部落解放同盟中央本部
中央執行委員長 組坂 繁之
新たな年を迎えるにあたり、部落解放同盟に結集する全国の同盟員と兄弟姉妹、日頃より部落解放運動の取り組みに連帯をいただいている皆様方に、この間の人権と平和、民主主義の確立に向けた協働の営みに心より感謝申し上げ、新年のご挨拶を申し上げます。
昨年の参議院選挙では、安倍政権は、改憲発議に必要な3分の2の議席を確保できなかったにもかかわらず、「任期中に改憲を成し遂げる」として、あくまでも憲法改悪に固執しております。私たちは、今年も差別と戦争に反対し、憲法改悪を阻止するために、全力で取り組みをすすなければなりません。安倍政権は、昨年12月の臨時国会閉会後に、中東地域への自衛隊の閣議派兵を決定しました。ホルムス海峡での米国主導の「有志連合」には参加しないものの、「調査・研究」名目での派兵は、まさに憲法改悪の先取りです。しかも、国会の承認もないまま、「自衛隊設置法」の拡大解釈にもとづく海外派兵には歯止めがないばかりか、これ以降も同様の派兵が続くことになります。「集団的自衛権容認」の閣議決定以降、安倍政権は、「戦争法」制定などを強行し、「戦争をする国」づくりを推しすすめてきました。また、安倍政権は徴用工問題をめぐる韓国との対立を激化させ、中国との友好関係も改善されないまま、米国への追従を深めることで、アジアのなかでますます孤立しています。
私たちは、こうした安倍政権がすすめる反人権主義、国権主義の政治に抗して、人権と平和を確立する広範な取り組みの先頭に立って闘うことが求められています。とくに沖縄・辺野古の新基地建設の強行は、沖縄の民意をまったく無視するだけでなく、日本社会の差別構造そのものであり、新基地建設反対の闘いは、私たち自身の課題であることは明らかです。
さらに安倍政権は昨年10月に消費税増税を強行したにもかかわらず、医療費や介護保険の負担増、生活保護費の減額など、社会保障制度や年金制度改悪をすすめています。こうした安倍政権のもとで、貧困と格差の問題はより深刻化し、現代社会への不満や不安を背景にしながら、ヘイトスピーチやインターネット上の差別情報の氾濫などのように、差別や暴力を公然と煽動する差別排外主義が台頭しています。鳥取ループ・示現舎に対する裁判闘争をはじめ、差別糾弾闘争を強化し、差別-被差別の関係を変革していく協働の営みを拡げていかなければなりません。
また、昨年の天皇代替わり以降、天皇制の賛美と政治利用の強化もすすんでいます。私たちは、こうした社会的政治的情況に抗して、安倍政権による憲法改悪策動を断固阻止し、戦争につながる全ての政策に反対する広範な闘いを前進させるとともに、部落差別撤廃、人権と平和、民主主義の確立をめざす闘いの先頭に荊冠旗を敢然とうちたて、連帯・協働の取り組みをすすめていきましょう。
2016年12月に公布、施行された「部落差別解消推進法」具体化は、当面する部落解放運動の重要な課題です。「部落差別解消推進法」は、部落差別が今日でも厳しく存在することをふまえ、部落差別は社会悪であるとし、部落差別を許さない社会づくりをめざして、国や自治体が、相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査の実施などを明記した、部落解放行政の基本的な方向を示したものです。
私たちは、この間、「部落差別解消推進法」の制定をふまえ、全国での条例づくりで成果をあげてきました。また、部落差別撤廃にむけた地域での要求、要望を集約しながら、行政交渉を強化するために奮闘してきました。さらに「人権教育・啓発推進法」の活用、「人権のまちづくり」運動の活性化なども重要な取り組みです。とくに、個別人権課題に関わる「障害者差別解消法」や「ヘイトスピーチ解消法」の制定をふまえ、それぞれの取り組みの成果や課題を共有するなかで、人権委員会創設を含む包括的な人権の法制度の確立に向けて協働した取り組みをすすめていきましょう。
狭山再審の闘いでは、半世紀以上も無実を叫び続ける石川一雄さんの不屈の闘いに応え、事実調べ-再審実現をかちとるために、全力をあげなければなりません。弁護団は、自宅から発見された万年筆が、被害者のものではないとした「下山第2鑑定」や、脅迫状に関する「福江鑑定書」など、いずれも科学的な手法で証明した新証拠が提出されています。こうした石川さんの無実を明白に示す多くの新証拠の学習会の開催や情宣活動の強化によって世論を盛り上げ、必ずや再審開始をかちとりましょう。
1922年に創立された全国水平社のめざしたものは、厳しい差別と弾圧に抗して、差別-被差別の鉄鎖を打ち砕き、人間解放-部落解放の実現でした。この全国水平社の苦闘を正しく継承する私たちは、「全国水平社創立宣言」を原点としながら、荊冠旗のもとに固く強く団結し、「よき日」のために、全国の仲間たちとともに崇高な使命の完遂にむけて闘いをすすめましょう。
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