児童扶養手当の改善を求める緊急要請
一九九八年度予算におきまして、児童扶養手当の所得制限が大幅に見直されることになりました。
この突然の見直しによって多くの母子家庭が生活の支えとしての手当を一方的に奪われ、生活上の困難に直面することになります。それは突然の収入減というにとどまらず、多くの地方公共団体において児童扶養手当受給対象者を給付要件とする医療費助成制度など各種福祉施策からも排除されるという深刻な事態を生みだすことになります。
わが部落解放同盟は、「同和地区」においては差別の結果母子家庭の出現率が高く、低所得の母子家庭が多い現状の中にあって、この見直しは母子家庭の自立と部落差別の撤廃に逆行するものとして、また、地域改善対策協議会意見具申が同和問題の早期解決をめざす取り組みにおいて、今後の施策ニーズには必要な各般の一般対策によって的確に対応してゆくとした方向づけにも反するものとして、その撤回を強く要請してきたところであります。
こうした中、政府、与党におかれましては、財政構造改革法改正が検討され、個別歳出ごとの伸び率を制限した、キャップ制度の見直し問題について社会保障関係費に限ってキャップ制をはずす議論が固まりつつあるとの報道がなされました。今月十日の閣僚懇談会における厚生大臣の主張に敬意を表するとともに、この際、児童扶養手当の所得制限見直しの撤回にむけ、一層の取り組みを強く要請するものであります。
そもそも児童扶養手当の所得制限見直しは「中央児童福祉審議会児童扶養手当部会」報告を無視して、財政改革の一貫として実施されてきたことをふまえるなら、その前提になっていたキャップ制を緩和する方向が示された今、児童扶養手当の所得制限見直しを撤回し、「審議会」報告が提起する母子家庭の給付的な自立支援のための方策について早急に検討・具体化されますよう要請いたします。
一九九八年四月十五日
厚生大臣 小泉純一郎 様
部落解放同盟中央本部
執行委員長 上田 卓三