新年のご挨拶

全国水平社創立100年の闘いを受け継ぎ、
部落解放運動の新たな展望を大きく拡げよう

部落解放同盟中央本部
中央執行委員長 組坂 繁之

 新たな年を迎えるにあたり、部落解放同盟に結集する全国の同盟員と兄弟姉妹、日頃より部落解放運動のとりくみに連帯していただいている皆様方に心より感謝申し上げます。

 昨年は、東京オリンピック・パラリンピックの強行開催もあり、新型コロナウイルス感染症の拡がりが収束せず、私たちの生活はもちろんのこと、人権や平和の確立を求める闘いなどでも、多くの制限や制約があるなかでのとりくみになりました。また、菅政権が退陣し、その後継としての岸田政権のもとで実施された衆議院総選挙では、自民党が議席を減らしましたが、日本維新の会が大幅に議席を伸ばし、改憲発議の条件ができるなど、たいへん厳しい結果となりました。しかも議席を減らした立憲民主党では、枝野代表が辞任し、新執行部のもとで党再建をすすめるということで、新自由主義政策に対抗する野党勢力がどのような方向で政治の変革を実現していくのか不透明な情勢になっています。

 一方、岸田政権は、衆議院総選挙で「新しい資本主義」をめざすとして、「成長と配分」を強調していました。しかし、選挙後は、この間の自民党政権と同様、感染症が収束せず、新たな変異株が報告されているもかかわらず、成長のみを優先する姿勢を明確にしています。市民のいのちや生活を守るという本来の政治の最も重要な課題へのとりくみがまったくすすんでいません。これまでの医療制度の改悪、福祉や社会保障関係予算を削減してきたことが、感染検査や予防、感染患者への対応などに従事する医療関係者の疲弊や医療崩壊を生み出している点では、経済優先をすすめてきた新自由主義政策による「人災」であることは明らかです。しかも、感染症の拡大による十分な補償もなく、「緊急事態宣言」以降の無責任な「自粛」や休業要請などで、中小企業の経営破綻、派遣切りや雇い止めなどが続き、格差や貧困の問題がいっそう深刻化しています。岸田政権は、感染症対策であるはすの昨年末の補正予算で、中小企業への給付金支給や医療体制の充実など感染症対策を放棄し、軍事費をさらに増大させています。

 今日、国際社会においても、新自由主義による自国第一主義が生み出した対立的な構図のなかで感染症拡大防止に向けた共同のとりくみがすすまず、多くの国で医療崩壊とともに、貧困や格差、差別の問題を顕在化させています。このような国際社会における分断と対立は、米中対立、欧州連合(EU)諸国の不統一、中東や朝鮮半島での緊張感の高まりなど、国際情勢をいっそう不安定なものにしています。

 こうした社会的政治的情勢のなかで求められているのは、人権と平和、民主主義や環境の確立にむけた政治勢力の結集であり、差別と戦争に反対する市民運動の拡がりです。岸田政権は、米国への追従をより深めるなかで、軍事費の増大をすすめるとともに、沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設をあくまでも強行する姿勢です。また、憲法違反の「敵基地攻撃能力」の保持を明言するなど、自ら作り出した中国や韓国との対立を口実に増大させた軍事力を背景にアジアでの覇権をめざしています。私たちは、こうした危機的な情況に抗して、憲法改悪と戦争推進政策を許さない広範な協働の闘いをすすめていかなければなりません。

 今日の日本社会は、新自由主義政策のもと、貧困と格差が拡大、固定化しており、感染症拡大のなかで、よりいっそう深刻化しています。こうした閉塞感が生み出す社会不安や不満を背景にして、インターネット上の差別情報の氾濫やヘイトスピーチのように差別と暴力が公然と煽動されており、人権と平和を確立するための闘いは、ますます重要な課題となっています。

 鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争では、東京地裁での勝利判決をふまえ、差別居直りを許さず、さらに控訴審での完全勝利をめざして闘い抜きましょう。部落差別解消推進法」や「ヘイトスピーチ解消法」「障害者差別解消法」「アイヌ施策推進法」などの立法措置の実現は、自民党政権のもとにあっても、なお厳しい差別の実態を訴えてきたそれぞれの当事者の奮闘と、より広範な共同の闘いの成果です。私たちは、こうしたとりくみの成果をふまえ、差別糾弾闘争の強化と部落解放・人権行政の推進、国内人権委員会の設置を中心にした人権侵害被害救済制度の確立をはじめ、天皇制の強化に反対する闘い、男女平等と多様性を認め合う社会の実現に向けたとりくみなど、反差別共同闘争の力を結集して闘いをすすめることが求められています。

 狭山第3次再審闘争も、石川一雄さんの無実を明らかにする多くの科学的な新証拠が提出されています。さらに全証拠の開示、事実調べを実現し、再審-無罪をかちとらなければなりません。この間、感染症拡大のなかでも、創意工夫しながら、全国各地でさまざまなとりくみがすすめられてきました。昨年は2年ぶりに東京での市民集会も開催し、石川一雄さん、早智子さんが再審実現に向けたアピールをおこない、東京高裁に向けたデモ行進に参加しました。私たちは、石川さんの訴えに応え、反差別共同闘争の力で、狭山闘争の勝利に向けて全力で闘いましょう。

 本年は、部落民自身の自主解放をめざした全国水平社の創立から100年の大きな節目の年です。部落解放-人間解放をめざした多くの先達たちの苦闘に想いを重ね、「全国水平社宣言」の精神を原点にしながら、闘いの勝利にむけてともに奮闘しましょう。

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