本年6月に大阪で発覚した差別身元調査事件は、就職希望者が部落出身者であるかどうかなどの身元調査をおこなっていた悪質な差別事件である。さらに、その後の大阪府連による事情聴取・確認会では、この調査をおこなっていた企業は、顧客企業から提出された「履歴書」をもとに、部落出身ばかりでなく、思想・信条、宗教、民族など広範囲な項目について調査した。とくに部落出身者には「※」と記載し、顧客企業には「調査不能」と報告していたことなどが明らかになっている。このことは、憲法に保障された就職の機会均等の原則を侵すばかりでなく、部落出身者の就職の機会を奪う、重大かつ悪質な差別事件である。
わが同盟は、1975年に発覚した『部落地名総鑑』差別事件にたいする糾弾闘争にとりくみ、企業の身元調査による就職差別の実態を明らかにしてきた。こうした闘いの成果として、「身元調査お断り」運動がとりくまれ、さらに「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」をはじめ、熊本、福岡、香川、鳥取、徳島、奈良、三重、高知、佐賀での「人権条例」「規制条例」の制定など、全国各地で「条例・宣言」推進運動が展開されてきた。また、企業もその差別的体質を反省し、社会的責任を自覚し、部落問題の解決をはじめ、人権問題へのとりくみをすすめてきた。
しかしながら、今回の差別身元調査事件では、依然として、多くの企業が採用にあたって、差別身元調査を依頼していた事実とともに、1000社を超える企業が、この調査業者に会員として登録しているという、変わらぬ差別的体質が露呈した。
わが同盟は、第55期第6回中央執行委員会で、今回の差別身元調査事件にたいして、『部落地名総鑑』差別事件糾弾闘争以降の企業のとりくみを問い直し、断固として全国的な糾弾闘争を展開していくために、「差別身元調査事件闘争本部」を設置することを確認した。
わが同盟は、部落差別調査ばかりでなく、思想・信条、宗教、民族などの差別調査がされていたことをふまえ、幅広い共闘団体とともに、この差別身元調査事件の徹底した事実究明をおこない、こうした部落差別の実態を社会的に明らかにしなければならない。また、今回の糾弾闘争をとおして、わが同盟は、差別身元調査の根絶をめざすとともに、それを支える日本社会の差別構造の変革をせまる糾弾闘争を展開していくために「差別身元調査事件闘争本部」を設置するものである。