pagetop

主張&声明

東京高裁は11人の鑑定人尋問とインク鑑定の実施を!
東京高裁に事実調べを求める緊急署名にとりくもう!

(月刊「狭山差別裁判」529号/2022年6月)

 8月29日、狭山事件再審弁護団は、東京高裁に新証拠9点とあわせて事実取調請求書を提出した。

 提出された新証拠は、スコップについての元科学捜査研究所(科捜研)技官による補充意見書2通(土砂および油脂について)、殺害方法、死体処理についての法医学者の鑑定書2通、下山第2鑑定に関わる下山鑑定人の意見書など、検察官が提出した意見書の誤りを明らかにした専門家の意見書だ。

 また、取調べ録音テープの反訳をコンピューターを用いたテキストマイニングによって分析した鑑定書も提出された。言語情報科学の専門家である鑑定人が、科学的、客観的手法であり、社会のさまざまな分野で活用されているテキストマイニングによって取調べのやりとりのデータを分析し、殺害方法についての自白が真実ではないことを明らかにした新証拠だ。第3次再審請求で提出された新証拠は255点になった。

 そして、弁護団は、これらの新証拠、再審請求理由補充書とあわせて、事実取調請求書を東京高裁に提出した。事実取調請求書は、これまで提出された新証拠を作成した鑑定人の証人尋問と万年筆インクについて裁判所による鑑定の実施を求めるものである。具体的には、脅迫状の筆跡・識字能力、指紋の不存在、足跡、スコップ、血液型、目撃証言、犯人の音声、万年筆、自白、殺害方法、死体処理について、鑑定書、意見書を作成した科学者、専門家11人の証人尋問を求めている。

 これらの鑑定人は、コンピューターによる画像解析の専門的知見をもつ科学者、人物識別供述についての専門的知見をもつ心理学者、あるいは死因や血液型について専門的知見をもつ法医学者、あるいは元科捜研技官など、いずれも、その分野での専門家である。

 裁判所は、その専門的知見にもとづく鑑定内容、結果と意味について、尋問をとおして直接、鑑定人から聞いて、十分に精査したうえで新証拠の評価をすべきだ。新証拠の各鑑定事項は、狭山事件の確定判決(東京高裁の無期懲役判決)があげた有罪証拠に即したものである。公平・公正に鑑定を評価し、新証拠によって確定判決に合理的疑いが生じているかどうか、再審を開始すべきかどうかを総合的に判断するために鑑定人尋問は不可欠である。

 また、弁護団は、被害者が事件当日に書いたペン習字浄書の文字インクと被害者のインク瓶(残存インク)からクロム元素が検出され、発見万年筆で書いた数字のインクからはクロム元素が検出されないという鑑定結果を提出しているが、これらのインク資料について、蛍光X線分析の専門的知見をもつ客観的な第3者による鑑定を請求した。証拠の万年筆が被害者のものであることに疑問が生じることは、有罪判決を揺るがす重要な争点である。インク鑑定を実施することで、新証拠に対する検察官の批判が無意味であり、弁護側鑑定の結果が正当であることが明らかになると主張している。

 足利事件、布川事件をはじめ、これまで再審で無罪となった冤罪事件では、鑑定人尋問や鑑定の実施など事実調べがおこなわれている。東京高裁第4刑事部(大野勝則裁判長)は、弁護団の請求を受けて、11人の鑑定人の証人尋問とインクについての鑑定を実施すべきである。

 狭山事件の再審を求める市民の会(鎌田慧・事務局長)は、東京高裁に事実調べを求める緊急署名を呼びかけている。新証拠の学習・教宣を強化し、緊急署名に全力でとりくもう!


月刊狭山差別裁判題字

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円