pagetop
   

 

 

憲法の平和理念を掲げ、反戦
平和のとりくみを強化しよう
「解放新聞」(2004.05.03-2168)

 

 憲法第9条は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記している。これら憲法の掲げている平和主義が、いま大きくねじ曲げられている。そして、私たちが先の戦争の教訓から学んだことは何だったのか、それを生かすために何をなすべきかが、今こそ問われている。
 歴代の自民党政権は、戦争のできる国へ、海外派兵もできる国へと、長年にわたり既成事実を積み重ねてきた。政府答弁も、自衛隊創設時の「自衛隊は戦力ではない」にはじまり、「どのような国家にも防衛権はあり専守防衛に徹する」「極東の安全は日本の安全である」「周辺事態(地理的概念は不明確)は日本の安全に重要であり米軍の後方支援をおこなう」などとつぎつぎになし崩し的に変更され、憲法が拡大解釈されてきた。
 そして、自衛隊の海外派兵も、湾岸戦争後の機雷除去活動にはじまり、国連のPKO活動、アフガニスタン戦争での燃料補給活動とイージス艦派遣、そして今回、イラク派兵が強行されてきた。今回の派兵は、国連PKO以外では初めての陸上自衛隊派兵だが、今回は米英軍の先制攻撃による占領体制下への派兵であり、明確な憲法違反である。そのうえ戦闘がつづく状況下のイラクにたいする派兵であり、憲法違反はより明明白白である。そして戦闘が激化した今日も撤退しようとしていない。ここまできて、憲法の平和理念との乖離はすでに限界をこえたといえる。当然、これを違憲として裁判も提訴されているが、司法の在り方・責任も問われている。

 そして一方で、この間の朝鮮情勢などをテコとして、戦争ができる体制づくりがすすんできた。昨年成立した「武力攻撃事態法」など有事3法案につづき、今国会では「国民保護法」や「米軍支援法」など有事7法案が上程されている。
 これらの法案には山ほど問題点があるが、「国民保護法案」は名称とは裏腹に、自治体への統制を強め、人びとの権利を制限し、「物資提供」や「民間防衛体制づくり」など、戦争に協力する体制をつくる内容となっている。
 また、「武力攻撃事態等」の定義も昨年に引きつづき最大の問題点である。たとえば、「周辺事態」で米軍の後方支援をした自衛隊が攻撃を受けた場合、「武力攻撃事態等」と政府が認定することが考えられる。これもまた、どこまで拡大解釈されるかわからない。現にこの議論のなかで、「攻撃は最大の防御」と敵のミサイル基地を先制攻撃する話も飛び出したという。ここでも憲法を足蹴にした議論がすすんでいる。
 そして、みずからの憲法違反が明白になるにつれて、今度は現実に憲法をあわせるといい出した。

 自民党は2005年末を目途に改憲案をまとめる方針を決めた。その最大の狙いは自衛隊を軍隊として認知するとともに、集団的自
衛権および武力の行使も可能とすることである。また、憲法の前文を見直し「愛国心」を盛り込むことや「国を守る義務」、人権を制限する内容も予想される。
 また考え方は違うが、民主党の菅直人・代表も「官僚主権から国民主権へ市民革命に代わる幅広い憲法制定運動が必要」とのべており、今後、憲法論議が活発化することが予想される。
 今国会では、憲法改定の具体的な手続きを定める「国民投票法案」と「国会法改正案」を議員立法として提出する動きもあり、憲法改定が具体的に政治の争点になる可能性が出てきた。

 その意味で、憲法の平和主義の堅持は焦眉の課題となっている。まず、自衛隊のイラクからの撤退を実現し、有事7法案の成立を阻止する闘いを強め、現実を憲法の枠内に戻していく必要がある。
 5月3日で憲法施行57周年を迎えるが、憲法の平和主義はハーグ平和会議などでも高く評価され、世界の平和を求めるNGOからも支持されている。また、国連も「国家の安全保障」から「人間の安全保障」へと新たな安全保障の考え方をうちだしている。軍事力によって平和が実現するという信仰の行き着く先は、限りない軍拡競争であり、アメリカによる先制攻撃に象徴される暴挙やテロによる報復など暴力の連鎖の拡大であり、人びとの命と生活の破壊である。
 私たちは今こそ、先の戦争からの教訓、憲法と平和主義の意義、現在の危機的状況などについて学習や教宣活動を強め、反戦・平和闘争を強化しなければならない。
 同時に、参議院選挙は今後の憲法問題も含めた政治動向を決する政治決戦であり、松岡とおる必勝に向け全力をつくそう。


「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)