新年のご挨拶

社会連帯と協働の闘いをすすめ、
部落解放運動を大きく前進させよう

 

 新たな年を迎えるにあたり、部落解放同盟に結集する全国の同盟員と兄弟姉妹の皆さんの献身的な活動と、日頃より部落解放運動のとりくみに連帯していただいている皆様方に心より感謝申し上げます。

 今日の国際社会においては、ロシアによるウクライナ侵略戦争の長期化とともに、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への非人道的な軍事行動などの中東情勢の混迷をはじめ各地で軍事的な衝突が続いています。また、日本の政治情況も、岸田政権の支持率の低迷を受けて発足した石破政権も、昨年の衆議院総選挙で惨敗し、与党の過半数割れという結果だったのにもかかわらず、政権維持のために、一部野党に譲歩しながら、不安定な国会運営をすすめています。

 しかし、石破政権は少数与党でありながら、旧統一教会問題や裏金問題の真相解明に消極的であるばかりか、昨年12月の臨時国会での補正予算では、石川県能登半島地震への復旧・復興予算の3倍もの軍事費を計上しました。補正予算は、野党の批判もあり一部修正され可決されましたが、石破政権は、これまでの政権同様、米国への追従による軍事大国化と憲法改悪をすすめる姿勢を鮮明にしています。

 一方、与党を過半数割れに追い込んだ立憲や国民などの野党も、政治の変革という有権者が示した大きな期待に応えているとはいえません。また、少数とはいえ、差別排外主義的な政党が議席を獲得するなど、日本の政治情勢もますます混迷しているのが実情です。

 とくに難民排斥や移住労働者への蔑視、在日コリアンへのヘイトスピーチなど、深まる日本社会の閉塞感のなかで、公然と差別や暴力を扇動する言動、インターネット上の差別情報が氾濫しています。障害者施設への襲撃、ウトロ地区への放火など、私たちは、二度とこうしたヘイトクライム(憎悪犯罪)を許さない社会連帯の闘いをすすめていかなければなりません。

 昨年の部落解放運動の取り組みでは、「部落差別解消推進法」の具体化にむけて取り組みをすすめてきました。インターネット上の部落差別情報の削除については、「プロバイダ責任制限法」の大幅な改正で、昨年5月に「情報流通プラットホーム対処法」(情プラ法)が成立しました。「情プラ法」は、削除要請の窓口の整備、削除にむけたガイドラインの策定、「侵害情報専門員」の配置をはじめ、運用の透明性を高める措置が義務付けられています。総務省は省令でガイドライン案の提示をしていますが、私たちも、「情プラ法」が差別情報の削除に対して実効性を発揮できるように、国や自治体への要請、共闘する団体への働きかけを強めていく必要があります。

 また、23年6月には、鳥取ループ・示現舎裁判で、東京高裁が出した実質的に「差別されない権利」を認める判決が、昨年12月4日付けで、最高裁による原告・被告双方の上告を棄却する決定によって確定判決となりました。東京高裁は、部落差別の現状を的確に認識した上で、地域情報の公表について、憲法13条(幸福追求権)と憲法14条(法の下の平等)を引用し、「人格的な利益において考慮するのが相当である」と実質的に「差別されない権利」として判断をしました。

 確定判決は、東京地裁のプライバシー侵害で判断した判決を修正したものであり、「情プラ法」に関わる総務省の考え方でも、この東京高裁判決が引用され、被差別部落の摘示情報が削除対象であることが明記されています。私たちは、現在、大阪、埼玉、新潟で差別動画削除裁判闘争に取り組んでいます。今回の東京高裁判決の確定をふまえて、さらに裁判闘争の支援に全力をあげていきましょう。

 鳥取ループ・示現舎は、これらの差別動画削除裁判では、裁判官に対する忌避申し立てや裁判の移送申し立てをおこなっています。その間も差別動画は放置されたままです。私たちは、このような確信犯的な部落差別を絶対に許さず、裁判闘争に勝利しなければなりません。また、昨年の国連女性差別撤廃委員会など、多くの国連人権条約関係委員会から勧告を受けている国内人権委員会の設置をはじめとした人権侵害救済制度の確立を一日も早く実現していかなければなりません。

 狭山再審にむけた闘いでは、弁護団が22年8月に東京高裁に「事実取調請求書」を提出し、新証拠を作成した11人の専門家の証人尋問と、石川さん宅から「発見」された万年筆インク資料の鑑定を裁判所が実施することを求めてきました。とくに、狭山事件の重要な争点である万年筆については、「発見」された万年筆インクには、被害者が事件当日に書いた「ペン習字浄書」のインクにふくまれているクロム元素が検出されないことを科学的に明らかにした新証拠を提出しています。

 昨年には、この万年筆インク資料の鑑定にあたって、家令裁判長の要請によって、検察にあるインク資料について、別の専門家による実験を実施し、昨年末に鑑定書を提出しています。この鑑定結果によって、「自白通り被害者の万年筆が発見された」という有罪判決の認定に合理的な疑いが生じたことになり、当然、東京高裁は、鑑定人尋問をおこなわなければなりません。

 私たちは、弁護団の「事実取調請求書」提出を受けて、署名活動、新証拠の情宣行動や学習会に取り組んできました。狭山闘争は、いよいよ大きな山場を迎えています。石川一雄さんの無実を訴えに応え、再審実現に向けて全力をあげて闘い抜きましょう。

 新たな年も、このように重要な闘いに全力で取りくんでいかなければなりません。国内外で差別排外主義が強まっている時代情況のなかで、私たちの部落解放運動の果たす役割は、ますます重要になっています。

 人権と平和の確立、社会連帯の実現にむけた部落解放運動の確かな展望を切り拓き、勝利の年にするためにともに奮闘しましょう。

2025年1月

部落解放同盟中央本部
執行委員長 西島 藤彦

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