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主張&声明

有罪判決の誤りは新証拠によって明らかだ!
東京高裁は鑑定人尋問をおこない狭山事件の再審開始!

(月刊「狭山差別裁判」523号/2021年12月)

 狭山事件の第3次再審請求は16年目に入っている。弁護団は証拠開示をねばり強く求め、東京高裁が開示を勧告したことで、証拠開示が進んだことが第3次再審請求の大きな前進だ。

 2010年に取調べ録音テープ、逮捕当日の上申書が47年ぶりに開示され、その後も、「秘密の暴露」に関わる捜査資料、手拭い、スコップ関係の捜査資料、被害者のインク瓶、発見万年筆で書かれた数字など重要な証拠の開示が実現した。東京高検保管の証拠物のリストも開示され、当時の航空写真ネガなどの存在が明らかになり開示された。これまでに191点の証拠が開示され、それらの多くが新証拠として提出され、開示された証拠をもとに、専門家による科学的な鑑定書があらたに作成され、新証拠として提出された。

 弁護団は、狭山事件の有罪判決(寺尾判決)のほぼすべての論点について新証拠を提出してきた。有罪判決は脅迫状の筆跡の一致を証拠の主軸としているが、証拠開示された上申書などをもとにコンピュータを使った計測による異同識別をおこなった福江鑑定が提出され、脅迫状は石川さんが書いたものではないことが科学的に明らかにされた。

 また、開示された取調べ録音テープの分析をふまえて、当時の石川さんは部落差別によって教育を奪われた非識字者であり、脅迫状を書けたとは考えられないことを明らかにした森鑑定も提出された。足跡、スコップ、血液型、手拭い、目撃、犯人の音声の一致などの状況証拠についても専門家の鑑定などの新証拠が提出されている。開示証拠と科学的な鑑定によって、有罪判決は完全に崩れている。再審開始の要件は、有罪判決に合理的疑いを生じさせるあらたな証拠の発見とされている。これら開示された証拠やそれにもとづく鑑定は再審を開始すべき「明白な新証拠」である。東京高裁第4刑事部(大野勝則裁判長)は、鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきだ。新証拠の学習・教宣をすすめ、再審無罪を求める世論を大きくしよう。

 狭山事件は事件発生から59年、第3次再審請求も申し立てから16年になろうとしている。再審の闘いが長くかかるのは、ひとつに検察官が証拠開示になかなか応じようとしないためだ。弁護団の証拠開示請求にたいして、検察官は「必要性がない」として、証拠の存否の回答さえしないことも多い。再審請求の判断に必要かどうかは検察官の決めることではないはずだし、そもそも捜査で集めた証拠は検察官の独占物ではない。新証拠が要件とされている再審請求では証拠開示は不可欠だ。検察官が証拠開示に応じないことは明らかな再審妨害だ。再審における証拠開示の法制化は国会の付帯決議でも検討課題とされている。検察官は証拠開示にすみやかに応じるべきだ。

 検察官は一方で、弁護団が提出した新証拠を否定する意見書をつぎつぎと提出している。警察庁科学警察研究所の技官や大学教授などに依頼し、反証の意見書を作成し多数提出している。これらの費用はすべて国費だ。こうした検察官の再審妨害によって、再審請求の手続きは長くかかってしまっている。しかも、検察官は、有罪判決では問題にされてなかった主張をして、あらたな有罪の認定を主張する。

 そもそも再審請求は、いったん確定した有罪判決に疑問が生じているかどうかを裁判所が判断するものであるから、検察官はそれに協力することはあっても、あらたに有罪認定を求めるような反論、反証活動は許されないであろう。再審請求における証拠開示、再審開始決定に対する抗告の禁止の法制化とともに、検察官のあり方、姿勢を問い直す必要がある。再審法改正は喫緊の課題だ。


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