pagetop
部落問題資料室
コラム
今週の1冊 第2524号/11.06.27

すべてを明日の糧として 今こそ、アイヌの知恵と勇気を

宇梶 静江 著  清流出版(定価1700円)

書籍画像

 「私は嫁に行かない! 小学五年生からの勉強をやり直すために、中学に行くんだ!」。姉の死を見送った19歳の秋。囲炉裏端での結婚話に、彼女は本心を家族・親族に明かす。小学校高学年から働きつづけ、すでに北海道では「結婚する気はさらさらなかった」。「和人に捨てられるお姉さんたち」を何人も見たし、「アイヌの青年と結婚しても、差別される生活や貧困から抜け出せ」ないと思ってきたからだった。
  本書は、首都圏で40年近くアイヌ復権にとりくんできた宇梶静江さんの自伝エッセイ。「このやんちゃばあちゃん、自分で自分の人生をエイヤッとばかり大転回させたこと、これまでに三度ばかり」だそうで、その最初の大転回が、このとき20歳で札幌の中学へ入学したことだった。
  その後、宇梶さんは厳しい差別に札幌での就職は断念し、卒業式翌日に上京。やがて和人と結婚するがアイヌを隠す生活に疲れ、38歳で新聞でカミングアウト、翌年東京ウタリ会を設立する。2度めの大転回だ。
  3度目の大転回は63歳のとき。アイヌ刺繍の勉強に札幌へいったことが、アイヌ刺繍と古布を組み合わせた「古布絵」創造につながった。
  「アイヌである私」への再生を、語り口調でつづった良書。(K・S)


「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)