pagetop

主張&声明

事実調べが必要だ!東京高裁は事実調べ・再審開始を!
事実調べを求める署名運動をさらにひろげよう!

(月刊「狭山差別裁判」532号/2022年9月)

 弁護団は8月にコンピュータを用いたテキストマイニングという手法で取調べ録音テープの反訳を分析した鑑定を提出し、このJ鑑定人の証人尋問を請求した。取調べを録音したテープの反訳には警察官と石川さんが話した言葉が膨大にふくまれている。

 テキストマイニングは、コンピュータを使って、この膨大な文章データから、ある言葉のつながりを抽出するなどして、分析する科学的、客観的手法であり、社会のさまざまな分野で活用されている手法である。具体的には、言語情報科学の専門家であるJ鑑定人が、テキストマイニングによって取調べのやりとりのデータを分析し、殺害方法についての自白が真実ではないことを明らかにした新証拠だ。

 このJ鑑定に対して検察官は2022年12月9日付けで、反論の意見書を提出した。検察官は7月29日付けで、これまで弁護団が提出した新証拠に対する反論の意見書を提出しているが、このほかの新証拠に対する反論の意見書、そして、事実取調請求書に対する意見書を今後提出するとしている。

 弁護団はこれら検察官意見書をふまえて、事実調べの必要性について意見書を提出することにしている。東京高裁は、検察官、弁護団双方の意見書をふまえて、事実調べをおこなうか判断することになる。

 弁護団が提出した事実取調請求書は、提出した新証拠、具体的には、脅迫状の筆跡・識字能力、指紋の不存在、足跡、スコップ、血液型、目撃証言、犯人の音声、万年筆、自白、殺害方法、死体処理について、鑑定書、意見書を作成した科学者、専門家11人の証人尋問と万年筆インク資料について裁判所による鑑定の実施を求めている。

 弁護団が証人尋問を求める専門家の鑑定は、狭山事件の有罪判決(東京高裁の寺尾判決)の根拠となった証拠(その多くは当時の警察による鑑定である)の誤りを明らかにしたものである。弁護団は有罪判決がどのような証拠によってささえられているかを整理したうえで、それに即して事実調べを求めているのだ。事実調べをおこない、証拠を総合的に評価して有罪判決に合理的疑いが生じていることを明らかにして再審を開始するよう求めているのである。

 そして、これら11人の鑑定人は、その分野の専門的知見をもつ科学者や科学捜査の知識・経験を有する専門家である。裁判所は、専門的知見にもとづく鑑定内容、結果と意味について、証人尋問をとおして直接、鑑定人から聞いて、十分に精査したうえで新証拠の評価をすべきである。

 また、検察官は、筆跡鑑定やスコップ、血液型、殺害方法などの新証拠に対して警察庁科学警察研究所の技官や法医学者の意見書といった反証を提出してきている。また、証拠の万年筆が被害者のものとはいえないことを蛍光X線分析で明らかにした科学者の鑑定に対しては、実験条件や装置について周辺的な批判をして信用できないと反論している。裁判所は検察庁にあるインク資料について第3者による鑑定を実施し、弁護側鑑定の正しさを確認すべきである。

 新証拠によって有罪判決に合理的疑いが生じているかどうか、再審を開始すべきかどうかを公正・公平に判断するために鑑定人尋問は不可欠だ。東京高裁は11人の鑑定人尋問とインク資料の鑑定を実施すべきである。東京高裁第4刑事部に事実調べを求める声をさらに届けよう!署名運動をさらに広げよう!


月刊狭山差別裁判題字

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円