部落解放基本法(案)
部落解放基本法制定要求国民運動中央実行委員会
(目的)
第1条 この法律は、部落差別が人間の尊厳を侵し、社会的に存在を許されないものであることにかんがみ、法の下の平等を定め、すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法理念にのっとり、部落問題の根本的かつ速やかに解決を図るため、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、その施策の目標及びその目標を達成するための基本となる事項を定め、もって差別のない民主社会の発展に寄与することを目的とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第2条 国は、前条の目的を達成するために、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、部落問題の根本的かつ速やかな解決を図る責務を有する。
2 地方公共団体は、前条の目的を達成するため、その区域内における部落問題の速やかな解決を図る責務を有する。
3 国及び地方公共団体は、部落問題を解決するための施策が円滑に実施されるよう相互に協力しなければならない。
(国民の責務)
第3条 すべての国民は、この法律の趣旨を理解して、相互に基本的人権を尊重するとともに、国及び地方公共団体が実施する部落問題を解決するための施策に協力するよう努めなければならない。
(施策の目標)
第4条 部落問題を解決するための施策の目標は、国民の部落問題に関する正しい認識を確立し、部落差別事象の発生を防止し、及び同和地区(歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域をいう。以下同じ。)の関係住民の社会的経済的地位の向上を図ることにより、同和地区の関係住民が平等の権利その他日本国憲法が保障する基本的人権を享有することができる条件を確保することにあるものとする。
(部落問題に関する知識の普及啓発等)
第5条 国及び地方公共団体は、国民の部落問題に関する正しい認識を確立するため、教育活動、文化活動、広報活動等を通じて、部落問題に関する知識の普及啓発及び人権思想の普及高揚に努めなければならない。
(人権擁護活動の推進)
第6条 国及び地方公共団体は、同和地区の関係住民に対する人権擁護活動の強化を図るため、人権擁護機関の充実、人権相談活動の推進等に努めなければならない。
(部落差別の規制等)
第7条 国は、部落差別事象の発生を防止するため、部落差別を助長する身元調査活動の規制、雇用関係における部落差別の規制等必要な法制上の措置を講じなければならない。
(部落差別の被害者に対する救済制度)
第8条 国は、部落差別の被害者に対する救済制度を確立するため、人権委員会の設置等必要な法制上の措置を講じなければならない。
(同和対策事項)
第9条 国及び地方公共団体は、同和地区の関係住民の社会的経済的地位の向上を図るため、次の各号に掲げる事項に係る施策を講じなければならない。
1 同和地区における生活環境の改善
2 同和地区における社会福祉及び公衆衛生の向上及び増進
3 同和地区における農林漁業及び中小企業の振興
4 同和地区の関係住民の雇用の促進及び職業の安定
5 同和地区の関係住民に対する学校教育及び社会教育の充実
6 その他同和地区の関係住民の社会的経済的地位の向上を図るために必要な事項
2 前項の施策は、有機的連携の下に総合的かつ計画的に策定され、及び実施されなければならない。
3 政府は、第一項の施策の実施に必要な財政上の措置を講じなければならない。
(行政組織の整備)
第10条 国及び地方公共団体は、部落問題を解決するための施策を推進するための行政組織の整備に努めなければならない。
(調査)
第11条 政府は、五年ごとに、同和地区の実態その他部落問題に関する実態を調査し、その結果を公表しなければならない。
(報告)
第12条 政府は、毎年、国会に部落問題を解決するために講じられた施策及び講ずべき施策に関する報告書を提出しなければならない。
(部落解放対策審議会)
第13条 総務庁に、部落解放対策審議会(以下「審議会」という)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣又は関係大臣の諮問に応じ、部落問題に関する重要事項を調査審議する。
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係大臣に意見を述べることができる。
第14条 審議会は、委員20人以内で組織する。
2 委員は、部落問題に関し学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
4 前三項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。