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主張&声明

東京高裁は警察官の偽証を重く受けとめ再審を開始すべきだ!
今度こそ鑑定人尋問をおこない狭山事件の再審開始を!

(月刊「狭山差別裁判」526号/2022年3月)

 4月8日、弁護団は、刑事訴訟法435条2号(「原判決の証拠となった証言が確定判決により虚偽であったことが証明されたとき」を再審請求の理由と定めたもの)にもとづく再審理由の追加申立書を提出した。今回の申立ては、証拠開示された取調べ録音テープ等によって、有罪判決が認定の根拠とした警察官の証言が偽証であることが明らかになったので、再審請求の理由を追加するというものだ。

 狭山事件の確定判決となっている2審・東京高裁の無期懲役判決(寺尾判決)は、「(取調官らの)当審(2審)各証言に徴しても、不当な誘導がなされたことをうかがわせる状況は見いだせない」「被告人の取調べを主として担当し、最も数多くの供述調書を作成している青木(警部)が当審において証人として、自分は、平素から供述調書というものは、被疑者の言うとおりをそのまま録取するものだと考えているし、それを実践してきたと証言している」などとして、自白は任意になされたもので、信用できるとしている。

 ところが、第3次再審請求で、裁判所の勧告で取調べを録音したテープが証拠開示され、自白直前の取調べを録音したテープでは、警察官らが、否認している石川さんに対して、「脅迫状を書いたことは間違いない」と決めつけた発言をくりかえし、あげくには「供述義務がある」などと黙秘権も無視して自白を強要している実態が明らかになった。

 また、取調べのやりとりの中で、石川さんが被害者の死体がどうなっていたかも説明できず、犯行の筋書きを語れなかったことも明らかになった。むしろ、警察官が誘導して犯行ストーリーを語らせていることも暴かれた。有罪判決が引用している警察官らの「(石川さんは)自発的にスラスラと(犯行を)自白した」「供述調書は被疑者が言ったとおりに書いたもの」という証言が偽証であったことは明らかだ。

 有罪判決は、鞄や万年筆の発見についても、警察官らの証言を引用して、発見経過に疑問はなく、自白した通りに見つかった有罪の根拠だとしている。しかし、これらの警察官の証言も取調べ録音テープなどの開示された証拠によって偽証だったことが明らかになった。

 今回の申立てでは、自白の任意性、自白の信用性、鞄、万年筆の発見経過について、それぞれ有罪判決の根拠となった警察官の証言が開示証拠によって、偽証であったことが明らかになったとして、再審理由にあたると主張している。検察官は今後、この申立てに対して意見書を提出するとしている。

 警察官が法定で裁判官を前にしてウソの証言をしたという事実は重大な問題である。偽証罪という犯罪である。ましてそれが有罪判決の根拠となっているのだ。再審請求を審理する東京高裁の大野裁判長は、取調べ録音テープなどの新証拠が石川さんの無実を示していることとあわせて、警察官の偽証が誤判を招いた一因であることを厳しく受けとめ、その他の新証拠の鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始すべきである。

 取調べ録音テープは、石川さんの自白が実際の犯行体験を語ったものではなく、むしろ石川さんが犯人ではないことを示す新証拠だ。取調べ録音テープは当時の石川さんが字が書けず脅迫状を書いた犯人でないことも示している。今回の再審理由追加申立てとあわせて、狭山パンフや取調べ再現DVDなどを活用して学習、教宣をすすめてほしい。


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