(月刊「狭山差別裁判」545・546号/2023年10月・11月)
狭山事件が発生し、石川一雄さんが冤罪におとしいれられて60年が過ぎた。石川さんはいまも無実を叫びつづけ、生きて冤罪を晴らすと訴えている。第3次再審の闘いに勝利し、石川さんの「みえない手錠」をはずすまで、わたしたち一人ひとりが闘いの原点にかえって支援の取り組みを全力ですすめたい。
狭山闘争の原点は、警察にだまされていたことに気づいた石川さんの無実の叫びだ。悔しさの中で必死に文字を取り戻し、無実を訴える手紙を何通も出すようになり、届いた手紙も読めるようになって、やりとりがどんどん増えて、読み書きもできるようになっていく。本も読めるようになり、多くのことが学べたと石川さんは言う。何よりも心が豊かになったと。
獄中の石川さんの闘いと両親や家族の訴えを受けとめ、部落差別によって冤罪がおきたことをわがこととしてとらえ、冤罪を作り出す社会や司法を変えていく闘い、差別をなくす闘いとして取り組まれていったことが原点だ。現地調査をおこない、無実の証拠を学習し、石川さんの無実と冤罪の真相を確認し、全国行進で部落の大衆に訴え、さらに労働組合、学者・文化人、市民に真相を広げていく取り組みが60年すすめられてきた。家令和典・新裁判長のもとで、事実調べ・再審開始実現にむけて正念場を迎えているいまこそ、この闘いの原点を忘れることなく、取り組みをすすめたい。
裁判長交代をふまえて、弁護団は2月27日付けで意見書を提出した。この意見書において、弁護団は、スコップ、タオルにかかわる捜査資料等の証拠開示を強く求めた。検察官は「開示の必要はない」「資料の存否を答える必要もない」という不誠実な回答をくりかえし、協議が数年にわたっている。弁護団の意見書は、こうしたこれまでの証拠開示請求の経緯をまとめたうえで、裁判所から検察官に対して、証拠開示を勧告するよう求めている。
また、弁護団は意見書において、これまでの新証拠提出と審理の経過、第3次再審請求の争点について、プレゼンテーションを要望し、それもふまえて、鑑定人ら専門家の証人尋問(事実調べ)について、具体的協議をすすめることを求めた。裁判所は次回協議で弁護団のプレゼンテーションをおこなうことを決定した。いよいよ事実調べ-再審実現にむけた重要な局面だ。いまこそ、こうした弁護団の取り組みを後押しする世論を大きくしていかなければならない。
先日のNHKの朝のニュース番組では、再審制度と狭山事件がとりあげられ、石川さんのインタビューも紹介しながら、再審請求の審理が長引く原因の一つとして、再審における証拠開示のルールがないことが指摘された。翌日のニュースでは、再審法の改正を国会ですすめるための議員連盟が結成されたことが紹介された。
さらに、現職警察官が「捏造だ」と証言した大川原化工機冤罪事件もとりあげられた。袴田事件の再審開始決定で東京高裁が捜査機関による証拠ねつ造の可能性と指摘したことや審理の長期化の問題が連日のように報道されている。
いまこそ60年以上も冤罪を訴える石川一雄さんの闘いに応え、えん罪・狭山事件をアピールしよう。パネル展や街頭宣伝に取り組み、事実調べを求める世論を広げ、署名運動をすすめ、東京高裁の家令和典・新裁判長に届けよう。
再審請求における検察官の証拠開示の義務化、再審開始決定に対する検察官の抗告の禁止、裁判所による事実調べなどの規定をもりこんだ再審法改正(刑事訴訟法等の改正)の実現にむけた国会請願署名もあわせて取り組もう。
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