永田町の「変人」が異常ともいえる「国民的人気」を背景に自民党総裁となって四か月を迎えた。この間、小泉首相の「国民的人気」は衰えず、参議院選挙でも自民党を大勝に導いた。
小泉首相の「国民的人気」の秘密は、具体的な中身を示さぬスローガン的「政策的言動のわかりやすさ」、「国民の目線」を意識し、マス・メディアを活用した、ポピュリズム(大衆迎合主義)にある。かつて、ナチスのヒトラーが同様のやり方で独裁体制を築き、悲惨な戦争へ突入していったことを想起する人も多い。
私たちが注意すべきなのは、この人気の裏で、日米新ガイドライン、「日の丸・君が代」法強化、盗聴法、国民総背番号制など、この間すすめられてきた、戦争ができる国家づくりを、新たなステージに引きあげる、国権主義的策動が、小泉首相を中心にすすめられていることである。
たとえば、小泉首相は、八月十五日に「首相たる小泉が靖国神社に行く」ことを明らかにしている。さきの大戦は、内にたいする差別・抑圧の強化とともに、外にたいする侵略として発露した。日本の軍国主義は韓国・朝鮮、中国をはじめとしたアジアの人びとにたいし、多大な被害をもたらした。とくに中国では三光作戦と称して奪いつくし、焼きつくし、殺しつくすという、残酷きわまりない行動が展開された。この侵略戦争の精神的支柱、シンボルが靖国神社である。首相の公式参拝は、侵略への反省を欠くことを内外に示すものである。ましてA級戦犯が合祀されている特定宗教法人への公式参拝は、憲法上の政教分離の原則にも反するものであり、断固抗議するものである。
「新しい歴史教科書をつくる会」が中学生用「歴史」「公民」の教科書を「検定合格」させた。この教科書は、侵略戦争を正当化し、「イエ意識」を強調し、女性差別などに満ちた内容で、戦争ができる国家での「皇民」づくりをめざすものだ。アジア諸国からの「つくる会」教科書批判にたいして、小泉首相は国権主義的な方向から、これらの教科書を擁護し、批判を「内政干渉」だとして、「近隣諸国条約」にも平然と違反する態度を示している。
「つくる会」教科書は、グローバル化のなかで、みずからのアイデンティティを偏狭なナショナリズムに求める者たちが編集したもので、大宣伝にもかかわらず公立中学校で採択が拒否されると、石原都知事は都立の養護学校へゴリ押ししようとしている。このような策動は許されるものではない。
いわゆる「構造改革」にしても小泉首相自身、具体的中身は不明、心がまえさえわかってもらえればいい、といっているが、経済相などの文書や発言をみるかぎり、その中身は徹底した競争主義である。「自己責任」の名のもとに、強者はより強者に、弱者はより弱者にという、まさに弱肉強食の競争主義である。こうした状況のなかで被差別者への差別がより強化されていくことは明白である。
私たちは、こうした一連の国権主義的方向を許さない多くの心ある人びとと固く連帯し、部落解放――人間解放の旗を高く掲げ、断固として国権主義的方向と闘いぬくことを声明する。
二〇〇一年八月三日
部落解放同盟中央本部