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主張&声明

証拠開示に対する検察官の不誠実な対応は許されない
再審における証拠開示を義務化する法改正を求めよう!

(月刊「狭山差別裁判」524号/2022年1月)

 狭山事件の第3次再審請求では2009年に東京高裁が開示勧告をおこなって以来、証拠開示がすすんだことが、多くの無実の新証拠の発見につながっている。2010年に開示された取調べ録音テープによって自白が真実の体験を述べたものでないことが明らかになった。逮捕当日に石川さんが書いた上申書が開示され、あらたな筆跡鑑定が作成された。

 また、被害者のインク瓶や証拠の万年筆で事件当時書かれた「数字」(記載の調書)が開示され、下山第2鑑定の資料となり、発見万年筆が被害者のものとはいえないことが明らかになった。多数の捜査資料の開示によって、有罪の根拠となった「秘密の暴露」が成り立たないことも明らかになった。スコップや手拭いなどの捜査資料の開示によって、有罪の情況証拠が崩れ、被差別部落に対する見込み捜査が浮かび上がった。証拠開示が再審請求において不可欠であることは明らかだ。

 1月に弁護団は、スコップ関連の証拠開示とともに、有罪証拠の一つにあげられたタオルの入手可能性に関わる証拠開示を求めた。しかし、検察官はスコップ関連の証拠は見当たらないとの回答をくりかえしている。弁護団は、どこをどのように探したのか明らかにするよう求めても不見当と言うだけだ。

 スコップについては、2011年に開示された際に、検察官はこれ以外はないと回答したが、その後、2012年になって、あらたに捜査資料が開示されたという経緯もある。スコップについて検察官の手持ち証拠のリストを弁護側に提示するべきではないか。

 また、検察官は、証拠開示の必要性がないから開示に応じないとも主張するが、証拠開示が必要かどうかは検察官が決めるべきものではないはずだ。検察官は、新証拠を否定する反証、反論の意見書をつぎつぎと提出している。再審を認めるべきでないという立場から証拠開示の必要性がないと主張するのは一方的で、不公平というほかない。

 当時捜査で集められた証拠や捜査資料の一覧表(リスト)があるはずだが、弁護団が開示を求めても、リストは開示できないと言うだけだ。検察官の手元に何があるか弁護側にはわからないのでは、弁護側が開示を求めても検察官が「見当たらない」と言えば、それまでだ。これではあまりに不公平ではないか。

 国連は、人権規約にのとって弁護側が検察官手持ち証拠にアクセスできる(閲覧し入手できる)ように法改正を勧告している。2016年の刑事訴訟法改正で、通常の裁判の公判前整理手続きでは証拠一覧表を弁護側に開示する制度が作られ、このときの国会の附帯決議で再審における証拠開示についても検討することが確認された。それから5年以上が経過する。再審請求における証拠開示の保障だけでなく、再審の手続きには十分な規定がない。事実調べをおこなうかどうか、証拠開示を裁判所が勧告するかどうか、検察官があらたな有罪立証のような反証活動をすることは許されるのか。こうした再審の校正・公平なルールがないために、検察官の証拠隠しが許され、証拠開示のやりとりに長い時間がかかり、事実調べもされないまま、裁判所の一方的な評価がまかり通り、これまで再審が棄却されてきたと言わざるをえない。

 こうした問題は狭山事件に限らない。冤罪をなくすための再審のルールを作るべきだとして、冤罪当事者、弁護士、学者、研究者らによって再審法改正をめざす市民の会が結成され、国会請願署名も取り組まれている。狭山再審の闘いを強化し、署名活動に取り組むとともに、国会議員への働きかけ、地方議会での意見書採択に取り組もう。


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