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主張&声明

東京高裁の家令和典・新裁判長はインク鑑定の実施を!
東京高裁に事実調べを求める署名をさらに広げよう!

(月刊「狭山差別裁判」544号/2023年9月)

 狭山事件の第3次再審請求を審理する東京高裁第4刑事部の裁判長が交代した。大野裁判長が定年退官し、後任には家令和典・裁判官(62歳)が就任した。

 狭山弁護団は、東京高裁第4刑事部に、新証拠を作成した専門家11人の証人尋問と重要な争点である万年筆について、検察庁にあるインク資料の裁判所による鑑定の実施を求めている。

 狭山事件の有罪判決(2審・東京高裁の無期懲役判決)は、石川さんの自白通り、自宅のお勝手入口の鴨居の上から被害者の万年筆が発見されたことを有罪の決め手の一つにあげている。

 弁護団は、2度の徹底した家宅捜索の後に、事件後2か月近くたって、高さ175.9センチ、奥行き8.5センチの鴨居から「発見」されるという経過が不自然、不合理であり、自白によってはじめて発見された「秘密の暴露」とはいえないと主張している。第3次再審請求では、心理学者らによる、お勝手内で物を探す実験にもとづく鑑定を提出し、2度の家宅捜索で警察官らがカモイ上の万年筆を「見落とした」などとするこれまでの裁判所の判断のおかしさを実証的に指摘している。

 もう一つの疑問が、この発見万年筆が本当に被害者のものだと言えるのかという問題だ。第3次再審では、2013年7月に被害者のインク瓶が証拠開示され、当時販売されていた「ジェットブルー」という商品名のインクであること、さらに事件当時のジェットブルーインクは金属元素のクロムを含むことが判明した。

 さらに2016年に、事件当時、被害者の兄が発見万年筆で書いた「数字」(1から10までの数字を4行にわたって紙に書いたもの)が証拠開示された。発見万年筆に入っていたインクは事件当時の科警研の鑑定の際にすべて排出され、インクは残ってはいなかったが、この「数字」の証拠開示によって、発見万年筆に入っていたインクを科学的に調べることが可能になったのである。また上告審で、被害者が事件当時の1時間目の授業で書いたペン習字の浄書が証拠開示されている。

 これらのインク資料を弁護団が専門家に依頼して蛍光エックス線分析をおこなったところ、被害者のインク瓶のインクやペン習字浄書の文字インクからはクロム元素が検出されたが、発見万年筆で書いた「数字」のインクからはクロム元素が検出されなかった。発見万年筆は被害者のものとは言えないことが科学的に明らかになったのだ。

 被害者の万年筆が発見されたと認定した有罪判決に合理的疑いが生じている。さらに、万年筆「発見」によって信用できるとされた自白の疑問も生じることになる。そもそも、殺害後、万年筆を自宅に持ち帰り、お勝手入り口の鴨居に置いていたという自白じたいがきわめて不自然だ。東京高裁はインク資料の鑑定を実施するよう2022年8月の事実調べ請求の中で求めた。

 検査すべきインク資料はすべて証拠開示によって明らかになったものであり検察庁にある。裁判所は、これらインク資料の専門家による鑑定を実施し、証拠の万年筆が被害者のもと言えるのか科学的に究明すべきだとだれもが市民感覚で思っている。だからこそ、52万筆もの事実調べを求める署名が東京高裁第4刑事部に届けられていることを受けとめてほしい。家令和典裁判官は、これまで論文やメディアのインタビューで証拠開示の重要性や科学的証拠の意義を述べている。ぜひ、鑑定人尋問とともに、インク資料の鑑定を実施するよう強く求めたい。

 さらに署名を広げ、要請ハガキを送ろう!


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