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主張&声明

東京高裁は狭山事件の違法捜査を見逃すな!
新証拠の鑑定人尋問をおこない再審の開始を!

(月刊「狭山差別裁判」522号/2021年11月)

 元東京高裁部総括判事の木谷明弁護士の新刊「違法捜査と冤罪 捜査官!その行為は違法です。」には、冤罪がくりかえされる原因を分析している。元裁判官が、冤罪の原因は捜査官(警察官、検察官)による違法・不法行為だと断じて、さらに、違法捜査を見逃す裁判官の罪はいっそう重いときびしく指摘していることは重要だ。わかりやすく書かれているので、ぜひ、多くの人、とくに狭山の支援者に読んでほしい。

 この本では、免田事件から、検察官が証拠改ざんをおこなった、いわゆる郵便不正事件(村木厚子さんの冤罪事件)まで、戦後の約70年間の28の冤罪事件をとりあげて、その冤罪の原因の違法捜査として、自白獲得における違法行為(別件逮捕など強引な身柄拘束、自白強要の取調べなど)、証拠隠し、証拠隠滅、証拠改ざんなど証拠や記録についての違法行為、アリバイ潰しなどの違法行為、捜査官のウソの証言などが指摘されている。これらの多くは狭山事件にもあてはまる。

 たとえば、第3次再審請求で裁判所の勧告によって47年ぶりに証拠開示された取調べ録音テープによって、虚偽自白の強要、誘導の実態が明らかになった。そもそも警察は決め手となる証拠がないため、石川さんを別件で逮捕し、警察署の密室で取調べをおこなっている。犯人が残した脅迫状を書いたことを認めろと自白を迫っているが、石川さんは字が書けないから脅迫状は書いてないと否認し続ける。

 勾留期限が近づくと警察は石川さんをいったん釈放し、警察署内で再逮捕し、別の警察署、しかも当時使っていなかった川越警察署の分室に移して取調べを続ける。逮捕後1ヵ月近く経って、自白する直前のものと思われる取調べ録音テープでは、3人の警察官がいれかわり、「(脅迫状を)石川君が書いたこと、こりゃ間違いねえんだ」「書いた、書かないを今議論する時じゃねえんだ」「書いたことははっきりしてるんだ」などと発言し、あげくには「供述義務がある」とまで言って、脅迫状を書いたことを認めるよう自白をせまっている。まさに追及的な取調べ、強引な自白獲得と言うほかない。

 さらに、これら取調べをした警察官らは、控訴審の法廷で、「(石川さんが)スラスラ自白した」などと証言しているのだ。狭山事件の確定判決となっている東京高裁の有罪判決は、こうした取調べ警察官らの証言を根拠に、取調べに問題はなく、自白は信用できるとしているのである。証拠開示された取調べ録音テープでは、死体を目隠ししていたタオルや手を縛っていた手拭い、足にくくりつけられていた縄などについて、警察官がたずねても、石川さんが答えられず、タオルで口を縛ったなどと事実と異なることを述べている。石川さんが死体の状況を説明できず、自白調書が体験を述べた真実の自白ではないことが明らかになったのだ。警察官らは、法廷でウソの証言をしていたにもかかわらず、裁判所はそれをうのみにして、自白は信用できると認定し、有罪判決をおこなったと言わざるをえない。

 狭山事件の第3次再審請求を担当する東京高裁第4刑事部の大野勝則裁判長をはじめとする裁判官が、ぜひとも、過去の冤罪事件の教訓に学び、狭山事件における違法捜査、虚偽自白の強要、証拠ねつ造の疑いに目を向けるべきだ。有罪判決の誤りを明らかにした新証拠について鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始するよう求めたい。


月刊狭山差別裁判題字

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