部落解放同盟中央本部
中央執行委員長 組坂 繁之
新たな年を迎えるにあたり、部落解放同盟に結集する全国の同盟員と兄弟姉妹、日頃より部落解放運動の取り組みに連帯をいただいている皆様方に、この間の人権と平和、民主主義の確立に向けた協働の営みに心より感謝申し上げ、新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)によって、私たちの生活はもちろんのこと、さまざまな活動に対する制約、制限によって、全国的な集会やとりくみを中止せざるを得ない状況が続きました。一方、感染症の拡大は、自国第一主義や新自由主義によって生み出されてきた差別や格差、貧困の問題をよりいっそう深刻化させてきました。
日本でも、菅政権は、感染症拡大によって、中小企業の倒産、非正規労働者や派遣労働者の解雇、雇い止めなど、社会不安が強まるなかでも、十分な休業保障、生活給付金がないにもかかわらず、「自助」を強調するとともに、経済優先の観光支援事業の継続に固執するなど、市民のいのちや生活をないがしろにする強権政治をすすめています。また、沖縄県民の民意を無視した沖縄・辺野古の新基地建設の強行や、憲法違反の「敵基地攻撃力」の検討を継続するなど、米国への軍事的追従を深めながら、軍事予算をいっそう最大させています。さらに、被爆者当事者の皆さんの大きな努力によって、本年1月に発効する「核兵器禁止条約」についても、日本政府は批准をしないままです。私たちは、日本政府に対して、米国と歩調を合わせることなく、早急に条約の批准を実現するように強く求めていかなければなりません。一方、昨年の米国大統領選挙では、トランプ大統領が敗北しましたが、分断と対立を深めてきた国際情勢はますます混沌としたものになっています。
私たちは、こうしたきびしい内外情勢のなかで、差別と戦争に反対し、憲法改悪阻止に向けて全力で闘いをすすめなければなりません。とくに、格差や貧困の問題が深刻化し、社会不安が増大するなかで、ヘイトスピーチやインターネット上の差別情報の氾濫などで明らかなように、差別や暴力を公然と煽動する差別排外主義が台頭してきました。本年に結審、判決が出される鳥取ループ・示現舎に対する裁判闘争をはじめ、差別糾弾闘争を強化し、差別-被差別の関係を変革していく協働の営みを拡げていかなければなりません。また、天皇代替わり以降、天皇制の賛美と政治利用の強化もすすんでいます。
私たちは、こうした社会的政治的情況に抗して、戦争につながる全ての政策に反対する広範な闘いを前進させてきました。2016年12月に公布、施行された「部落差別解消推進法」の周知や具体化に向けた全国の条例づくりなどでは、多くの成果をあげてきました。また、昨年公表された「部落差別の実態に係る実態調査」結果報告では、いまだに結婚や日常的な付き合いのなかで、明確に部落差別の存在が明らかになっています。
私たちは、「部落差別解消推進法」の制定をふまえ、部落差別撤廃にむけた地域での要求、要望を集約しながら、行政交渉を強化するとともに、「人権教育・啓発推進法」の活用、「人権のまちづくり」運動の活性化などにも取り組んできました。とくに、個別人権課題に関わる「障害者差別解消法」や「ヘイトスピーチ解消法」「アイヌ施策推進法」の制定をふまえ、それぞれの取り組みの成果や課題を共有するなかで、人権委員会創設を含む包括的な人権の法制度の確立に向けた協働の取り組みは重要な課題です。
狭山再審の闘いでは、半世紀以上も無実を叫び続ける石川一雄さんの不屈の闘いに応え、事実調べ-再審実現をかちとるために、全力をあげなければなりません。弁護団は、自宅から発見された万年筆が、被害者のものではないとした「下山第2鑑定」や、脅迫状に関する「福江鑑定書」など、いずれも科学的な手法で証明した新証拠を提出しています。こうした石川さんの無実を明白に示す多くの新証拠の学習会の開催や情宣活動の強化によって世論を盛り上げ、必ずや再審開始をかちとりましょう。
1922年に創立された全国水平社のめざしたものは、厳しい差別と弾圧に抗して、差別-被差別の鉄鎖を打ち砕き、人間解放-部落解放の実現でした。来年は、全国水平社創立100年という大きな節目の年を迎えます。この全国水平社の苦闘を正しく継承する私たちは、「全国水平社創立宣言」を原点としながら、その崇高な精神性をわがものとしながら、荊冠旗のもとに固く強く団結し、「よき日」のために、全国の仲間たちととも闘いをすすめましょう。
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