2001年9月 27日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂繁之
わが同盟は、いかなる主義・主張があろうとも、こうした民間人を含む大量殺戮を目的とした無差別テロ行為を断じて許すことはできない。また、テロ行為の責任者は、国際法にもとづき厳正な法の裁きを受けることで、このような悲惨なテロ行為が二度と繰り返されることのないことを強く要望する。
一方、いまだ真相や背後関係が明確にされていない中で、イスラム教徒やアラブ人全体と結びつけ、彼らに対する暴力や差別言動が起きていることは、米国ブッシュ政権の「報復宣言」とともに、新たな対立と憎悪を生み出すものでしかないことも強く訴える。人類共通の課題である世界平和と人権確立社会の実現は、対話と協調を基調にした世界各国およびすべての市民の努力によってしか成し得ないことをあらためて強調したい。
グローバリゼーションのもと、米国による1人勝ちのための独善的な世界戦略が展開されている。それが、たとえば環境問題では「京都議定書」の不履行を生み出し、パレスチナ問題では、本来、パレスチナやアラブ諸国の立場をふまえた調整が必要であるにもかかわらず、一方的にイスラエルの立場だけにたつという態度に終始している。そのことが、「反人種主義・差別撤廃世界会議」での米国とイスラエルの早期退席という、目に余る独善主義的行動をうみだしたことは、厳しく批判されなければならない。
しかし、小泉首相はじめ日本政府は、報復戦争を禁じた1970年の国連決議すら無視した、米国による「新たな戦争」への全面的な支援を表明し、「周辺事態法」を上回る新法や、「自衛隊法」の変更などによる、「後方支援」という名の直接的な軍事行動への参加など、有事法制化を最優先でとりくむこととしている。これまでの歴史が明らかにしているように、こうした「報復行動」こそが、同様の惨劇を繰り返すばかりでなく、限りない憎悪と新たな犠牲者を生み出すのである。
解放の父・松本治一郎元委員長がいわれたように、「戦争こそ最大の人権侵害」である。わが同盟は、今回の残虐なテロ行為への断固たる非難とともに、こうした日本政府の浮足立った拙速な対応を厳しく批判するものである。
8月に南アフリカで開催された「反人種主義・差別撤廃世界会議」で示されたように、われわれが努力すべきは、すべての人種主義の克服と差別撤廃に向けた対話と協調のとりくみである。わが同盟は、残虐なテロ行為の撲滅のためにも、今こそ、「報復行動」の停止と、それに代わる世界平和と人権確立社会の実現に向けたあらゆる行動が求められていることを強く訴えるものである。