんの場合も、警察官の偽計を利用した取調べで自白させられているのだ。狭山事件では、第3次再審請求で、2010年に取調べ録音テープが証拠開示され、こうした自白強要、自白誘導の実態が明らかになった。狭山事件の第3次再審請求は、今後、弁護団が鑑定人尋問を請求し、正念場をむかえる。わたしたちは、弁護団が提出した新証拠の学習、教宣をすすめ、東京高裁に鑑定人尋問、再審開始を求める世論を大きくしていかなければならない。狭山事件における違法な取調べの実態、自白の虚偽、石川さんの無実を訴えよう。
東住吉冤罪事件で再審無罪をかちとり、国賠裁判を闘っている青木惠子さんも勝利にむかって大きく前進している。湖東記念病院事件で再審無罪をかちとった西山美香さんの国賠裁判では、県(滋賀県警)が再審無罪判決を否定し、西山さんを犯人だと主張する書面を裁判に提出し、はげしい抗議を受けた。桜井さんにつづき国賠をたたかう冤罪犠牲者を支援しよう!
また、桜井さんは、冤罪をなくし、間違った裁判から無実の人を一日もはやく救済するために、司法改革、再審法改正を訴えている。冤罪当事者、弁護士、学者らで結成された再審法改正を求める市民の会は国会請願署名の運動を呼びかけている。
わたしたちも、署名運動とともに、国会議員への働きかけや地方議会での意見書採択などの取り組みをすすめよう。
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