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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド

部落解放同盟第58回全国大会/一般運動方針基調

 ① 昨年の第57回大会は、二〇世紀最後の年、新たな一千年紀(ミレニアム)の最初の年に開催された大会でした。そこで、例年の全国大会とは異なり、情勢分析や運動の基調も中・長期的視点にたって提起しました。
 ② 今年の全国大会は、二一世紀最初に開催される大会ですが、昨年の全国大会で承認された情勢分析や第3期の部落解放運動の基本的内容、さらには第3期の部落解放運動を創造していくための八つの運動の転換の方向をふまえ、これを具体的に実践していくための方針を確立する大会です。
 ③ また、今大会は、昨年十一月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(人権教育・啓発推進法)が制定されたことの評価と今後の方向、さらに昨年十一月に人権擁護推進審議会から出された「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」にたいする評価と今後の方向を確立する大会でもあります。
 ④ さらに、二〇〇二年三月末には、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)の期限切れを迎えます。その後、これまでの「同和」行政の成果をふまえ人権行政を創造し、その重要な柱に「同和」行政を位置付けていくためのとりくみを本格的に展開していく方針を確認する大会でもあります。
 ⑤ これら一連の闘いは、一九八五年五月以降求めつづけてきた「部落解放基本法」の制定を今日的に実現していく闘い、二一世紀の早い時期に部落の完全解放を達成することができるかどうかがかかっている闘いでもあり、一大闘争として各支部、地協、都府県連が総力をあげて盛りあげていくことが求められています。
 ⑥ なお、今大会は、昨年八月、国連の人権の促進および保護に関する小委員会(国連人権小委員会)が日本の部落差別やインドのダリットにたいする差別などを対象とした「職業および世系にもとづく差別に関する決議」を採択したことにたいする評価と、今後の反差別国際連帯の運動の方向を明らかにしていく大会でもあります。

一 部落解放運動をとりまく内外情勢の特徴

 ① 新しく迎えた二一世紀を平和で実り多い世紀とするためには、二〇世紀の最悪の象徴であった戦争を反省することのなかから生み出された「世界人権宣言」の精神をしっかりと受け継ぎ、具体化していくことが必要です。
 ② 周知のように「世界人権宣言」は、「差別を撤廃し人権を確立することが恒久平和を実現することに通じる」ということを基本精神としていました。この精神を実現していくために、今日、国連だけでも二十三におよぶ人権条約が採択され、国際的な連帯のもとでの差別の撤廃と人権の確立がめざされてきています。
 ③ しかしながら、自由主義市場経済がグローバル化していくなかで、世界的にも、一国的にも貧富の差が拡大し、各地で民族紛争が激化しています。いわゆる先進諸国でも失業者が増加するなかで、外国人排斥を叫ぶネオ・ナチ勢力の台頭がみられます。
 ④ アメリカの経済後退が予測されること、さらにはブッシュ政権の誕生で「タカ派」的な政策が展開される危険性があることなどから、世界の人権と平和をめぐる情勢は予断を許さない状況となってきています。
 ⑤ こうした憂慮すべき人権状況を直視するなかから、昨年九月にひらかれたミレニアム・サミットで国際的な貧豊の格差の是正と、国際的な協力の枠組みの必要性を盛りこんだ「ミレニアム・サミット宣言」が採択されました。また、今年八月三十一日から九月七日まで、南アフリカのダーバンで、「人種主義、人種差別、排外主義、不寛容に反対し力を合わせて行動する国際年」(反人種主義・差別撤廃世界会議)が国連の主催で開催されます。
 ⑥ この世界会議では、民族紛争やネオ・ナチ勢力の台頭の原因を解明するとともに、グローバル化の結果、深刻化しているあらゆる差別をとりあげて、これらの根絶に向けた具体的な方策を盛りこんだ「宣言」と「行動計画」が採択されることとなっています。
 ⑦ グローバル化の波は日本にも押し寄せ、企業の倒産や急速に押しすすめられたリストラの結果、日本国内でも失業者が増大し、野宿生活者が増えています。
 ⑧ さらには混沌とした経済や政治状況がつづき、事態のいっそうの深刻化も予測されるなかで、日本でも国権主義的な傾向が強まり、外国人の排斥を叫ぶ勢力の台頭がみられます。
 ⑨ これらの勢力は、「日本国憲法」や「教育基本法」の「改正」を声高に叫ぶところとなってきています。けれどもこの道は、日本を再び国内での差別の強化と侵略戦争に引きずりこむ危険性をはらむもので、断じて許してはならないものです。
 ⑩ 新しく迎えた二一世紀の日本を平和で豊かな日本、国際社会のなかで名誉ある地位を占める日本にしていくためには、第二次世界大戦の反省のなかからつかみ取られた「日本国憲法」や「教育基本法」の基本精神である人権主義、民主主義、平和主義をしっかりと受け継ぎ、発展させていくことこそ求められていることだといわねばなりません。
 今年七月には参議院議員選挙が予定されています。場合によれば衆・参同日選挙もないとはいえません。これらの選挙で、「世界人権宣言」をはじめとする国際的な人権基準を遵守するとともに、「日本国憲法」や「教育基本法」の基本精神を擁護し発展させる勢力の飛躍的な前進をかちとっていく必要があります。
 なお、今年は、国連が定めた「ボランティア国際年」であるとともに、「国連文明間の対話年」、「人種主義、人種差別、排外主義、不寛容に反対し力を合わせて行動する国際年」でもあります。このよびかけに応えた各方面での有意義なとりくみが求められています。

二 部落のおかれている現状と差別の特徴

  一九九三年に政府(総務庁)が、全国三十六府県四千六百三地区を対象に実施した生活実態調査(五万九千六百四十六世帯)と、全都道府県で実施した国民意識調査などによっても明らかにされた差別の実態の特徴的な点を、つぎに簡単に列挙します。

 1 多い不就学者、少ない高等教育修了者
 部落の生活実態のなかで、もっとも深刻な課題の一つである教育の実態を最終学歴にみると、初等教育(義務教育)修了者が、部落で五五・三㌫(国勢調査で三一・六㌫)、中等教育(高校)修了者が三二・三㌫(四五・四㌫)、高等教育(大学)修了者が七・六㌫(二一・二㌫)、不就学者は三・八㌫(〇・二㌫)となっています。
 このように、不就学者の比率が圧倒的に高く、高等教育の修了者がひじょうに少ないという点に、教育面での部落差別の実態の特徴がはっきりとあらわれています。

 2 拡大する情報格差
 ① 「IT(情報技術)革命」「IT時代」という社会の流れのなかで、情報にたいする適切な処理・判断能力、情報へのアクセス手段、などの点で新たな社会的情報「格差」が危惧されています。二〇〇〇年に実施された大阪府の部落実態調査結果でも、そのことがうき彫りにされています。
 ② まずパソコンの普及率は、全国の世帯普及率が三八・六㌫にたいし、部落の場合は一六・九㌫と半分以下の状況です。またインターネットの利用状況は、全国の個人利用率が二八・五㌫にたいし、部落は一四・四㌫とやはり半分という水準です。

 3 不安定な労働・産業
 ① 教育での厳しい部落差別の実態は、仕事の実態のうえにも反映しています。「有業者の勤め先の企業規模」に典型的にあらわれていますが、部落は「一=cd=c122四人」で二二・一㌫(就業構造基本調査二〇・七)、「五=cd=c122九人」で一二・二㌫(八・七㌫)と高く、逆に「三〇〇人以上」では一一・六㌫(二五・五㌫)と低くなっています。
 ② そのことは「有業者の年収額」にもあらわれています。年収が二百九十九万円までの人は、部落が五八・二㌫(就業構造基本調査三八・三㌫)と多く、逆に四百万円以上の人は部落が二三・七㌫(四一・一㌫)と少なくなっています。
 ③ 部落の業者の実態をみると、建設業二九・九㌫(事業所統計調査八・九㌫)、皮革履物関係五・〇㌫(〇・二㌫)、廃棄物処理関係二・四㌫(〇・二㌫)といった業種の事業所が多い、という特徴があります。そして、経営組織別にみると、個人経営が部落で八三・五㌫(事業所統計調査五七・三㌫)と多く、株式会社は、六・四㌫(二三・八㌫)と少ない状況です。
 ④ 農業経営も零細で、部落は三十アール未満の耕地面積の農家が四一・八㌫(農林業センサス二三・六㌫)ときわめて高く、逆に百アール以上の農家は一一・四㌫(三一・五㌫)とひじょうに少なくなっています。
 農産物販売額をみても、部落では「販売なし」が四三・〇㌫(六・〇㌫)を占めています。
 ⑤ 「ボタ山のあるところ、被差別部落あり」といわれるように、炭鉱と部落は密接な関係があります。福岡県の産炭地である筑豊地区では、現在、閉山された炭鉱地域に、約三百の被差別部落が存在しています。炭鉱閉山による諸問題(失業、鉱害復旧、ボタ山処理、老朽炭住建替、振興政策、関係自治体の財政援助など)の解決にあたり、「筑豊の命綱」といわれる「石炭関係六法」・諸法は、未解決の問題が山積するなかで、二〇〇二年三月三十一日で失効となります。

4 すすむ青年層の流出と多い高齢・母子・父子・生活保護世帯
 ① 部落の住環境の改善はすすんできましたが、さまざまな理由により、生活状況に多くの課題が存在しています。都市部落では画一的で狭小な公営住宅が多いこと、農村部落では就労先が少ないため青年層の流出がいちじるしく、部落の活力を損なわせています。それは年齢構成をみると、「二〇=cd=c122三四歳」が部落の場合一七・三㌫(国勢調査にもとづく推計人口二一・〇㌫)と、少ないことに、はっきりとあらわれています。
 ② また、高齢者世帯一八・一㌫(国民生活基礎調査一一・八㌫)、母子世帯二・二㌫(一・二㌫)、父子世帯〇・五㌫(〇・二㌫)と、困難な諸課題をかかえた世帯が部落に、多いことがわかります。
 ③ 「生活保護世帯と住民税非課税世帯」が部落で二五・八㌫(国民生活基礎調査一五・九㌫)と高く、「住民税均等割課税世帯」も一三・七㌫(四・四㌫)と高く、経済的に不安定な世帯が多い状況が、依然として改善されていません。

 5 3人に1人が差別を受ける
 ① 「人権侵害の状況」をみると、「今までに同和地区の人であるということで人権を侵害されたことがありますか」という質問にたいして、三三・二㌫の人が「ある」と答えています。
 ② さらに、人権侵害の内容は、結婚(二四・二㌫)、日常の地域生活(二三・六㌫)、職場のつきあい(二一・二㌫)、学校生活(一六・三㌫)の順になっています。
 ③ 「人権侵害への対抗方法」は、複数回答ですが、「だまってがまんした」が四六・五㌫、「相手に抗議した」が二〇・二㌫、「身近な人に相談した」が二二・四㌫となっていて、「法務局又は人権擁護委員に相談した」は〇・六㌫にすぎません。現行の人権擁護制度がまったく役に立っていないことが示されています。

 6 放置されつづける1千部落
 「同和」対策事業の対象から排除された約一千の地区指定されていない部落の実態は深刻です。
 ○ア一九六九~七一年にかけて「同和」対策事業を実施したにもかかわらず、部落はないとする山形県米沢市○イ区画整備事業からも排除し結婚差別も無視してきている福島県会津若松市○ウ一九六七年精密調査でも調査対象となり報告もされているにもかかわらず根強い「寝た子を起こすな」意識の福島県会津坂下町○エ九地区約一千世帯の部落があり一九六三、六七年には部落の存在を国へ報告していたにもかかわらず、六九年の「特別措置法」以降、部落の存在を否定しつづける群馬県桐生市○オ結婚差別事件として名古屋高裁判決(一九七五年)でも確認されたにもかかわらず無策をつづける富山県富山市○カ「部落はない」としていたのに差別事件が発覚した石川県や長野県戸隠村、長崎県島原市○キ一部地元有力者が断ったことを口実に差別撤廃の責任を放棄してきた三重県伊勢市、滋賀県近江八幡市○ク差別戒名までが発覚している佐賀県武雄市、など氷山の一角の事例といえます。

 7 深刻な差別事件の実態
 ① 近年の差別事件の特徴は、インターネットを悪用した差別情報の流布が多発していることです。そのなかには、海外のサイトを利用した部落の所在地一覧の流布、「どエッタ撲滅ヨツ抹殺」と題した掲示板での差別事件など、悪質なものが多発しており、高度情報時代を反映した深刻な社会問題となってきています。
 ② 差別落書・投書事件は、長野県、福岡県、埼玉県、東京都などで多発しています。
 ③ 就職差別事件や職場での差別事件もあとをたちません。改正「職業安定法」などによって雇用対象者のプライバシー保護が定められましたが、企業の差別身元調査事件はなお生起しています。
 大阪の「差別身元調査事件」で問題となった調査会社とも関係があった長野県塩尻市のA社が、中途採用試験対象者への身元調査をおこなっていた事実が発覚しています。また職場での差別事件も、大阪府茨木市の雪印アクセス社員の四本指を立てての差別発言、群馬県J自動車のバス運転手の差別発言、長野県小諸市にある浅間技研工業の米国法人ACM社長の差別発言などあとをたちません。
 ④ 「人権教育10年」行動計画で、人権とのかかわりの深い特定職業従事者として指摘されている公務員や教員による差別事件も、あいついでいます。
 鹿児島県高尾野町の職員による部落出身者への差別発言、鹿児島県頴娃町の歴史民俗資料館による「穢多村」記載の「古地図」のずさんな取り扱い、島根県羽須美村の小学校校長による差別発言、神奈川県の「同和」教育研修会での中学校教員による差別発言などがそれです。
 ⑤ 宗教関係者による差別事件も近年あいついでいますが、浄土真宗本願寺派福井教区でも、門徒総代の差別発言事件がおこりました。
 ⑥ なお、近年の「人権、人権と騒ぎすぎだ」という声が台頭し始めているなかで、公的立場にたつ人びとの差別を肯定する危険な状況が生まれていることに警戒する必要があります。
 たとえば、石原都知事が、昨年四月九日の陸上自衛隊練馬駐屯地での創立記念式典で「不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪犯罪を繰り返している。大きな災害が起きたら騒擾事件すら想定される=cd=71fa=cd=71fa」などという差別発言をおこない、大きな批判を受けました。また大阪法務局・大阪府人権擁護委員連合会が主催する一九九九年度の「中学生作文コンテスト」で「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分担の考え方を肯定する内容の作文が入選作とされた問題にたいし、大阪法務局は差別性は認めず、問題はないという見解を示しています。

 8 根強い差別観念
 ① 結婚差別に象徴されるように、依然として根強い差別観念が存在します。九三年の政府(総務庁)による国民の意識調査(二万四千八十人対象)でも、深刻な結果がでています。
 たとえば、「結婚に対する態度」では既婚の人の場合、自分の子どもの結婚相手が部落の人だとわかったとき、「絶対に結婚を認めない」が五・〇㌫、「家族の者や親戚の反対があれば、結婚させない」が七・七㌫、「親としては反対するが、子どもの意志が強ければしかたない」が四一・〇㌫で、なんらかの形で反対する可能性があるこの三つの回答をあわせると、じつに五三・七㌫にも達します。
 未婚の人の場合、自分の結婚相手が部落の人だとわかったとき、「絶対に結婚しない」が二・八㌫、「家族や親戚の反対があれば、結婚しない」が一五・九㌫で、あわせて一八・七㌫にも達します。
 ② 根深い結婚差別の背景には、いまなお結婚にさいして「家柄」を気にする風習が存在しています。先に引用した総務庁の国民意識調査結果では、部落外で、結婚にさいして「家柄をいつも気にしている」が一四・〇㌫、「おかしいと思うが、自分だけ反対しても仕方がないと思う」が三一・〇㌫、「まちがっているから、なくしていかなければならないと思う」が五三・五㌫となっています。この調査結果をみると、今日でも四五・〇㌫もの人びとが、結婚にさいして相手の「家柄」を気にしている風潮があることが明らかになっています。

9 長期化する経済不況下で新たな実態調査を
 ① 一九九三年の総務庁の実態調査から八年が経過しました。この間、経済不況の長期化、あいつぐ企業倒産、戦後最高の失業率、地方財政の危機などの影響を部落はもろにかぶっています。この結果、部落の企業の倒産、失業者の増大といった問題が深刻化してきています。一九九五年に実施された三重県や大阪府泉南市による実態調査では、部落の失業率の上昇という結果が、明確に示されています。
 ② 長期化する経済不況が部落に与えている深刻な影響はもとより、二〇〇二年四月からの、「地対財特法」期限後の方向を明らかにするために、二〇〇〇年に部落差別の原因に迫る、新たな実態調査が、大阪府、鳥取県、徳島県、香川県などで実施されました。今年中頃には、その集計と分析が明らかにされると思われますが、そのなかで明らかにされた今日時点の部落差別の実態を、地方自治体や国につきつけていくことが必要です。
 ③ また、他の都府県や国などでも、速やかに全面的な部落実態調査を実施することを求めていく必要があります。

三 21世紀を人権の世紀とするための今大会の意義と任務

1 「部落解放基本法」闘争の到達点と今後の基本方向
 ① 「部落解放基本法」の制定を求める本格的な運動は、一九八五年五月から開始されました。それ以降、今年の五月で十六年の歳月が経過することとなります。
 ② この間、紆余曲折があり、「部落解放基本法」そのものの実現は達成されていないものの、九五年十二月には「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)に加入しました。また、九六年五月には地域改善対策協議会意見具申(地対協・意見具申)がだされ、九六年十二月には「人権擁護施策推進法」が、そして昨年十一月には「人権教育・啓発推進法」が制定されました。
 ③ このうち、「地対協・意見具申」では、部落差別の責任を部落大衆と部落解放運動に転嫁する危険性をはらんだ部分が含まれていることと、基本認識を具体化するための骨太の方針が明確に示されていないといった問題を含んでいるものの、◯ア部落差別がなお現存し日本社会の重要な課題であること◯イ部落問題をはじめとする日本社会に存在している人権問題の解決が国際的な責務であること◯ウ「同和対策審議会答申」(同対審答申)の精神をふまえ、引きつづき国と地方公共団体と国民の一人ひとりが主体的なとりくみを推進していく必要があること◯エ部落問題は過去の問題ではなく、部落問題解決に向けた今後のとりくみが、あらゆる人権問題の解決と結びついているという未来にかかわった課題であること◯オ部落問題の解決に向けて法的整備を含め各般の検討が必要であること、などを明らかにした点で、今後の闘いのテコとして活用できるものとなっています(なお、「地対協・意見具申」については、今後の運動にとって重要な意義をもっていますので、別途中央本部としての逐条コメントを作成します)。
 ④ また、「人権擁護施策推進法」は、部落問題をはじめとする日本社会に存在している差別と人権侵害を撤廃するために、人権教育・啓発の推進と人権侵害の被害の救済などを国の責務であることを明確に指摘するとともに、これらのとりくみの抜本的な充実のために審議会を設置することを盛りこみました。
 ⑤ さらに、この法律が衆・参両院の法務委員会を通過したさいの付帯決議では、二年をめどに教育・啓発についての「答申」を、五年をめどに人権侵害の救済などに関する「答申」を出すこと、これらの「答申」を受けた政府は、法的措置を含む対応をすることを求められていました。
 ⑥ そして、昨年十一月には「人権教育・啓発推進法」が制定されました。これは、いくつかの問題点を含んでいるとはいえ、国・地方自治体、学校、企業などあらゆる分野で人権教育・啓発を推進していくための枠組みを定めたもので、人権教育・啓発の推進にかかわった法律の制定は必要なしとする法務省一部官僚などによる妨害策動をはねのけて獲得した大きな成果です。
 ⑦ 周知のように、一九八五年五月に提案された「部落解放基本法案」には、◯ア部落問題の解決の重要性を明らかにした「宣言法的部分」◯イ部落差別意識を撤廃し人権意識の高揚をはかるための「教育・啓発法的部分」◯ウ興信所・探偵社などによる部落差別調査や就職差別など悪質な差別を法的に規制するとともに、差別の被害者を効果的に救済するために新たな人権委員会を設置することを求める「規制・救済法的部分」◯エ部落差別の実態を改善するための事業を総合的・計画的に推進していくことの必要性を明らかにした「事業法的部分」◯オ部落問題解決に向けて国と地方自治体が行政機構を整備するとともに、部落問題に精通した学識経験者の参加をえた審議会の設置を求める「組織法的部分」の五つの部分から構成されていました。
 ⑧ この「部落解放基本法案」は、「同対審答申」の精神をふまえ、これまでの一連の「特別措置法」にもとづく施策を反省するとともに、「人種差別撤廃条約」をはじめとした差別撤廃と人権確立を求める国際的な潮流を参考として取りまとめられたもので、今日時点でも部落問題の根本的な解決にとって必要な基本的方策の全体像を明らかにしているという意義があります。
 ⑨ けれどもすべての闘いがそうであるように、「部落解放基本法」の制定を求める私たちの運動も、具体的な実現の形態は、その時どきの情勢や力関係によって変化していくことを余儀なくされます。その結果、「部落解放基本法」そのものの実現は達成されていないものの、「宣言法的部分」については、「地対協・意見具申」のなかの「同和問題に関する基本認識」の項に盛りこまれました。また、「教育・啓発法的部分」については、昨年十一月に制定された「人権教育・啓発推進法」として具体化されたといえましょう。
 ⑩ 今後は、これらの成果の活用と具体化を求めるとりくみを展開していくとともに、残された「規制・救済法的部分」、さらには「事業法的部分」や「組織法的部分」の実現に向けて闘いを強化していく必要があります。

2 「人権教育・啓発推進法」の評価と具体化を求める闘い
 ① 昨年十一月に、「人権教育・啓発推進法」が制定され、十二月六日に公布・施行されました。
 ② これは、国・地方自治体、学校、企業などあらゆる分野で人権教育・啓発を推進していくための枠組みを定めたものです。このことによって、「部落解放基本法案」のなかに盛りこまれていた「教育・啓発法的部分」の精神をふまえた法律が具体的に実現したこととなり、一九八五年五月に「部落解放基本法」の制定を求める運動を本格的に展開して以降闘いとった最大の成果です。
 ③ しかしながらこの法律は、「基本計画」の内容が明記されていない、人権教育・啓発を推進していくための指導員の設置や人権教育・啓発センターを全国的に整備していくことが盛りこまれていない、さらにはこの法律の所管が法務省と文部科学省の共管(法務省主体の)となっていて内閣府の所管となっていない、などの問題点をはらんでいます。
 ④ この問題点については、衆議院と参議院の法務委員会での付帯決議などを活用して克服するとともに、「人権教育・啓発推進法」をテコに、わが同盟としての基本計画に関する要求を明らかにしながら、全府省庁、すべての自治体、学校、企業、さらには人権とのかかわりの深い特定職業従事者のなかなどで人権教育の推進を求める闘いを展開していく必要があります。
 ⑤ とりわけ、「人権教育・啓発推進法」をテコに、都府県連、支部、地協が中心となって、この法律の具体化を求めるとりくみを当該都府県、市区町村、保育所、学校、企業、各種団体などへ働きかけていくことが決定的に重要です。
 ⑥ このうち、都府県、市区町村にたいしては、「同和」教育の推進を重要な柱とした人権教育基本方針と基本計画の策定と推進体制の整備を求めていくことが必要です(啓発についても同様です)。これらのとりくみこそが、「人権教育・啓発推進法」の不十分点の克服と具体化を政府に迫るものとなるからです。
 ⑦ なお、「人権教育・啓発推進法」の具体化を求める運動は、今年で七年目に入った「人権教育のための国連10年」(人権教育10年)にちなんだとりくみと結合していくことが必要です。具体的には、推進本部の設置や行動計画の策定がされていない自治体にたいしては、推進本部の設置と行動計画の策定を求めていくとともに、推進本部が設置され行動計画が策定されているところでは、これまでのとりくみへの評価をふまえてさらに充実を求めていくことが必要です。そのさい、「人権教育10年」にちなんだ行動計画がもっとも広範に人権教育・啓発の計画を盛りこんでいることから、これを充実させ、「人権教育・啓発推進法」で定める「基本計画」と位置づけていくことを求めていくことが必要です。

3 人権擁護推進審議会「中間取りまとめ」の評価と「規制・救済法」制定の闘い
 ① 昨年十一月に人権擁護推進審議会から「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」(中間取りまとめ)が示されました。「中間取りまとめ」には、政府から一定独立した「委員会」設置の必要性は盛りこまれていますが、◯ア深刻な差別の実態がふまえられていない◯イ悪質な差別を法的に規制することの必要性が明記されていない◯ウわが同盟による糾弾をはじめ民間レベルで実施されているとりくみを尊重する旨の指摘がなされていない◯エ中央集権的な「委員会」の設置がもくろまれていて地域に密着した「委員会」構成が示されていない◯オ新たに設置される「委員会」の委員や事務局を担う職員の人選にさいしては、被差別の当事者を積極的に採用する必要性がある旨の規定がなされていないなど、いくつかの問題点が含まれています。
 ② これらの問題点については、差別の実態を審議会に示すとともに、わが同盟はもとより地方自治体や「人権フォーラム21」など各方面から、広範な世論を盛りあげていくことによって克服していく必要があります。
 ③ 人権擁護推進審議会は、今年五月にも「答申」をとりまとめ、早ければ今年秋の臨時国会、遅くとも来年の通常国会で「答申」を受けた法律の制定がめざされることとなります。この闘いは、「部落解放基本法案」に盛りこまれていた「規制・救済法的部分」の具体化を迫る闘いであり、「人権教育・啓発推進法」の制定を達成したとりくみを上回る運動を構築していく必要があります。
 ④ なお、「規制・救済法」の制定を求める運動のなかで、◯ア「差別身元調査事件」やインターネットを悪用した差別宣伝や差別扇動、さらには関係者が説得しても差別を止めない差別事件など深刻な差別の実態をふまえること◯イ右記のような悪質な差別行為については法的規制が必要であることを明確にすること◯ウわが同盟の糾弾をはじめ民間レベルでとりくまれている人権侵害克服のためのとりくみを尊重すること◯エ新たに創設する「人権委員会」(仮称)は、中央レベルだけでなく都道府県・政令都市レベルでも設置すること◯オ中央と地方の人権委員会の委員や事務局職員には、人権問題に精通した人、被差別の当事者を積極的に採用すること◯カ人権擁護委員については、人権研修の義務付け、有給化、ジェンダーバランスや被差別の当事者の積極的な選任などの抜本的な見直しをすること、などがふまえられるよう訴えていく必要があります。
 ⑤ マスメディアが社会の不正義をただし、権力の横暴を批判する使命をもっていることをふまえたとき、新たに設置される「人権委員会」が強制力をともなった調査や差し止め命令などをおこなう権限をもつことには賛同できません。しかしながら、犯罪被害者の人権をふみにじるなどの人権侵害をマスメディアがおこなっている実態もあることから、第三者によって構成される実効ある「苦情処理機関」、「救済機関」をマスメディアが自主的に設置することを求めていきます。
 ⑥ さらに、「個人情報保護法」の制定や司法制度改革審議会の動向も、部落差別を撤廃し人権を確立していくうえで重要な影響をおよぼすことから、これらにたいしても積極的に関心をもち、わが同盟としての意見を表明していきます。とくに「個人情報保護法」の制定に関しては「自己情報コントロール権」を尊重すること、司法制度改革審議会に関しては、◯ア証拠開示を法律で保障すること◯イ司法修習生、検察官、弁護士、裁判官などにたいして部落問題をはじめとする人権問題と国際人権基準の研修を義務づけること◯ウ法曹一元化、参審制、陪審制など裁判への民衆参加を認めることなど、を求めていきます。

4 「地対財特法」の期限切れと新たな「同和」行政・人権行政の創造を求める闘い
 ① 二〇〇一年度末には現行「地対財特法」の期限切れを迎えます。これにともない「特別措置」という手法を中心とした時代が終結することとなります。しかしながら、このことは「同和」行政の終結を意味するものではありません。なぜならば、部落差別が現存しているからです。
 ② 周知のように一九六五年八月に出された「同対審答申」では、「部落差別が現存する限り、この行政は積極的に推進されなければならない」と明確にのべられていました。また、九六年五月に出された「地対協・意見具申」でも、「特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が、同和問題の早期解決を目指す取り組みの放棄を意味するものではないことは言うまでもない。一般対策移行後は、従来にも増して、行政が基本的人権の尊重という目標をしっかりと見据え、一部に立ち遅れのあることも視野に入れながら、地域の実情や事業の必要性の的確な把握に努め、真摯に施策を実施していく主体的な姿勢が求められる」と指摘されています。
 ③ さらに、「地対協・意見具申」では、特別措置から一般施策へ移行するにさいして、「既存の一般対策の状況、なお残されている課題の状況、地方公共団体の財政状況をふまえたうえで、これまでの成果が損なわれるなどの支障が生ずることのないよう配慮すべきである」との条件が示されています。
 ④ 今年は、「地対財特法」の期限切れをにらんで、新たな「同和」行政の創造を求める闘いを本格的に展開していく必要があります。そのさい、今日的な部落差別の実態を明らかにし「部落解放白書」を作成するとともに、「同対審答申」や九六年五月の「地対協・意見具申」のなかに盛りこまれている右記の指摘などを最大限活用していく必要があります。
 ⑤ 新たな「同和」行政の特徴は、一般施策を活用したものとなりますが、そのさい、なによりもまず、これまでの「特別措置」を一般施策へと普遍化することを求めていくことが必要です。また、既存の一般施策を最大限活用するとともに、適当な一般施策がない場合、あるいは既存の一般施策の水準が部落の実態と合わない場合、新たな施策の創設や一般施策の充実を求めるとりくみを展開していくことが必要です。
 ⑥ こうしたとりくみは、これまでの「同和」行政の成果をふまえ、人権行政を創造し、その重要な柱に「同和」行政を位置づけていくとりくみへと発展していきます。また、こうしたとりくみは、必然的に部落を核としながらも部落を含む都府県全体、市区町村全体を、人権が尊重されたまちにつくりかえていくとりくみへと発展していきます。したがって、新たな「同和」行政の創造を求める運動は、部落を核とした都府県全体、市区町村全体を人権が尊重されたまちにしていく運動、人権行政の創造を求める運動と結合してとりくんでいくことが必要です。
 ⑦ そのさい、「部落差別撤廃・人権条例」「人権のまちづくり条例」がすでに制定されている府県、市町村では、これらの「条例」を活用していくことが必要です(「部落差別撤廃・人権条例」「人権のまちづくり条例」は、二〇〇一年一月五日時点で六百六十三におよんでいます)。また、まだ、これらの「条例」が制定されていない都府県、市区町村では、「条例」の制定を求めるとりくみと結合して、新たな「同和」行政の創造、人権行政の創造を求めていく必要があります。
 ⑧ さらに、部落問題の根本的な解決を展望した「同和」行政基本方針、ならびに「同和」行政推進プランの策定、人権行政基本方針と人権行政推進プランの策定、「同和」行政と人権行政を推進していくための行政機構の整備を求めていくことも重要です。とくに、これまで存在していた「同和」行政推進のための行政機構を人権行政推進のための行政機構へと移行するさい、位置付けを高め人員を増やしたうえで、「同和」行政を推進するための行政機構をそのなかの重要な柱として明確に位置付けることを求めていく必要があります。
 ⑨ 各都府県連、支部、地協レベルでの当該都府県、市区町村にたいする、これらのとりくみが強力に展開されることによって、政府レベルでの新たな「同和」行政、人権行政の創造に向けた展望が切り拓かれていくのです。
 ⑩ とくに政府にたいして、新たな「同和」行政基本方針と推進プラン、人権行政の基本方針と推進プランの策定、「同和」行政の推進を重要な柱とする行政機構の整備、さらには人権尊重のまちづくりを支援・推進するための法整備を求めていきます。
 このとりくみは、「部落解放基本法案」のなかに盛りこまれていた「事業法的部分」と「組織法的部分」の具体化を求める運動でもあり、同盟組織はもとより、「部落解放基本法」の制定を求める各地実行委員会や地方自治体などの、総力をあげたとりくみが求められています。
 なお、全国大会終了後、本部のなかにプロジェクトチームを設置し、人権尊重のまちづくりを支援・推進するための法整備の具体的内容について、早急に煮詰めていきます。

5 国連人権小委員会決議の活用と、反人種主義・差別撤廃世界会議などの成功に向けた闘い
 ① あらゆるもののグローバル化が進行してきているため、二一世紀には差別を撤廃し人権を確立していく面でも、国連をはじめとした国際機関のはたす役割はこれまで以上に大きくなります。
 ② その点で、昨年八月、国連の人権小委員会が、「職業および世系にもとづく差別に関する決議」を採択したことには大きな意義があります。
 ③ この決議の内容は、日本の部落差別やインドなどでみられるダリットにたいする差別などの「職業および世系にもとづく差別」を、国際人権法で禁止された差別であることを指摘するとともに、これらの差別が存在している政府にたいして、これらの差別を禁止することを求めています。さらに、スリランカのグネセケレ委員を特別報告者として任命し、世界に存在している同様の差別の実態と、それにたいする各国政府のとりくみに関する情報を収集すること、さらにはこれらの差別撤廃に向けた方策を今年八月の国連人権小委員会に提言することを求めています。また、この決議は、反人種主義・差別撤廃世界会議で、部落差別を含む「職業および世系にもとづく差別」が重視されるうえでも、これをいかす実践をダーバン会議に向けて展開することを求めています。
 ④ 国連の人権関係の会議で、日本の部落問題を含む「身分差別」の問題が決議としてとりあげられたのは今回が初めてで歴史的な快挙です。この決議の採択に向けてわが同盟からも代表を派遣しましたが、反差別国際運動(IMADR)や全国ダリット人権キャンペーンに代表される国際人権NGOの粘り強い働きかけがあったことを忘れてはなりません。
 ⑤ 今年は、この決議を活用したとりくみ、とりわけグネセケレ委員との連携強化に努めます。
 ⑥ 今年三月上旬には、「人種差別撤廃条約」についての日本政府の第1・2回政府報告書の審査が人種差別撤廃委員会によっておこなわれます。この日本政府報告書には、部落問題に関する報告が盛りこまれていない、「人種差別撤廃条約」の締結を受けた国内法整備がされていないことに関する言及がないなど、重大な問題があります。このため、わが同盟としても代表を派遣し、人種差別撤廃委員会にたいする要請行動を実施します。
 ⑦ また、今年八月には、「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)についての第2回日本政府報告書に関する審査が社会権規約委員会によっておこなわれます。日本政府の報告書に関して、すでに社会権規約委員会から、部落問題の現状、結婚差別の現状に関する詳細な追加報告、さらには「ILO111号条約」の締結に向けたとりくみに関する追加報告などを求めた質問リストが政府に示されています。この「社会権規約」に関する日本政府報告書の審査も重要な意義をもっており、わが同盟としても積極的な対応をしていきます。
 ⑧ さらに、内外情勢でふれたように、今年八月三十一日から九月七日まで、南アフリカのダーバンで「反人種主義・差別撤廃世界会議」が、国連主催で開催されます。この会議は、世界の人権状況、とくに民族紛争やネオ・ナチの台頭の原因を分析するとともに、グローバル化の結果、深刻化しているあらゆる差別をとりあげて、これらの問題の根本的な解決に向けた具体的な方策を盛りこんだ「宣言」と「行動計画」を採択することとなっています。日本でも反差別国際運動日本委員会(IMADR・JC)が中心になってこの世界会議の成功に向けた実行委員会が結成されています。わが同盟としても、この実行委員会に積極的に参加するとともに、とくに日本の部落差別とインドのダリットなどにたいする差別に代表される「身分差別」の問題にたいして、国際社会が関心をもつようパネル展の開催など創意工夫をこらしたとりくみをおこなうとともに、「宣言」「行動計画」のなかに「身分差別」の撤廃に役立つ項目が盛りこまれるよう働きかけていきます。
 ⑨ これら一連の反差別国際連帯活動を強力に展開していくため、同盟中本央部としても国際局を強化するとともに、各都府県連、各支部段階でも反差別国際連帯活動を強化するよう、交流会の開催などに積極的にとりくみます。

6 4つの基本方針をふまえ「全国大行動」を展開し、「第3期の運動」創造を
 ① 昨年の第57回大会で、「第3期の部落解放運動」の基本的な内容を提起しました。その内容は、◯ア部落問題の部分的な解決でなく、根本的な解決をめざしていくこと。このため、部落のなかでは、部落大衆の自主解放・自己実現のための教育の向上、産業・職業の安定を実現していくことに力点を置くこと◯イ差別事件の根絶をはかるため、差別の原因に迫る糾弾闘争を展開するとともに、悪質な差別にたいする法的規制や、差別の被害者にたいする効果的救済のために政府から独立した人権委員会を設置することを求めていくこと◯ウ「イエ」意識、「ケガレ」意識と深く結びついている差別意識・差別文化を撤廃するために、あらゆる機会に、あらゆる場所で、すべての人びとのなかで、人権・「同和」教育を推進し、人権文化を創造していくとともに、戸籍制度に代表される部落問題の解決を困難にしている制度・システムの変革を求めていくこと◯エ人権尊重のまちづくりに積極的な役割をはたし、人権を軸とした社会システムと人と人の豊かな関係を構築していくこと◯オ国際化に対応して反差別国際運動を強化していくこと、の五点です。
 ② そして、この第3期の運動を創造していくために、つぎに要約する八点におよぶ運動の転換をよびかけました。すなわち、◯ア部落自体が置かれていた劣悪な実態の改善から部落大衆一人ひとりの自己実現を支援し、ともに闘っていく運動への転換◯イ部落を核に市区町村全体、都府県全体を人権が尊重されたまちにつくりかえていく闘いの先頭にたつ同盟組織への転換◯ウ「特別措置」のみに寄りかかった運動でなく、一般施策の活用と創造にとりくむ同盟組織への転換◯エ情報化社会の到来に対応できる同盟組織への転換◯オ少子・高齢化社会の到来をふまえた同盟組織への転換◯カ国際化時代の到来をふまえた同盟組織への転換◯キボランティア、NPO時代の到来をふまえた同盟組織への転換◯ク多様な被差別部落の歴史と実態をふまえた同盟組織への転換です。
 ③ 第57回全国大会でのこの提起を受けて、これを具体化していくために、中央本部内に、◯ア行政闘争強化プロジェクト◯イ差別糾弾闘争強化プロジェクト◯ウ男女共同参画プロジェクト◯エ組織強化プロジェクトを設置し、この間、精力的な議論を積み重ねてきました。
 ④ その成果として今大会に、◯ア行政闘争強化基本方針(案)◯イ糾弾闘争強化基本方針(案)◯ウ男女共同参画基本方針(案)◯エ組織強化基本方針(案)を提起しています。
 ⑤ このうち、行政闘争強化基本方針(案)では、これまでの行政闘争の歴史を振り返り、新たな局面をふまえた今後の行政闘争のあり方が示されています。糾弾闘争強化基本方針(案)では、差別の本質に迫る糾弾闘争のあり方が提起されています。男女共同参画基本方針(案)では、わが同盟の内部にも存在している女性差別を撤廃するとともに、同盟の各級機関への女性の積極的な登用をよびかけています。組織強化基本方針(案)では、「第3期の部落解放運動」を担いうる同盟組織への質的な転換に向けた方針を提起しています。これらの方針が、今大会での活発な討議によって補強され承認されることを期待するものです。
 ⑥ 今年は、これらの四つの基本方針をふまえ、各支部・地協段階、さらには各都府県段階での闘いを強化していくことに最大限の力点をおいた「行政闘争強化・組織強化全国大行動」を展開します。この闘いは、部落差別撤廃と人権確立に向けた法制度を整備させることができるかどうか、新たな「同和」行政、人権行政を切り拓けるかどうか、わが同盟の新たな組織強化がはたせるかどうか、二一世紀の早い段階に部落の完全解放を達成できるかどうか、がかかった決定的に重要なとりくみです。
 ⑦ このため、つぎの基本的なとりくみを実施します。
 ◯アブロック別解放学校の開催、全国大会の方針、四つの基本方針などの意思統一。
 ◯イ各支部、各地協、各都府県で部落解放白書、対市区町村、対都府県要求書の作成。
 ◯ウ都府県交渉の展開(中央本部も参加した)。
 ◯エ市区町村交渉の展開(各都府県連も参加した)。
 ◯オ政府交渉の展開。
 ◯カ「規制・救済法」「人権尊重のまちづくり支援・推進に関する法律」(仮称)制定を求める国会闘争の展開。

 7 おわりに
 ① 来年(二〇〇二年)三月には、全国水平社創立八〇周年という大きな節目の年を迎えます。
 ② 私たちの先達は、想像を絶する厳しい差別をはねのけ「人の世に熱あれ、人間に光あれ」を合言葉に、部落の完全解放と全人類の解放を求める崇高な闘いを開始しました。
 ③ 水平社の創立大会で採択された「宣言」は、「世界人権宣言」よりも二十六年も前に採択されたものですが、「世界人権宣言」の精神を先取りした日本で最初の「人権宣言」です。
 ④ この「宣言」を生み出した全国水平社の歴史と伝統を受け継いだわが同盟こそ、差別が撤廃され、人権が尊重される平和な二一世紀の日本と世界を創造していくための闘いの先頭にたっていくことが期待されています。
 ⑤ わが同盟にたいする期待と、崇高な歴史的使命をしっかりと自覚し、今年一年間、全同盟員が一致団結し火の玉となって活動していこうではありませんか。


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