福田康夫官房長官は、5月31日の記者会見で、大陸間弾道ミサイルや核兵器の保有について「憲法上、法理論的に持ってはいけないとは書いてはいないと思う。積極的に政策判断として持つのはやめようというのが非核三原則だ」と発言、また非公式ではあるが「今は憲法改正の話も出てくるようになったんだから、何か起こったら国際情勢や国民が持つべきだということになるかもしれない」と発言したことが報道されている。また、安部晋三官房副長官も5月13日に早稲田大学での講演で同様の発言をしていることが報道されている。私たちは、この発言を絶対に許すことはできない。
この発言は、広島・長崎に原子爆弾が投下され、多くの犠牲者を出し、今なおその被害に苦しむ多くの被爆者が存命している中でなされており、被爆者の感情を逆なでするとともに、過ちをくりかえさないとの国民の誓いを踏みにじるものである。爆心地付近に被差別部落があり甚大な被害をこうむったことも思い起こすとき、私たちは今回の発言に怒りをもって強く抗議する。
非核三原則は、被爆を教訓化した国民的な意志であり、1967年12月、佐藤栄作首相が「核兵器は持たず、作らず、持ち込ませず」と答弁していらい歴代内閣でも確認され、1971年には衆議院で国是として確認されたものである。
まさに非核三原則の堅持は、被爆国の歴史的責任とともに、政府の方針でなくてはならない。
しかし、この間政府は、国連に核兵器廃絶に向けた決議案の提出やCTBT(包括的核実験禁止条約)批准促進など核兵器廃絶を訴えてきたものの、一方で核の傘を容認し、米軍の核の持ち込み疑惑もあり、矛盾した姿勢が世界中から問題視されている。
有事法制を強行しようとする動きの中で、米軍に対する日本の戦争協力がより積極的に打ち出されている。その中でのこのような発言は、有事の際の核持ち込みにとって非核三原則が障害になることを見越しての発言とも考えられる。また、安部官房副長官は早稲田大学での講演の中で、「(小型であれば)憲法上は原子爆弾も問題ない」との恐るべき発言をしている。法を守る立場にある政府閣僚の一連の発言は、「戦争しやすい国づくり」の本音が出た発言でもあり、このような発言をする議員を閣僚に据え続けることは許されない。また、このような発言に、アジアの平和を脅かす発言として、アジア諸国からも批判と憂慮の声があがっている。防衛庁身元調査・リスト作成事件など問題はあいついでいる。政府は、発言を撤回し、すみやかに閣僚の責任を明確にするべきである。
私たちは、戦争推進の道が国内外における人権じゅうりんと差別強化、民主主義破壊の道であるという歴史の教訓を忘れてはならない。最後に、非核三原則の堅持とともに有事法制の撤回、憲法の理念に基づく平和外交による世界平和の実現に努力するようあらためて強く政府に求めるものである。
2002年6月3日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂繁之
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