(月刊「狭山差別裁判」549号/2024年2月)
さる4月19日に東京高裁でひらかれた三者協議で、弁護団によるプレゼンテーションがおこなわれた。法廷を使ってパソコンで図や写真もモニターに表示しながら、狭山事件の第3次再審請求における弁護団の主張全体についての説明を、東京高裁第4刑事部の家令和典・裁判長と担当裁判官にたいしておこなった。プレゼンテーションでは、まず、狭山事件の確定有罪判決(東京高裁・寺尾裁判長による無期懲役判決 1974年10月31日)がどのような証拠によって石川さんを犯人としたのか、有罪判決の証拠の整理を示したうえで、すべての論点について、どのような新証拠を提出しているか、新証拠によって有罪判決の誤りがいかに明らかになっているか、検察官が反論としてどういう主張をし、それに対して、弁護団がその誤りをどう明らかにしたかを説明した。昨年12月に就任した家令裁判長に、これまでの弁護団の主張をまとめて説明したことは重要だ。
検察官はすべての新証拠を再審理由にならないとして、事実調べの必要はないと主張し、さる2月にも意見書を提出している。弁護団は、この検察官意見書の誤りを明らかにする新証拠、意見書を提出する。また、有罪証拠の万年筆が被害者のものといえるのか科学的、客観的に明らかにすべきだとして、検察庁にあるインク資料の鑑定の実施を請求しているが、これについても、鑑定の必要がないとする検察官の意見書の誤りを具体的に明らかにする新証拠を提出し、鑑定の実施の必要性を裁判所に訴えていくことにしている。
今後、双方の意見書、主張をふまえて家令裁判長が事実調べ(証人尋問、インク鑑定)をおこなうかどうか判断する。弁護団は、2月に提出した意見書で、証人尋問について具体的に協議を進めたいと要望しており、事実調べ・再審開始実現にむけて、きわめて重要な局面である。東京高裁第4刑事部(家令和典裁判長)に事実調べ(鑑定人の証人尋問とインク鑑定)の実施を求める世論を最大限に大きくしていく必要がある。
今回のプレゼンテーションの内容もふくめ第3次再審で弁護団が提出した新証拠の学習・教宣を強化し、事実調べを求める署名運動をさらに拡げよう。
今回のプレゼンで説明された新証拠の多くは、取調べ録音テープや逮捕当日に石川さんが書いた上申書、あるいは手拭いの捜査報告書など、証拠開示によって第3次再審請求ではじめて明らかになった証拠資料にもとづくものである。再審請求において検察官手持ち証拠の開示を義務化すること、裁判所が再審開始決定を出した場合に、それに対して検察官は不服申し立てできないようにする(再審開始決定に対する抗告の禁止)などの法改正の必要性はくりかえし指摘されてきた。
袴田事件の再審開始が57年かかって確定したが、検察官が2014年に出された再審開始決定に抗告したために9年も遅れた。狭山事件で再審開始決定が出されても検察官が抗告したら、無罪実現までさらに何年もかかることになる。石川さんは現在85歳だ。「再審法」改正は狭山事件にとっても喫緊の課題である。
日本弁護士連合会は、具体的な「再審法」改正案を示した意見書を公表し、国会での議論、法改正を求め、ことし3月には、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が超党派で結成された。いまこそ「再審法」改正の実現にむけて、地元国会議員への働きかけや地方議会での意見書採択、国会請願署名にあわせて取り組もう。
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