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主張&声明

福井事件を教訓に再審法改正を早急に実現しよう!
東京高裁は狭山事件第4次再審請求で証人尋問・再審開始を!

(月刊「狭山差別裁判」556号/2025年3月)

 1986年の福井女子中学生殺人事件で、昨年10月、再審開始が確定し、3月に再審公判がおこなわれ、7月には判決が出される。前川彰司さんが無実の罪におとしいれられて38年以上だ。1審・福井地裁は無罪判決だったが控訴審で名古屋高裁金沢支部が逆転有罪判決。最高裁で確定し前川さんは満期まで7年間刑務所に服役した。出所後、再審を請求し、名古屋高裁金沢支部は、2011年11月に再審開始を決定、ところが検察官が異議申し立てをおこない、名古屋高裁が再審開始を取り消し棄却、これが最高裁で確定してしまう。

 前川さんは、あきらめず2022年に第2次再審を請求し、昨年、名古屋高裁金沢支部が再審開始を決定、検察官が異議申し立てを断念し、ようやく再審開始が確定したのだ。結局、1回目の再審開始決定から2回目の再審開始が確定するまで約13年もかかった。21歳で逮捕された前川さんは59歳だ。

 袴田事件では、静岡地裁で2014年に再審開始決定が出されながら、検察官の不服申し立て(即時抗告)によって、東京高裁で再審開始決定が取り消され、再審開始が確定するまでに9年もかかった。1979年に鹿児島でおきた大崎事件では、鹿児島地裁と福岡高裁宮崎支部で3回も再審開始決定が出されながら検察官の不服申し立てで取り消され、いまだ再審が実現していない。冤罪を訴える原口アヤ子さんは98歳にもなる。

 福井事件は、もともと物証も自白もなく、前川さんの知人らの目撃証言が有罪の根拠だった。今回の再審開始決定は、有罪判決の根拠となった知人らの供述を警察の誘導によって作られたものだと断じた。捜査に行き詰った警察、検察は、服役中だった知人の一人が自分の減刑などの利益を目的に前川さんが犯人というウソの供述をしたことに飛びついて、事件当夜、服に血の付いた前川さんを見たという目撃供述など、別の知人らの供述を誘導、ねつ造していったのだ。再審開始決定は、裁判所がこうした目撃証言の危険性に配慮せず安易に依拠したことも批判している。

 これら知人らの供述が警察の作ったウソの供述であることを明らかにしたのは証拠開示だった。事件当夜、前川さんを迎えに行き、胸辺りに血が付いているのを見たと供述していた知人が、事件の日に見ていたと述べたテレビ番組の場面が実際には放送されておらず、1週間後だったことが開示証拠などから判明したのだ。

 これら新証拠から裁判所は、この知人の目撃供述の信用性を否定し、有罪判決の根拠が崩れたとした。有罪判決の誤りを明らかにしたのはやはり証拠開示だ。しかし、第2次再審請求で裁判所の勧告によって287点の証拠が開示されたのは、最初の再審請求から19年もたってからである。しかも、このテレビ番組の場面が事件当日に放送されていない事実を検察官は早い段階で知っていながら、有罪判決を獲得するために裁判でも隠し続けていたのだ。

 再審開始決定は「検察官としてあるまじき不誠実で罪深い不正のおこない」と厳しく断じている。こうした福井事件の教訓をふまえるならば、再審請求における検察官の証拠開示を義務化し、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止することを早急に法制化することが不可欠だ。狭山事件をはじめ、えん罪との長い闘いを強いられている多くの再審事件の早期救済のために再審法改正を一日にも早く実現しよう。

 福井事件のえん罪の構造を明らかにしたのは、再審請求における証拠開示と関係者らの証人尋問だった。東京高裁第4刑事部は、狭山事件の第4次再審請求において、証人尋問を実施し再審を開始すべきだ。署名運動に全力でとりくもう!


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