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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド
声明

「狂牛病」(牛海綿状脳症)事件にたいする声明

 国内で感染が初めて確認された「狂牛病」は、今日、食肉の安全にたいする不安を増大させた。部落産業である食肉に関わる食肉処理場、流通、肉骨粉の製造・販売や飲食業をはじめ、農家などへ極めて深刻な影響をもたらし、存亡の危機にさらされている。
われわれは、こうした事態を生み出した政府の安全性にたいする危機管理の甘さをきびしく批判するものである。
第一に、1986年にイギリスで「狂牛病」が確認され、昨年も大流行したことから「日本でも発生するのは時間の問題」と国内外の専門家から指摘されていたにも関わらず、「日本産の食肉は安全」と主張し、感染の危険のある欧州産の肉骨粉の輸入を昨年末まで続けてきた政府・農水省の対応がある。
第二に、立て割り行政の弊害も大きく関わっている。家畜の飼育・出荷は農水省、処分する食肉処理場は厚生労働省であり、流通は経済産業省が担当している。「狂牛病」対策も、牛への感染は農水省だが、人への感染は厚生労働省と二分され、対応の遅れや判断ミスを生んでいるといわざるをえない。
現在、政府は今回の原因究明とともに、①肉骨粉の製造・販売の全面停止、②全国約453万頭の牛の飼育農家への立ち入り調査、③肉骨粉などを牛用飼料に使用しない旨の法的義務化、をおこなうとともに、④食肉処理場での解体の際に病原菌である「異常プリオン」の検査をすべて(年間約130万頭)おこない、安全が確認されたものだけを出荷すること、⑤今回の事態で影響を受ける関係事業者への緊急融資、などを検討している。また、一部マスコミの風評被害を拡大するような報道にたいし、「狂牛病」の正確な知識の普及と国産牛肉の安全性のPRを始めている。
われわれは、遅きに失したとはいえ、政府にたいし早急に上記の具体化を求めるものである。すでに、食肉処理場の一時閉鎖などの状況も生まれており、とくに、今回の事態で壊滅的な経済的打撃を受けている被差別部落をはじめとした零細な関係事業者の経営と従業者の雇用状況を早急に把握し、それにたいする有効な緊急融資や必要な対策を実施することを強く要求するものである。イギリスをはじめとした欧州などの「狂牛病」対策の教訓を明確にするとともに、縦割り行政を排し総合的な対策が迅速に講じられる体制を確立することを強く求めるものである。

2001年10月9日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂繁之

 

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