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主張&声明

インクの違い、万年筆の疑問は科学的に明らかだ!
東京高裁は鑑定人の証人尋問をおこない狭山事件の再審開始を!

(月刊「狭山差別裁判」554号/2024年7月)

 2024年12月20日、弁護団は万年筆インクに関する新たな鑑定書を補充書とともに東京高裁第4刑事部に提出した。

 弁護団は8月に裁判所に対して、専門家によるインク資料の蛍光エックス線分析を実施したいという申し入れをおこなった。証拠開示されたインク資料はすべて検察庁にあり、三者協議で裁判所は検察庁に弁護側鑑定の実施への協力を要請した。

 これを受けて、弁護団は、蛍光エックス線分析の専門家であるL名誉教授に依頼し、検察庁においてインク資料の元素の測定をおこない、その結果をまとめたものが、今回提出されたL鑑定である。L鑑定の結果は、2018年に提出したI鑑定と同じく、被害者が事件当日に書いたペン習字浄書の文字からはクロムが検出され、発見万年筆で書いた「数字」からはクロムが検出されないというものであった。

 別の専門家2人が別の分析機器を使って調べた結果、同じく、被害者使用のインクにはクロムが含まれるが、発見万年筆で書いた「数字」にクロムはなかったのだ。石川さん宅から「発見」された万年筆のインクは被害者が事件当日まで使用していたインクと異なることは科学的に動かせない事実といえる。この事実から市民常識的に考えて、発見万年筆は被害者のものとはいえないということにならざるをえない。

 そもそも、殺害後に被害者の万年筆を自宅に持ち帰り、勝手場の入り口のカモイの上に置いていたという自白じたいが不自然であるし、10数人の警察官による2回の家宅捜索のあとにカモイの上から発見されたという経過のおかしさとあわせて見れば、石川さんの家から被害者の万年筆が自白通り発見されたとして有罪の決め手とした確定判決に合理的疑いが生じていることは明らかであろう。

 弁護団は鑑定書提出とあわせて、L鑑定人の証人尋問を請求した。今後は、すでに請求している鑑定人もふくめて、弁護団が求める証人尋問の採否が焦点となる。

 狭山事件は事件発生から61年以上が経過するが、事件当初から、万年筆の疑問が指摘されてきた。事件当時、科学警察研究所の技官がおこなった鑑定では、発見万年筆のインクと被害者の使っていたインク瓶のインクは異質という結果だったのだ。これまで再審棄却決定は、異なるインクが補充されたとして、有罪の判断を維持してきたが、被害者が使っていたインクの元素が検出されないということは別インクの補充では説明がつかないであろう。裁判所は、重要な争点である万年筆の疑問、インクの違いについて、鑑定人の証人尋問をおこない、科学的に決着をつけるべきではないか。

 石川さんは61年以上も無実を訴え、有罪判決から50年、最初の再審請求から47年以上が経過する。事件から半世紀以上経ってインクの資料が証拠開示され、その資料を最新の蛍光エックス線分析装置を使って調べた鑑定である。裁判所は、その重みを十分にふまえて、弁護団の求める証人尋問をおこない、再審を開始してもらいたい。

 わたしたちは、東京高裁第4刑事部(家令和典裁判長)に対して、鑑定人の証人尋問の実施、再審開始決定を求めて、いっそう世論を拡大するとともに、証人尋問を求める署名運動を全国各地ですすめよう。

 再審請求における検察官の証拠開示を義務づけ、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止する再審法改正を求めていこう。


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