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「犯人を警察が逮捕
殺人までほのめかす
連続・大量差別ハガキ事件で

「解放新聞」(2004.11.01-2192)

 

 東京を中心に「差別ハガキ」を、全国へ大量に送りつけていた事件の犯人が10月19日、警視庁浅草署に逮捕された。犯人は東京・羽村市に住む34歳の男A。
 逮捕のきっかけとなったのは、今年6月にAが青梅市役所の食堂で「差別手紙」を書いているのを市職員が発見、青梅警察署に通報。この時点では「職務質問」に終ったが、警察は有力な容疑者として内偵をすすめ、10月19日の逮捕へと結びついた。
 事実、この6月を境に、「差別ハガキ」は止まった。しかし10月にはいって、ふたたび「差別ハガキ」が届けられ、「ピストルを入手した。殺してやる」と殺人をほのめかすまでになり、早急な逮捕が求められていた。
 逮捕翌日の10月20日午前、東京・人権プラザでひらいた記者会見で、一連の事件の被害者となった浦本誉至史・都連執行委員は、「ほっとした。事件の全ぼうは、これからの裁判で明らかになるだろうが、なぜあんなことをしたのか、直接会って話を聞きたい」。高岩正興・都連副委員長は「容疑者は私の容ぼうも知っていた。本当に不安だった」とそれぞれ語った。

これから真相解明へ
犯人逮捕うけ記者会見

 東京を中心にして昨年5月、東京食肉市場への差別ハガキが送られてから、全国に大量の「差別ハガキ」を送りつけていた「容疑者」が10月19日、警視庁浅草警察署に逮捕された。東京・羽村市に住む「A容疑者」(34歳)で、「容疑者」が逮捕された日、東京都連では「連続・大量差別はがき事件の容疑者逮捕に対する声明」を出すとともに10月20日午前、記者会見をおこない、「容疑者」の逮捕にいたった経過の説明をおこなうとともに、事件の真相解明にむけてとりくみをつづける、と語った。

全国で400通こえる

 記者会見には、高岩正興、藤本忠義両副委員長、長谷川三郎書記長、集中して差別ハガキを送りつけられた浦本誉至史執行委員、この事件の担当弁護人の河村健夫弁護士が同席した。
 この事件は被差別部落民への憎悪にもとづいて、「えたに人権はない」「殺しても罪にはならない」などの差別封書・ハガキを送りつけたほか、「あなたの近くに危険な奴がいる。アパートから追い出せ」などアパートの大家はじめ周辺住民にもハガキを送りつけて差別煽動を繰り返してきた。また、高額な書籍や英会話教材、芝刈機など本人の名をかたって注文し送りつけた。このほか「引っ越すので電気を切って欲しい」などと電力会社に通報しライフラインまで手をかけるという悪質な差別行為を繰り返した。
 こうした事態に東京都連は、昨年10月21日浦本誉至史名で、氏名不詳のまま「脅迫罪」で浅草署に告訴した。その後も「差別ハガキ」はやむことなくつづき、現在までに東京だけで275通にのぼり、全国的には400通をこえた。まさに部落解放運動史上例を見ない「連続・大量差別ハガキ事件」となった。


事件の本質は部落差別
解明のため「脅迫罪」と

つぎつぎエスカレート

 この日の記者会見で長谷川書記長は事件について「悪質な差別犯罪だ」とのべ、警察への告訴は、「脅迫罪」としたが本意ではなかった。あくまで事件の本質は部落差別事件であり、事件解明のためには、刑事事件にする必要があった」とのべた。また、行政の連携や協力があったことも容疑者逮捕へ大きな力となったとのべ、市町村の広報紙での事件啓発が職員の意識を高めた結果だとのべ、行政のとりくみを評価した。
 これまでのとりくみの経過としては、昨年12月に文京区民センターで「真相報告集会」をした。このようすがマスコミで報道され、「犯人」側から一方的な「休止宣言」がだされることもあったが都連側が「私たちの前で謝らせる」とホームページに掲載するとすぐに再開した。
 この「A容疑者」は筆跡から、全国の部落解放同盟関連の個人や事務所へ差別ハガキを出していた者と認められ、熊本・菊池恵楓園の入所者へも実在の同盟員の名をかたって差別ハガキを送りつけ、差別行為はエスカレートしていた。
 こうした差別行為を取り締まる法律もない現状のなかで、今年6月14日には、全水道会館で菊池恵楓園のハンセン病回復者を招いて「差別事件から人権侵害救済法、差別禁止法を考える」と題したシンポジウムを開催し、被差別者の闘いに反感をもつ差別行為にたいして「人権侵害救済法」、「差別禁止法」の制定に結びつける世論の高まりをつくろうとした。
 今後裁判では、民事も検討しているが事件の全ぼう解明はこれからだと記者会見でのべた。


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